大して期待して赴いたコンサートではなかったけれど、熟達した村上和歌子さんのピアノ演奏は私の思いを大きく裏切るものだった。ベテランの味で、軽やかに奏でる彼女のピアノはお昼のひと時、私の心は満ち足りた思いだった。
11月12日(土)、札幌市社会福祉総合センターでは福祉用具機器展「ふく展」が開催され、その展覧会のアトラクション的位置付けで、お昼休みに「ピアノコンサート」が行われた。プログラムにはピアニストが村上和歌子さんとは記載されていたが、私は村上さんなるピアニストについては未知だった。
会場のセンターのアトリウムにはやや古びたようにも見えるアップライトピアノが置かれていた。果たしてプロが弾くのに適しているピアノなのだろうかと心配になるほどに私には見えた。
演奏スタートになり、村上さんが登場した。年齢的には40代くらいの方だろうか?濃紫のドレスに身を包んだ彼女が演奏を始めた。村上和歌子さんの履歴を拝見すると、幼少の頃からピアノに親しんでいたのはもちろんであるが、大学を卒業しヨーロッパに渡り本格的にピアノを修行していた際に、チェコで行われた「スメタナ国際ピアノコンクール」に出場し、第3位に入賞したという本格派なのだ。
※ 実際よりはやや若い頃の写真のようです(ウェブ上から拝借)
村上さんが演奏を始めると、一瞬に周りは豪華(?)なコンサート会場に変ったと思えた。それくらい村上さんの演奏は見事だった。その曲は、ショパンのエチュードで通称「牧童の笛」ということだった。それから披露された曲を順に紹介すると…。
◆メドレー 赤とんぼ~紅葉~秋桜~小さな秋
◆ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番
◆プッチーニ/歌劇「ツーランドット」より「誰も寝てはならぬ」
◆見岳章/川の流れのように
◆小椋佳/愛燦燦
〈アンコール〉
◆いずみたく/見上げてごらん夜の星を
◆中村八大/上を向いて歩こう
この曲目を見ると、村上さんはとてもサービス精神旺盛の方のように思える。クラシック畑の村上さんは一曲目も含めてクラシックの曲は3曲しか演奏していない。そのうちの2曲目、3曲目も、ラスマラノフのピアノ協奏曲第2番は浅田真央選手の、「誰も寝てはならぬ」は荒川静香選手がそれぞれオリンピックのフィギアフリーで使用した曲である。つまり彼女はアトリウムに集まった聴衆がクラシックに少々疎い人が多いのではと考えて選曲されたのではないか、と思われた。だから彼女は かなりリラックスしてピアノに向かっていたように思える。
※ 演奏中の村上和歌子さんです。
その証拠の一つに、彼女は全ての曲を楽譜なしで演奏した。ピアノのことは良く分からないが、おそらく村上さんはメロディ(主旋律)だけを頭に叩き込み、伴奏は長年の修練で獲得した技で、瞬時に和音を取っていたのではないかと思われたのだが、はてしてどうなのだろうか?
わずか30分強のミニコンサートだったが、最前列で村上さんの指運びも拝見することができたことでとても満足度の高いミニコンサートとなった。