富良野塾OBユニットの4年ぶりの新作だという。さすがに鍛え抜かれたプロの演技に惹き込まれた。しかし、脚本が思わぬ展開を見せ始めたあたりから、旧弊にどっぷりと浸かっているお爺にはついていくのが大変な舞台でもあった…。
2月18日(土)午後、かでるホールにおいて富良野塾OBユニットによる演劇「エレベーターガール ~ご希望の階には止まれません~」の公演があり、前回の4年前に札幌公演があった2019年1月の公演に続いて観賞することにした。
富良野塾OBユニットとは、脚本家として著名な倉本聰氏が主宰する「富良野塾」を卒塾した有志と彼らに賛同する一部有志でもって構成し、富良野市を中心に活動しているグループである。
今回の舞台「エレベーターガール」のストーリーは、40歳になろうしているバツイチの佐藤和代(栗栖綾濃)は、大宮に完成した高さ60階にもなる「大宮スカイタワー」のエレベーターガールとして勤務している。単調な仕事の中、和代は早くいい人を見つけて再婚したいと思いつつも、そうした機会に恵まれぬ日々を過ごしていた。そんなある日、勤務中に和代の乗ったエレベーターが急停止してしまい、和代の意識は遠のいてしまう。
ここから舞台は急展開してゆく。なんと和代の高校生時代にタイムスリップしてしまう のだ。ところが和代の若い頃の恋愛遍歴はけっして甘酸っぱいものではなく、むしろ悲惨な出会いの連続だった…。あたりから私はどうもついていけなくなった。あれやこれやと様々なエピソードが飛び出すのだが…。
「エレベーターガール」の原作は福島カツシゲさんというコメディアンということで、それらエピソードのあちこちに笑いを散りばめ、観客を笑いに誘ってはくれたのだが、私は今一つストーリーについていけなかったのが残念だった。
脚本を書いた太田竜介さんは吐露する。「福島さんの原作を富良野塾OBユニットの舞台として脚色するのに苦労した」と…。
結局、このストーリーの主題は、退屈なエレベーターガールとしての日々、そして過去の和代もけっして楽しく輝いていた青春ではなかったけれど(それがサブテーマの「ご希望の階には止まれません」が意味するところか?)、前向きに生きていくことでこれから未来に良いことがあると思って生きていくこと肝心ではないか、という人生応援歌とも取れる内容だったと私は理解した。
※ 演劇「谷は眠っていた」の時、倉本聰が問いかけた有名な詩を私は今も大切にしています。
4年前にも触れたが、私は倉本聰の脚本による「谷は眠っていた」というあまりにも利便化しすぎたことで現代が失ったものに警鐘を鳴らした舞台に非常に感動した体験があった。そして今回の富良野塾OBユニットの舞台にも、どこかでそれに類することを期待していた私がいた。しかし、それは叶わなかった。というより、それを望む方に無理があったのかもしれない。ただ、倉本氏があれから時代を経た今においてもその警鐘を鳴らし続けていることをOBの方々もどこかで意識され、そのことを継承していってほしいとも思いたい。何時の日かの富良野塾OBユニットの舞台でそのことが実現することを期待したいのだが…。