田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 どうすればよかったか? №390

2025-02-14 13:16:39 | 講演・講義・フォーラム等
 凄絶なドキュメンタリー映画だった…。監督の藤野知明の姉は幼いころから優秀で医療の研究者の道を目ざしていたが統合失調症を発症してしまった。その姉の姿を、そして戸惑う父母の姿をカメラは追い続けた。姉が亡くなるまで…。そして藤野は問う。「どうすればよかったか?」と…。

        

 一昨日(2月12日)昼、シアターキノで公開されている「どうすればよかったか?」を観賞しました。鑑賞の動機は、統合失調症という病気はどういうものなのか?具体的に知ってみたいという思いがありました。

 映画を観始めて、監督の藤野の実家が札幌市であることを初めて知りました。
 藤野の父親は北大医学部の病理学研究者、母親もやはり医療関係者、そして藤野とは8歳違いの姉は小さなころから優秀で、北大の医学部に進みました。(藤野も医学部ではないが北大を卒業しています)

 映画は姉が統合失調症の症状が出始めた頃から始まります。それは藤野がまだ大学生で実家で生活していた時代だったようです。姉が突然、事実とは思えないことを叫び出したことからです。
 父母は知り合いの医者から「問題ない」と言われたことを根拠に、精神科医の受診をすることはしませんでした。その判断を疑問に感じた藤野は両親の説得を試みましたが解決には至らず、大学卒業と同時に実家を離れました。

 姉が発症したと思われる日から18年後、映像制作を学んだ藤野は帰省毎にカメラを回し始めました。その18年、姉は専門医に相談もせずに、徐々に症状は重くなっていきました。そして、両親は姉のことを世間から隔離するような生活を強いるようになっていったのです。
 映画の中で一度だけ、姉が錯乱状態となった様子が映し出されたが、その様子は常人とはとても思えず、かなり重症のように見えました。

    
    ※ 姉の症状が落ち着いている時のつかの間の家族旅行の様子です。

 藤野は両親の思いを尊重しつつも、根気強く精神科医に受診することを説得し続けた結果、ようやくそれが実現しました。そして、姉の症状に合った薬を見つけたことで姉はようやく落ち着きを見せ始め、藤野家には穏やかな日々は還ってきたようでした。しかし、それは統合失調症の症状を抑えるということで根本的な治癒ではありません。

 母が亡くなり、姉も病を抱えたまま62歳で亡くなり、藤野家は藤野と父親の二人だけとなってしまいました。
 藤野は父親に問います。「姉への対応はあれで良かったのか?」と…。父親は「いや。間違いではなかった…」と父親は老境にありながらも自らの言動には最後まで矜持を保ちます。
 藤野は問う。「どうすればよかったのか?」と……。

    
    ※ 老境に至っても自らの考え矜持を保つ父と、息子の藤野知明氏です。

 冒頭、私は “凄絶” と表現しました。それは姉が錯乱状態になった映像はもちろん “凄絶” に映った場面ですが、その場面だけではなく、姉のために乱れてしまった室内や、父親、母親の心の内まで映し出したドキュメンタリー全体が私には “凄絶” に映ったのでした。

 もし、藤野が私に「どうすればよかったのか?」と問われたら…、私ならどうするだろうか?今の私に答えはない。父親の気持ちが分かり過ぎるから…。
 エンタメ映画も楽しめるが、今私はドキュメンタリー映画に嵌まっています。もう一本観たい映画があり、上映日をまっているところです。

 ところで本日の北海道新聞紙上に「札幌映画サークル」が会員及び一般の方々に2024年映画ベスト10の投票を実施したところ、なんと邦画部門において「どうすればよかったか?」が第1位に輝いたと報じていました。共感者が多かったようですね。
 ちなみに洋画部門では「オッペンハイマー」だったそうですが、たまたま私はこの映画も観ることができました。