田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

砂澤ビッキ展ギャラリーツアー

2022-12-18 12:50:35 | 作品展・展覧会等

 同じ展覧会でも学芸員による説明を受けながらの観賞(ギャラリーツアー)は、作品に対する理解度が格段に違う。(特に私の場合は…)砂澤ビッキの豊穣なる迷宮世界、蠢動するようなエネルギーを孕む旺盛な制作欲の一端を窺い知ることができた??

        

 11月の末から(正確には11月22日から)道立近代美術館「砂澤ビッキ展」が開催されていることは知っていたが、私は開催要項を見て12月17日(土)に学芸員によるギャラリーツアーがあることを知り、この日まで観覧するのを控えていた。

 午後2時ギャラリーツアーの開始時刻に行ってみると、なんと定員10名のところに50名近くの人が集まっていた。私と同じように考える人が多いということか?それでもこの日の担当だった五十嵐学芸部長は「互いの間隔を取りながらお聞きください」と全員を受け入れてくれた。

        

 五十嵐氏はまず、「ビッキは多面的な人である」とビッキを紹介した。ビッキは単に木彫作家だけではなく、抽象的絵画、彫刻、工芸、デッサン、書、マンガなどさまざまな表現活動を手掛けた人であると話された。なるほど、展覧会にはマンガの展示こそ無かったものの、木彫をはじめ、抽象絵画、デッサン、書なども数多く展示されていた。五十嵐氏は「ビッキの場合、一つの作品を手掛けているうちにアイデアが次々と浮かんできたのではないか」と推察した。

 最初の展示は樹を使った昆虫や生き物を象った彫刻だった。ビッキの作品は「動く、動かす」が一つにテーマだったと話された。樹を使った昆虫や生き物たちの彫刻に「樹蝶」、「樹兜虫」、「樹海老」、「樹蟹」などという作品名が付けられ手足が動くように作成されていた。また、生き物たちの背には〈ビッキ文様〉と称する独特の文様が施されているのも特徴のひとつだった。

   

   ※ これは「樹海老」である。展示されていたのは全長1.5mくらいの大作だった。

 続いておびただしい「裸婦デッサン」が展示されているコーナーに導かれたが、それらのデッサンを眺めているとビッキが制作した抽象的な木彫作品はこれら裸婦デッサンが基礎となっていることが理解できた。

 ビッキが大きな作品作りに取り組み始めたのは、私も今夏に訪れた音威子府村の旧筬島小学校校舎をアトリエとした以降だったという。ここでは大木を前にして、その大木からイメージされる形を活かす作品が多く生まれたという。ビッキは「木に自分の思いを押し付けてはいけない。木にはその木が持っている形がある」と述べたそうである。展示されていた〈神の舌〉〈風〉などはその典型だろう。

       

       ※ 彼の代表作の一つ(?)「神の舌」です。

 最後にビッキ晩年の作品として〈樹華〉という作品がある。イタヤの木の台座に、ヤナギの木の皮をはいだ枝をたくさん差すことによって華に見立てたものである。その作品の横にビッキのメモが展示されていた。それを書き写したので紹介します。

   樹華   樹華は 森と匠の村、森の 形態をとってあり 茂る自然林 その伸長する 枝葉は村を 象徴する ビッキ」 

          

            ※ 「樹華」です。

 その他にもいろいろと説明をうかがったのだが、ここでは省略したい。ともかく、展覧会は砂澤ビッキという異才が放つエネルギーに満ちた空間だった。特に木彫作品などは私が苦手とする抽象作品が多かったのだが、それら一つ一つの作品から砂澤ビッキの魂の叫びを聴く思いだった。作品展は1月22日まで続く。興味のある方はぜひ覗いてみることをお勧めしたい。            

※ 掲載した最初の写真以外はウェブ上から拝借しました。



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