タイトルを見て「なんじゃ!こりゃ?」と思われたかもしれない。これがなんと朗読の会なのだ。由緒ある歴史的建造物の中で聴く朗読は雰囲気が抜群だったが、私は再び朗読を聴くことの難しさを味わったのだった…。
12月17日(土)夜、国指定の重要文化財に指定されている「豊平館」で「不思議の庫無本工房」という不思議な団体が主催する朗読会が開催され参加した。
朗読会のプログラムは掲載したとおりなのだが、〈第1部〉が個人朗読と称して3人の読み手がそれぞれ自ら推奨する作品を朗読した。そして〈第2部〉はゲストとして招請された女性コーラス「ら・のーぱ」のいわゆるママさんコーラスの発表だった。そして〈第3部〉は「朗読とスクラッチアートで味わう小川未明」と題する朗読、という三部構成だった。
※ この夜のプログラムです。
※ 会場となった由緒ある雰囲気を醸し出す豊平館の2階ホールに描かれた「豊平館」
の額とシャンデリアです。
メインはやはり〈第1部〉なのだと思われたが、これが私にとっては難問だった。私の耳が衰えてきている証なのかもしれないが、読み手の声がどうしてもクリアに伝わってこないのだ。したがって、聴いていても物語の世界へ入っていけないのだ。要因は前述したように私の耳にもあるだろう。それと共に、朗読者がマスクを装着し、マイクを通して私たち伝わるという方式も関係しているように思えた。最近の講演などでは聞き手との間に距離があることもあり、話し手はマストを外すことが多い。できればこの夜も聞き手との間に距離があったのだからマスクを外して朗読してほしかったという思いである。何せ、朗読の場合は手元に何一つ資料などはない。読み手から発する声だけが全てなのだから主催者の配慮がほしいと思ったのだが…。
※ 読み手の方と私たちはこれだけ離れていたのですから…。顔を出さないようにとの主催者の指示に従って…。
〈第2部〉の女性コーラス「ら・のーば」の歌声について、私は正直言ってとても感動した。メンバーはわずか8名である。紹介によると1996年、江別市立野幌中学校に通う生徒の母が集まって結成したという。以来30年近く活動を続けているというから年齢もそれなりに加わったグルーブである。彼女らが最初に披露したスタジオジブリの名作アニメ「天空の城ラピタ」のエンディングテーマ「君をのせて」を聴いたときにグッときてしまった。アマチュアとしての一生懸命さと歌い込んだ巧さがミックスされた素晴らしい歌声に思わずグッときてしまったのだ。その後に繰り出された数曲(プログラム参照)も心地良く私の耳に入ってきて、心が洗われるひと時だった。
※ わずか8名の女性コーラスでしたが、素晴らしいコーラスを聴かせてくれました。
〈第3部〉の「朗読とスクラッチフートで味わう小川未明」は、あべゆうこさんという描くスクラッチアートが素晴らしい効果を発揮した。「負傷した線路と月」というなんとも不可解な題が付けられた物語である。つまり線路やその周囲の植物や風景を擬人化した物語なのだが、スクラッチアートが無理なくその不思議な世界へ導いてくれた役割を果たしていた。私たち聴いている者は幻想的な紙芝居を見ている気分で物語の世界へ入っていくことができた。
※ 十数枚映し出されたスクラッチアートの一部です。
と3部構成の内容を簡単に紹介したが、主催した「不思議の庫無本工房」(ふしぎのくら むほんこうぼう)という不思議な名前のグループだが、札幌市の南沢にあって、もともとは紙芝居の文化活動から始まったグループだという。その活動を通して既存出版社の紙芝居や絵本からは見つけられないような隠れた名作などを掘り起こし、オリジナルの紙芝居や絵本を制作して希望する方に届ける活動をしているために「工房」と名乗っているようだ。併せて今回のような表現活動を柱としたイベントにも取り組んでいるということだった。
最近、イベント欄を検索していると、さまざまな朗読の会が市内では頻繁に、といえるほど開催されている。私から見ると一種のブームのようにも思えるのだが、私にはその隆盛の意味を測りかねている。機会があればもう少しこの種の会に参加してその真相に辿り着きたいと思っているのだが…。
不思議な楽しい夜だった…。