静かな映画だった。唯一の衝撃は手塚弥一郎(東山紀之)が悪政をたくらむ藩の重臣を斬ってしまう場面である。しかし、あとは淡々と映画は進み、余韻を残しながら終わる。藤沢映画の良さが滲み出た映画だった…。
※ 映画タイトルの後にナンバーリングを付けているが、この数字は私が2007年に札幌に転居後に観た映画の通算の映画の数である。「映画は最高のエンターテイメント」と考える私にとって、これからも有料・無料にかかわらずできるだけ映画を観ていこうと思っている。
私が所属する「めだかの学校」の本年後期の学習テーマの一つが時代小説の名手、藤沢周平原作の映画を鑑賞することである。その第一弾として取り上げられたのが「山桜」である。映画は2008年5月に公開されている。主演は下級武士の娘・野江を田中麗奈、剣術の名手・手塚弥一郎を東山紀之が務めている。
野江は前の夫に病気で先立たれ、磯村庄左衛門(千葉哲也)と再婚していたが幸せな結婚ではなかった。そうした中、桜が満開の時に野江は弥一郎と偶然出会った。実は弥一郎は以前に野江に縁談の申し込みをしたのだが、野江の方が剣術の名手は怖い人という思いがあって断っていた過去があった。しかし、偶然に出会ったところ弥一郎が優しい人だと分かり、そこにほのかな恋情が芽生えたのだった。
※ 母親役として壇ふみ(右)が出演していました。
そうしたときに弥一郎は悪政をたくらむ藩の重臣を斬ってしまい投獄され藩主の沙汰を待つ身となってしまった。また野江は婚家を辞し実家へと帰り、弥一郎が許される日を待つのだが…。二人が出会った日から一年が経ち、山桜は満開に咲いているが、はたして二人の運命は?? 余韻を残して映画は終わる。
田中麗奈の和服が良く似合い、その所作がきれいだったこと、東山紀之の寡黙な剣士の姿がはまり役だったこと、などが印象的な映画だった。
※ 婚家で下男と一緒に作業をする野江です。
これから観ることになる藤沢映画に通底していると思われるのが、藩の下級武士に焦点をあてたものが多い。そこには封建社会の中で理不尽な扱いを受ける下級武士に対する藤沢周平の温かな視線を感ずるものが多い。この映画もまた、そうした藤沢映画の一つであったことは間違いない。観終えた後に余韻を残す良い映画だった…。
※ 本ブログに掲載した写真は全てウェブ上から拝借しました。