大釜の中では大きなプロペラのような攪拌棒が、塗料の粉と有機溶媒を混ぜるためにゆっくりと回転している。「この中に落ちたらきっと死ぬんだろうなぁ~」と思いつつも、トルエンで麻痺した頭では恐怖感は感じなかった。さて次に作業員から「あの棚の袋の中身を全部、釜に入れろ」と指示が出た。やはり同様に20~30kgくらいの袋が数十もある。一つ袋を開けてみると、中身は白くキラキラ光るガラスの粉のようなものだった。手を入れようとしたら怒られた。「バカ、触るな。触ると皮膚から体に入り込んで心臓がつまるぞ」と脅かされた。「えっ? そんな怖いものなのか?」と、この高校生(私)は素直に大人の従業員のいうことを信じ込んだ。道路のラインや標識文字を描くための塗料には、夜間でも光るようにこの粉を入れるのであると初めて聞かされた。