松本寿三郎先生の御著「近世の領主支配と村落」の第二部の第一章に、近世細川に家における「御書出」の交付 がある。
この中の 三 御書出交付の要領 は、規式化された御花畑邸に於ける式の進行の様子が紹介されており、大変興味深い。
これは享保十九年十一月二十八日、宗孝公御代始めの御書出頂戴を例としている。朝五時集合とあるから午前八時である。
・御一門、御家老 於・鹿之間 取次・御用人
長岡内膳 長岡図書 清水靭負 長岡帯刀 長岡丹波 有吉大蔵 松井求馬 小笠原備前 沢村衛士 長岡冬山 有吉大膳
・御備頭、御城代 於・鹿之間 一台に載せ置き家老衆の前置したものを一通づつ渡される。御右筆立ち合い。
・御着座~御鉄炮三十挺頭。 於・中柱之間 藩主上座、左右に御家老・用人。 御書出は十枚載り塗台に積み、御小姓が持ち出し御右筆頭の脇に置く。
左右二列になり、次第に従い頂戴。御右筆頭両人が加わる。
(中入り休憩)
・鉄炮廿挺頭~御者頭列まで 於・中柱之間 左右二列、右筆頭も頂戴するゆえ、請込みの右筆(三苫惣左衛門・中島作太夫)が勤め
・御家老脇・御用人・着座 於・鹿之間 御家老脇分二通は三方に一緒に載せ、有吉大蔵の傍らに御小姓役が持ち出す。請込みの御用人・御右筆頭は不参。
・部屋方、御次方、御者頭列より御小姓役、御医者、新組御知行取まで 於・鹿之間 有吉大蔵、請込みの用人額田和多理は歌仙之間敷居際に着座。
各々のグループごとに台に載せ、用人が家老の前に直し名前披露、次第の通り家老が渡す。名前の披露は用人が代わる代わる勤める。
・尚ご一門 清水靭負(綱利女婿・勝貞)は所要で遅参したので、しばらく間をおいた後一人頂戴する。
これ以外の人については、享保二十年三月六日・七日の両日御花畑邸で行われた。(三)としてご紹介する。