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乗ってしまったからには…

2021年07月10日 | 絵本
 『悪い本』に続いて「怪談えほん」シリーズ。『悪い本』は第一期配本だったが、この一冊は第三期とされ、昨年発刊されてばかりである。検索すると発刊元には特設サイトがあり、話の募集も行われていたようだ。「怖い本」はいつでも需要があるものだ。昔は「語り」一辺倒だったが、今はいろいろな手を駆使できる。


『おろしてください』(有栖川有栖・文 市川友章・絵 岩崎書店) 




 『悪い本』は、じわりじわりと来る設定と展開。この一冊は、もう直球といっていいほどに場が準備されている。道に迷い、小さな駅を見つけ、乗り込んだ列車のなかで「ぼく」が見たものは…、描かれる画も実におどろおどろしく、ストレートだ。人間と魔界の境がトンネルにあることも、オーソドックスと言える。


 あえて、細かく絵を読み解くと、「かたつむり」や「ねこ」の存在が気になる。最終的に人間界に戻れたとしても、同行したかたつむり、ねこは何を見てきたのだろう。現実社会で何を見ているのだろう、と想像することもできる。まあ、一度さらっと流したぐらいでは、そこまで気づく子はいないか。いや読者は多様だ。


 では、読み語るとすると…。これはドラマのような語りと台詞のイメージかなと思う。映像化すると、それらしいBGMがつきそうな展開だ。そこを生声のみで表現するとすれば、十分な間、感情を表す緩急が大事か。車掌の声をどうするか、この辺りが怖さを引き出すポイントになるか。エンディングの絵がいい。


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