【ぼちぼちクライミング&読書】

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「トッカン/特別国税徴収官」高殿円

2010年09月19日 22時27分16秒 | 読書(小説/日本)

コメディタッチの税金小説。
新米徴収官・ぐー子の奮闘を描く。
税を描いたエンターテイメントといえば「マルサの女」を思い出すが、この著者も当然意識してる、と思う。内容も、税とは何か、お金とは何かと、けっこう掘り下げているし、同時に娯楽性も追求している。私は良くできている、と評価する。

さて、連作長編の型式をとっているが、この作品の白眉は銀座高級クラブのママとの対決。なぜ税金を払わないのか?それには政治がらみ、新薬と役人の問題がからんでくる。
事情が分かったとき、何ともやるせない気分になる。
でも、後味は悪くない。
娯楽小説として、読者の気分が良くなるよう書かれている。
著者のプロとしての巧さを感じた。

【ネット上の紹介】
税金滞納者から問答無用で取り立てを行なう、みんなの嫌われ者―徴収官。そのなかでも、特に悪質な事案を担当するのが特別国税徴収官(略してトッカン)だ。東京国税局京橋地区税務署に所属する、言いたいことを言えず、すぐに「ぐ」と詰まってしまう鈴宮深樹(通称ぐー子)は、冷血無比なトッカン・鏡雅愛の補佐として、今日も滞納者の取り立てに奔走中。納税を拒む資産家マダムの外車やシャネルのセーター、果ては高級ペットまでS(差し押さえ)したり、貧しい工場に取り立てに行ってすげなく追い返されたり、カフェの二重帳簿を暴くために潜入捜査をしたり、銀座の高級クラブのママと闘ったり。税金を払いたくても払えない者、払えるのに払わない者…鬼上司・鏡の下、ぐー子は、人間の生活と欲望に直結した、“税金”について学んでいく。仕事人たちに明日への希望を灯す、今一番熱い職業エンターテインメント。

「KATANA」服部真澄

2010年09月19日 21時56分37秒 | 読書(小説/日本)

久しぶりに服部真澄作品を読んだ。
「龍の契り」「鷲の驕り」以来である。
「龍の契り」では香港返還の密約を描き、「鷲の驕り」では米国特許法を描いた。
今回は、近未来の米国銃規制をテーマにしている。
それにしてもこの著者、毎回硬派なテーマばかり。
その姿勢には頭がさがる。

さて、この作品でも、著者お得意の群像劇風に展開する。
様々な人物の視点から描かれる。
民間軍事コングロマリット・兵藤、日本TV局リサーチャー・黒崎、退役軍人・ヴィンス・・・様々な人物とその思惑が交錯する。重厚な作品に仕上がっている。

PS
なぜ、この著者の作品をしばらく読まなかったかというと、この方はどちらかと言うと、ストーリー中心の展開をされるから。私は心理描写中心、キャラクター重視の読み手である。
これが、しっくりこない理由。


【ネット上の紹介】
0XX年、アメリカ。各国の戦地で軍務を担う「民間軍事コングロマリット」は、紛争終了後も復興ビジネスを牛耳ることで莫大な利益を上げていた。兵藤理人はそんな企業のCEO。だが裏では米情報機関にフリーランサーとして雇われている。ある日、兵藤は元同僚を通じて、情報機関から銃マーケットの怪しい動きについて調査を命じられる。同じ頃、日本のテレビ局JHKの在米リサーチャー黒崎ケイは、軍事ビジネスの裏側を探る番組を企画し、兵藤へ取材を申し込んでいた。アメリカ南東部の山間に住む退役軍人ヴィンスは静かな生活を送りながらも、かつて参加した戦闘の後遺症に悩まされていた。会ったことは思い出せないが、顔立ちが鮮明に浮かぶ謎の人物…一体、誰なのか?―戦争の、そして人類の未来を一変させるような何かが、今、静かに動き始めた。

「COCOON」今日マチ子

2010年09月19日 21時51分13秒 | 読書(沖縄・八重山)


「ダ・ヴィンチ」で紹介されていたので読みたくなった。
あちこち探したけど、品切れ状態。
ネット上でも在庫切れを起こしていて、出版社取り寄せ、となっている。
ダメもとで、とりあえず「取り寄せ」をしてみたところ、何とか入手できた。(嬉しい)

内容はとても良かった。
苦労して取り寄せた甲斐がある、ってもんだ。
テーマは沖縄での戦争。
この著者、とても叙情的な絵を描かれる。
非常にリリカル・・・その絵で非情な戦争という現実を描いていく。
その衝撃は大きい。よけいインパクトがある。
もう読みながら涙、涙、である。
「夕凪の街桜の国」(こうの史代)に匹敵する作品、と感じた。
ただ、こうの史代さんほど、ストーリー構築の技巧を凝らしていない・・・けど、その分「叙情」という武器で対抗している。どちらも素晴らしい。


PS
こうの史代さんには、これ以外にも「この世界の片隅に」(全3巻)がある。
今日マチ子さんが、さらにこのレベルの作品を描かれるかどうか・・・期待している。

PS2
誤解を避けるために書いておくが、こうの史代さんの絵もかなり叙情的で雰囲気がある。逆に、今日マチ子さんの作品も、前面に出てないけど、ネーム構築の技巧が感じられる。両者とも、相当な潜在能力の持ち主と思われる。

【参考リンク】

  • センネン画報(作者ブログ)
  • 作者公式TWITTERアカウント
  • みかこさん(講談社『モーニング』公式サイト)
  • みかこさん作品情報(講談社『モーニング』公式サイト)
  • ミドリさん(三井住友銀行)


    【ネット上の紹介】
    シマいちばんの女学校に通う主人公・サンらは、クラスメイトとともに学徒隊として戦地に赴く。戦況の悪化とともに、ひとり、またひとりと仲間を喪っていく中、世界の凄惨さと自己の少女性との狭間でサンは……。戦後65年。新世代の叙情作家が挑み描いた衝撃の長編傑作。

「そこをなんとか」(4)麻生みこと

2010年09月19日 20時55分12秒 | 読書(マンガ/アニメ)

リーガルコメディ、である。
もとキャバ嬢で、お金持ちを夢見て弁護士となった。
なんとか小さな弁護士事務所に就職するが、世の中甘くない。
貧乏ヒマなし、失敗続きの楽子。
今回は「著作権問題」「セクハラ問題」等がテーマ。

この著者、なかなか勉強しているし、ストーリー構築も巧い。
こういった職業もの、テーマもの、って描くのが難しい。
よく消化しないと、単なる苦労話で終わってしまう。
フィクションとして読ませる作品=料理にするのが作家の力量である。
コメディになると、さらに突き放した視点が必要になる。
このタイプの作品で成功しているのが、思いつくところでは、佐々木倫子さんの「おたんこナース」くらいである。それだけ難しい、ってことでしょう。
このシリーズも、(佐々木倫子さんの独特のユーモアにはおよばないけど)、かなりいい線いってる、と思う。

【ネット上の紹介】
リッチな生活を夢見て弁護士になったのに、貧乏ヒマなしの改世楽子。そこに著作権侵害の案件が転がり込む!勝てば一攫千金!とウットリだが…!? そして弟に、「男の先輩からセクハラされている」と相談を受ける楽子。難しいセクハラ問題へのアドバイスとは!? 一方、デキる兄弁・東海林と、大手弁護士事務所のクールビューティー・中道との間には、過去に何かあったようで…。

青くなって、赤くなった話

2010年09月19日 19時13分49秒 | 身辺雑記

このところ更新せずスマン。
残業続きで、読書もままならぬ状態。
この週末やっと本が読めたので、精神もやや安定し、更新する気分になった。

さて、ご存じの方も多いと思うが、私は転職を繰り返してる。
故に、職場では最下層ヒエラルキー底辺職員、である。
結果として、他の方が敬遠忌避する雑務を一手に引き受けている。

実は、先日仕事で失敗した。
他人には笑える話、と思われるので紹介する。
シンガポールからメールが来た。
「××の見積もりして欲しい」、と。
そこで、急いで原価+作業費用を出してもらって、出荷費用も計算した。
見積書を作成して、私の署名を入れFAX送信。
その後で、メールも作成して、「見積もり依頼ありがとうございます云々・・・FAX送ったのでご確認ください・・・・不明な点ありましたらメール下さい、ポン」、と。(「ポン」は送信音)
型式どおりのビジネス文書のはず・・・である。
でも、送信したとたん違和感を感じた。
送信した文書を読み直して真っ青になって、真っ赤になった。(信号機か?)
mail(メール)を下さいが、male(男)を下さい、になってる!
う~ん、送信したものはしかたない。
おそらく大笑いしていることだろう。
(でも、ホントに男を送ってきたらどうしよう?)

ここから一般論。
こういう言葉の間違いというのはよくあることだ。(ヨクないって!)
本で読んだエピソードをいくつか紹介する。
①外人の先生が卒業式で挨拶をした。
 「皆さん母校を忘れないで下さい。肛門を思い出して膀胱を忘れないで下さい」、と。
②京都老舗旅館に宿泊した外人女性。旅館の女将が夕食の後、次のように言った。
 「お床を用意しましょうか」
 「男を用意するとは失礼な!」

あと、ビジネス文書で注意することがある。
日本人は封筒に〆のペケ印を入れる。
文中や封書のペケ印は「キス」の印である。
ここにキスしましたよ、って意味。
ビジネス文書で使用すると、「あやしい誤解」を生ずる可能性がある。(ご注意!)

【参考】
文中一般エピソードは、英語教育の大御所・松本亨先生の著書「英語と私」から拝借した。戦中~戦後間もない頃のエピソードが書かれていて興味深い。