「龍は眠る」「火車」「模倣犯」「ソロモンの偽証」。
私は今まで「模倣犯」がベスト、と思っていた。
しかし、このシリーズの方が面白いかも。
本作「ペテロの葬列」も前作「名もなき毒」も最高位のレベルと思う。
今回、おっ、と思った。
主人公の妻・菜穂子さんの描かれ方。
前作まで、造形が薄味であった。
今回、心理描写が深くなされ、作品に奥行きが出た。
その結果、シリーズ作品としての『枠』を破ってしまった。
まさか、と思うようなエンディングだ。
タイトルについて
P400
〈あなたは、鶏が啼く前に三度、私を知らないと言うだろう〉
自らの嘘と、そんな心の有様をイエスに見抜かれていたことを激しく恥じ、後悔したペテロは真実を述べ、逆十字架にかけられて殉教する。そんな彼の墓の上に立つのがキリスト教の総本山、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂だ。
聖人ペテロは嘘をつき、その嘘を悔い改めた人だった。一度は生き延びるために嘘をつき、しかし、嘘を背負って生きることはできないと、壮絶な死を選んだ。
私は今まで「模倣犯」がベスト、と思っていた。
しかし、このシリーズの方が面白いかも。
本作「ペテロの葬列」も前作「名もなき毒」も最高位のレベルと思う。
今回、おっ、と思った。
主人公の妻・菜穂子さんの描かれ方。
前作まで、造形が薄味であった。
今回、心理描写が深くなされ、作品に奥行きが出た。
その結果、シリーズ作品としての『枠』を破ってしまった。
まさか、と思うようなエンディングだ。
タイトルについて
P400
〈あなたは、鶏が啼く前に三度、私を知らないと言うだろう〉
自らの嘘と、そんな心の有様をイエスに見抜かれていたことを激しく恥じ、後悔したペテロは真実を述べ、逆十字架にかけられて殉教する。そんな彼の墓の上に立つのがキリスト教の総本山、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂だ。
聖人ペテロは嘘をつき、その嘘を悔い改めた人だった。一度は生き延びるために嘘をつき、しかし、嘘を背負って生きることはできないと、壮絶な死を選んだ。
レンブラントの魔術が生んだ美しい明暗のなかで、『聖ペテロの否認』のペテロは、「イエスなど知らない」と嘘を言い並べている。その彼を、役人たちに引き立てられてゆくイエスが振り返る。イエスの顔には光があたり、ペテロの顔は影に沈む。

P402
真実はけっして美しくはない。この世でもっとも美しいのは、真実ではない。終わらない嘘の方だ。
PS
『人気・実力ともに』、というフレーズがこれほど似合う作家はいない。
ストーリーテリングの巧さ、最終ページに引っ張っていくベクトルの強さ。
いずれも、日本のトップだし、海外作家に引けを取らない。
昨年正月も、宮部みゆき作品「ソロモンの偽証」を読んだ。
私にとって、どちらも最高の「お年玉」だった。
【蛇足】
ネタバレありなので、未読の方は、ここから読まないように。
ずっと誉めてきたけど、あえて瑕疵を挙げてみる。
①菜穂子さんのような性格と立場の方が、一線を越える可能性は、どのくらいあるのだろう?(かなり低い、と思うし、そう信じたい)
②坂本君が詐欺にあって、尚且つ、同じ『事件』を起こす可能性は?
③犯人『佐藤一郎』が、『改心』して罪を悔い改め、且つ、『行動』に移す可能性は?
以上、微妙なバランスの上に、物語が設定されている。
もし、③を否認すると、根本的に作品が成り立たなくなってしまうし、
①から③全て揃う可能性は『ロイヤルストレートフラッシュ』クラス?
・・・と、いろいろ難癖をつけ、申し訳ない。
面白かった、という感想を、撤回するつもりはない。
【シリーズ関連作品】


「誰か」は、「ペテロの葬列」「名もなき毒」に比べると、面白さのレベルは、少し落ちる。
でも、後に続く2作を考えると、押さえておきたい。
【さらに蛇足】
アクションシーンの多い「クロスファイア」も、宮部みゆき作品代表作の一つとして(ぜひ)入れたい。
DVDも購入して、何回も観ている。
【ネット上の紹介】
今多コンツェルン会長室直属・グループ広報室に勤める杉村三郎はある日、拳銃を持った老人によるバスジャックに遭遇。事件は3時間ほどであっけなく解決したかに見えたのだが―。しかし、そこからが本当の謎の始まりだった!事件の真の動機の裏側には、日本という国、そして人間の本質に潜む闇が隠されていた!あの杉村三郎が巻き込まれる最凶最悪の事件!?息もつけない緊迫感の中、物語は二転三転、そして驚愕のラストへ!『誰か』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ待望の第3弾。

P402
真実はけっして美しくはない。この世でもっとも美しいのは、真実ではない。終わらない嘘の方だ。
PS
『人気・実力ともに』、というフレーズがこれほど似合う作家はいない。
ストーリーテリングの巧さ、最終ページに引っ張っていくベクトルの強さ。
いずれも、日本のトップだし、海外作家に引けを取らない。
昨年正月も、宮部みゆき作品「ソロモンの偽証」を読んだ。
私にとって、どちらも最高の「お年玉」だった。
【蛇足】
ネタバレありなので、未読の方は、ここから読まないように。
ずっと誉めてきたけど、あえて瑕疵を挙げてみる。
①菜穂子さんのような性格と立場の方が、一線を越える可能性は、どのくらいあるのだろう?(かなり低い、と思うし、そう信じたい)
②坂本君が詐欺にあって、尚且つ、同じ『事件』を起こす可能性は?
③犯人『佐藤一郎』が、『改心』して罪を悔い改め、且つ、『行動』に移す可能性は?
以上、微妙なバランスの上に、物語が設定されている。
もし、③を否認すると、根本的に作品が成り立たなくなってしまうし、
①から③全て揃う可能性は『ロイヤルストレートフラッシュ』クラス?
・・・と、いろいろ難癖をつけ、申し訳ない。
面白かった、という感想を、撤回するつもりはない。
【シリーズ関連作品】


「誰か」は、「ペテロの葬列」「名もなき毒」に比べると、面白さのレベルは、少し落ちる。
でも、後に続く2作を考えると、押さえておきたい。
【さらに蛇足】
アクションシーンの多い「クロスファイア」も、宮部みゆき作品代表作の一つとして(ぜひ)入れたい。
DVDも購入して、何回も観ている。


【ネット上の紹介】
今多コンツェルン会長室直属・グループ広報室に勤める杉村三郎はある日、拳銃を持った老人によるバスジャックに遭遇。事件は3時間ほどであっけなく解決したかに見えたのだが―。しかし、そこからが本当の謎の始まりだった!事件の真の動機の裏側には、日本という国、そして人間の本質に潜む闇が隠されていた!あの杉村三郎が巻き込まれる最凶最悪の事件!?息もつけない緊迫感の中、物語は二転三転、そして驚愕のラストへ!『誰か』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ待望の第3弾。