【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「晩鐘」乃南アサ

2018年11月06日 20時50分39秒 | 読書(小説/日本)


「晩鐘」乃南アサ

犯罪被害者の問題を取り上げた「風紋」。
本作品は、その続編、7年後という設定。
当時、高校生だった真裕子は大學を卒業し、親元を離れる。
加害者側の子供は、当時小さかったので、記憶はなく何も知らされずに長崎の祖父母の元で育つ。
新聞記者の建部は長崎に転勤となり、新たな殺人事件に関わる。

上中下の三巻、読みごたえたっぷり。
P251
父は老けた。本当に。けれど、その父に向かって、真裕子は言いたかった。寛子のことや生まれてくる子どものことなど、本当はどうでも良いのだ。ただ、真裕子は父を許していない。真裕子は今でも、母が殺された原因の一端は父にあると思っている。父が、もっと母を大切にしてくれていれば、あんな事件など起きるはずがなかったと思っている。

暗く重いテーマなので、読んでいる間、1週間くらいずっと気分も重苦しかった。
登場人物の中で、もっとも普通なのは俊平と寛子の母子かと思う。
俊平が出てくるとほっとする。
大輔が一番救われない。
さらに気の毒なのは、その祖父母。
このエンディングは、絶句であった。

【おまけ】
「風紋」から7年後の設定なので、登場人物たちに携帯を使わせている。
そのあたり、時代の流れを感じる。

【関連図書】

「風紋」乃南アサ

【ネット上の紹介】
母親を自分が通う学校の教師に殺された真裕子は、大学を卒業後、親元を離れる。一方、父親が加害者となった大輔と絵里は、その事を知らずに長崎の祖父母のもとで生活を送っていた。また、事件を取材した新聞記者の建部は長崎に転勤となり、そこで新たな殺人事件に接していた。―運命が変わったあの日から7年。事件に関わる人間の姿を、熟練の筆で描く大作。