百醜千拙草

何とかやっています

南アフリカが世界を変える

2024-01-16 | Weblog
週末のがっかりニュースは、自民党の裏金問題。結局、検察はアベ派五人衆の立件を諦め、秘書に詰め腹を切らせて終わらせるつもりのようです。ま、最初のガサ入れでさえ、わざわざ予告してからやったようなものでしたから、この事件の収束のシナリオはあらかじめ書かれていたのでしょう。法律の専門家から見ると、裏金づくりの共謀があったかどうかが焦点のようで、それを立証するのは困難とのこと。それはそうかも知れませんけど、一般国民であれば、冤罪を作った上に裁判で負けたら控訴までして被害者を苦しめるくせに、与党政治家であれば億単位の裏金を作ってもお咎めなし。国民は納得できず、怒り爆発。ま、陸山会事件をでっち上げ、調書内容を捏造した東京地検特捜を私はもとより信用していませんけど。そもそも特捜は、GHQが旧日本軍の貯蔵していた隠退蔵物資を摘発する組織として始まったという経緯から、アメリカとその手先(自民党清和会 )と同じ穴のムジナであるという話は以前からあり、陸山会事件のように政治権力闘争の道具でさえあったわけで、その点を考えると、期待はずれというよりも予想通りの展開でした。しかし、今回の特捜への国民の怒りは凄まじく、かつての不正献金事件の時のように、東京地検は再び黄色いペンキを打ち掛けられることになるかもしれません。

さて、先週の山場は、私的には何といっても、ハーグの国際司法裁判所(ICJ)での南アフリカ弁護団による弁説でした。南アフリカは先月、イスラエルをジェノサイド禁止条約違反で提訴、その最初の弁論が、1/11の現地の朝から三時間以上に渡り行われました。南アフリカの代表と弁護チームが訴えたイスラエルの罪状とガザおよびパレスティナの被害は、多大な証拠に則ったロジカルで力強い弁論で、見る者の心を揺さぶりました。中でも、淡々とパレスティナの被害事実の具体例を積み立ててイスラエルの罪状を追求したアイルランド女性弁護士のBlinne Ní Ghrálaighの弁説では凄みがありました。アイルランドもノルマン人やイングランドに支配され虐げられてきた歴史を持っています。

彼女の演説の中で、救助隊がある種の子供たちを形容するのに使う一つの略語が紹介されました。

WCNSF 

    "wounded child with no surviving family"の頭文字を取ったものです。こんなに悲しい言葉があるでしょうか。しかも、この子供たちは天災でも何でもなく、イスラエルの悪意ある無差別虐殺行為の犠牲者なのです。

彼女の弁論をカバーしたニュースと裁判の様子。

一方、その翌日行われたイスラエルの反論は、正直、「よくこんなことがシラフで言えるなあ」と呆れるレベルのお粗末さでした。イスラエルの主張は、ハマスを選択的に攻撃し、ガザの市民へのダメージを少なく済むべく全力を尽くしているということらしいです。しかしあれだけの無差別爆弾(dumb bomb)をガザに集中投下し、70%の犠牲者が子供と女性という2万人の市民を3か月という短期間で虐殺し、生き延びた子供の手足や未来や家族を奪い、ガザを誰も住めないような瓦礫の山にし、イスラエル国防省の役人からして「ガザを兵糧攻めにする」と公言したイスラエルが、これだけの物的証拠を前にして、何を言うか、と心底、怒りを覚えました。弁護士の一人はやる気がないのか、弁論の原稿の紙をなくして壇上で立ち往生するというお粗末さ。イスラエルは結局、見苦しい言い訳に終始し、南アフリカの主張の枝葉末節に反論するだけに終わりました。

裁判所の判事が完全に中立ならば、南アフリカが負けることはありません。残念ながら、ここは国連、第二次世界大戦の戦勝国が牛耳る組織であります。中国、ロシアを除く常任理事国は多かれ少なかれイスラエルの味方をするでしょう。とくに、そもそもパレスティナ問題を引き起こした元凶である三枚舌外交のイギリスとそれに乗ったフランス、そして何より今回の虐殺に関してはイスラエルと同等の罪を負うべきアメリカが常任理事国ですから、裁判の帰趨はわかりません。加えて、パレスティナ問題に関して国連の勧告をずっと無視し続けてきたイスラエルが国際司法裁判所で敗訴したからと言って諾々と従うわけがなく、事実、ネタニヤフはICJでどういう判決が出ようとも戦闘はやめないと宣言。

その後、南アフリカは、バイデン政権に今度はアメリカをジェノサイド幇助で提訴すると通告。武力で正面からやり合って勝てない相手には、世界の世論を味方につけて、束になってかかるしかありません。ネルソン マンデラの意思を引き継いだ南アフリカが「国家」として、立ち上がってくれたことは、素晴らしいことです。南アフリカの行動は、欧米大国とその属国日本の「自分さえ良ければよい主義、勝てば官軍主義(帝国主義/資本主義)」に対するアンチテーゼであり、今後の進むべき世界の指針を示し、この非道で凄惨なガザの大虐殺の中で世界中の差別に苦しむ人々に希望を与えたと思います。

また、今回の南アフリカの提訴の意義が大きいのは、西側/イスラエル対アラブ/イスラム世界という対立の構図と一見、無関係のように見える南アフリカがイニシアティブをとって、国家として世界に人道主義を訴えたという点です。この南アフリカの行動はこれまでの目先の国益を求めてのものではないからこそ、西側諸国はその国民への影響を恐れ、今回の南アフリカのイスラエルとアメリカに対するICJへの提訴の報道を抑制しています。日本に至っては、このニュースはほとんど無視。イスラエルのジェノサイドに抗議して、イスラエルへ向かう船舶の江海への侵入を止めたイエメンに対して、先日のアメリカとイギリスがイエメンへの爆撃を行った事件に関しても、NHKはあたかもテロ組織への制裁であるかのように報道。ま、アメリカの使いパシリの自民党政権に人事を握られ、自民党に報道内容に口を出されるNHKに公平な報道など求めるのは無理でしょうが。

今年末の大統領選に向けて予備選が始まろうとしています。民主党はバイデンに二期目をやらせるつもりでしょうが、無理でしょう。バイデンはようやく大統領になれたのに、ウクライナの戦争を煽り、イスラエルの虐殺に手を貸し、死の商人の手先という汚名を着て晩節を汚し、一期でホワイトハウスを去ることになると思います。次の政権が共和党になるのは仕方がないです。しかし、イスラエルのアメリカ大使館をエルサレムに移したトランプがまた返り咲くのは御免被りたい。トランプはバイデンのような武器商人ではないかも知れませんが、数え切れぬほどのセクハラや詐欺などの数々の訴訟に示されるように、人間性には大いに問題があり、そして自己顕示のためには、米軍の最高司令官という立場を行使して核ミサイル発射ボタンを押すぐらいのことはやりかねない危険人物ではないかと思っています。人の不幸を望むのはどうかと思いますけど、正直、バイデンもトランプも、二人とも予備選の間に脱落してもらいたい。フランス並みとはいいませんが、アメリカももっと若く新しい世代の人に任せたほうがよいでしょう。
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ICJ予想

2024-01-09 | Weblog
震災の被災者の生活を伝えるニュースを見ていると心が痛みます。亡くなった方や遺族の苦しみ、避難生活の困難さ、元の生活を取り戻すまでの苦労を想像すると、募金ぐらいしかできない自分の無力感を強く感じます。そんな中で、すぐ意味ある行動に移せる人々には尊敬の念しかありません。中でも心を打たれたのは愛知のトルコ人ボランティアの方々が行った炊き出し。異国の地で自らも不自由な生活をしている中で、本来無関係の他人を思いやり、かつそれを行動に移すことができるというのは、われわれ自身を逆の立場において想像してみれば、どれほど大変なことか理解できます。現場では、いつもの山本太郎の姿がありました。過去十年にわたって、災害時に現場に入って自らボランティアとして活動しながら被災地の情報を集めて、現地の人々の要望を聞いて、国会で伝えるという活動をつづけてきた国会議員は彼だけでしょう。災害支援NPOの信頼も厚く、現場のNPOと直接連携できる国会議員は彼一人という状況。一方で、災害対策を話し合ったという与野党の代表議員、現場の邪魔になるからという理由で現場には行かないことを決定したそうですが、なぜか防災服で一緒に記念撮影。

山本が現地で何をしてきたのかは下の彼からの情報を伝えるツイートによく表れているので、是非、読んで欲しいと思います。現地にも行かないのにオフィスの中で防災服コスプレで「やってるフリ」しているおじさんには、わからないことでしょう。まして、同じ国会議員でありながら、現場の何も知らず、なんの行動もしないヘタレどもが、山本太郎が被災地に行って渋滞を引き起こしたの、被災者用のカレーを食べたと言っては叩く、この低劣さには眩暈がします。ついでにいうと、呆れたのが、被災地と遠くはなれた街角で募金活動する自民党のクソ議員。予算をつけれる与党の立場にありながら、募金活動で庶民に金を出させようとするそのハズれ具合。そんなに募金が好きなら、せっせと作った裏金と官房機密費を寄附すればよい。多少の罪滅ぼしにはなるでしょう。

山本太郎の報告は以下の連続ツイートです。

さて、天災で家屋や生活や命を失う以上に、痛ましく悔しいのは、意図的に行われる無差別な民族の殲滅で、パレスティナでのジェノサイドは進行中です。アパルトヘイトで苦しんだ歴史を持つ南アフリカは、先月、国連の最高法規機関であるInternational Court of Justice (ICJ) にイスラエルをジェノサイド禁止条約違反で告発し、今週から聴取が開始されます。この南アフリカの提訴にヨルダン、トルコ、マレーシアは賛意を表明。こうした直接的なイスラエルの非難はなくとも、アメリカ以外のほとんどの国連参加国はイスラエルに停戦を求めている状況であり、すでに12,000の子供がイスラエルの攻撃によって殺されている現状と、アメリカがイスラエルのパレスティナ弾圧を従来から支援してきたという事実を鑑みると、より一層強い圧力をイスラエルとアメリカにかけ続けていかねばなりません。そうこうしている間にも、毎日、子供が殺され続け、生き延びた子供も手足に重度の障害を受け、医薬品供給が止まり麻酔も輸血もなしで、切断手術を受けるという状況が続いています。

今回の南アのイスラエル提訴の帰趨についてのインタビュー動画(日本語字幕)のツイートを見つけましたので紹介します。

日英メディア翻訳者斎藤キリク@kirikousaito

ジェノサイド条約に基づいた差し止め命令を国際司法裁判所で勝ち取った経験のある人権弁護士フランシス・ボイル氏の 今回のイスラエル対南アフリカの裁判に関する所見。 南アは勝てるのか。 なぜ国際刑事裁判所(ICC)ではダメなのかなど。 必見。
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新年

2024-01-02 | Weblog
正月休みでのんびりしていたら、新年早々、石川での地震災害で驚きました。
すぐに取り壊される役に立たないリングに350億もかける余裕があるなら、直ちに万博中止を決定して被災地の援助と復興、それから一部電源喪失したり、燃料プールの水漏れを起こした原発の廃炉に資金を振りむけろ、という沢山のツイートは正論中の正論です。そして、もし今、再び原発事故が起きたらと思ったら、悪夢の自民党政権下、しかも無能の極みのキシダ政権、不安しかありません。

さて、去年はいろいろと大きな出来事があった年でした。
個人的には研究活動から本格的に引退し、職を変えたことでしたが、今のところ、研究という活動を離れたことにほとんど何の後悔も寂しさも感じていません。この十年ほどはアカデミアでの研究がどんどん面白くなくなっていきました。理由は複数思いつきますが、基礎医学研究においては、前のNIHディレクターで医師でもあるフランシス コリンズが10年にわたってより実利的な応用研究を強調してきたことが大きいのではないかと思います。そうした研究でないと研究費を取れないと思う研究者の忖度もあって本来、アカデミアでしかできないような研究は自己制限されていったのではないかと感じます。製薬会社の下請けのような研究を製薬会社の何百分の一の予算でチマチマとやっていて面白いわけがありません。また、最近の中国が科学論文数で世界一になり、日本が科学論文出版で世界への貢献度を落としているというニュースを見ても、正直、この十年あまりほど、中国からの論文原稿に数多く直に接して時間を浪費してきた身としては、むしろ、この世界から足を洗えてよかったという気持ちの方が強いぐらいです。

とはいっても、どんな世界にも光もあれば闇もあります。現状にはまずまず満足はしていますが、人生の義務的なことがらをほぼ終えた身としては、二ー三年をめどに、また熱中できる新しいことをしたいと望んでいます。それまで頭と体が保てばの話ですが。

日本国内では、増税クソメガネがやるべきことは何もやらず、やるべきことでないことばかりに邁進した結果、国民生活はますます困窮を深めました。しかし、今年はいよいよ悪夢の自民党政権が崩壊の秒読みに入ったと思わされることがいろいろありました。日本の国民が他の先進国並みに十分に立憲民主主義を理解した成熟さを持っていれば、腐敗しきった自民党政治はとっくの昔に終わっていたはずで、日本はここまで貧困化せず、格差も開かなかったでしょう。民主主義国家でありながら、実質は未開の独裁国家、一部の人間が持たざる人々を搾取し、恵まれない人々には「努力が足りないからだ」と上から目線で自己責任論を押し付ける恥知らずが跋扈し、一旦、下に置かれた人間はそこから這い上がれないような社会構造が固定化されてきました。西洋が闘争の末に勝ち取った民主主義を戦後日本は憲法に戴くことができたにも関わらず、従来の日本人の事なかれ主義と上下関係を軸に置いた人間関係ゆえか、少なからぬ日本人はいまだに立憲民主主義を理解も実践もするだけの成熟度を得ていないと感じます。パワハラ、セクハラが横行し、加害者を非難するより、被害を受けた方の落ち度を強調するような社会では、自民党が改憲案で削ろうとしている憲法97条(基本的人権の不可侵性)に対する意識が低すぎると言わざるを得ません。

特に最近、「自己責任」という言葉をよく聞きます。国民からは世界第二位の高い税金を搾り上げるくせに、先進国最低レベルの社会保障のニッポンで、困窮し助けを求める国民を突き放す時に、自民党政府や金持ちが使う言葉です。その一方で手前らは、世界最高レベルの議員報酬をとった上に裏金づくり。しかしながら、それを放置した責任は、結局はこれらの腐敗政治屋を選挙で落とさなかった日本国民自身に求めるほかありません。そういう点では自己責任と言えましょう。

不人気で過去最高の不支持率を誇る増税メガネへの不満、それから例の組織的裏金づくりで、自民党が追い込まれているのは間違いありません。だから、来年早々に自民党は改憲発議を出し、永遠の独裁を可能にする「緊急事態条項」を通してしまおうとしています。これさえ通してしまえば、自民党は選挙そのものを止めることができ、内閣の独裁は完成し、国民の支持率を気にする必要はなくなるのですから。それを国民投票で止めることができないと、日本は再び戦前に逆戻りし、個人の権利は蹂躙され、生活はますます苦しくなり、「欲しがりません、勝つまでは」の生活を延々と強いられることになるでしょう。日本人に改憲の危険性への危機意識が十分にあるように思えないのが不安です。

そして、現在進行中でもある昨年の最大のニュースは、この三ヶ月のガザの破壊と大虐殺のことでした。ヤシーン村の虐殺に象徴されるパレスティナ侵略に始まった血に塗れたイスラエル建国の後、シオニストは数多くのパレスティナ難民を生み出し、75年にわたって彼らを迫害し、土地を奪い、貧しさと窮屈な生活を強いてきました。そして、ハマスによる抵抗を逆手にとって、「自己防衛」という名目で、ガザのパレスティナ住民を殲滅し、ガザの完全破壊を目指すイスラエルの極右政権は、この3ヶ月で桁違いの大量の爆弾を使って無差別に破壊と殺戮を繰り返し、たった3ヶ月で12,000人の子供を虐殺するという戦争犯罪史最悪の結果を晒しました。イスラエルに殺されたパレスティナ人の92%は一般市民です。まさに悪魔の仕業としか形容しようがない。その悪魔が、太々しくも、ハマスとパレスティナ人を「人間以下の存在」で文明を破壊するモンスターと呼び、戦いに勝つまで、相手を叩き潰す、停戦を叫ぶものはユダヤ人差別者だ、と言うのです。ネタニヤフは狂人としかいいようがない。今はアメリカ以外のほぼ全世界がイスラエルに停戦を要求しています。いくつかの国家元首は、「ネタニヤフ政権はナチスより邪悪である」、「イスラエルはテロ国家だ」と声高に批判し、南アフリカはジェノサイド条約違反でイスラエルを国際司法裁判所(ICJ)に提訴しました。第二次大戦が終わって約八十年たって、このような人道を完全に無視するような異常な政権が、世界一強大な軍事力をもつアメリカの支援のもと、ずっと迫害してきた人々を市民、子ども、老人、病人を問わず、たった三ヶ月で無差別に大量虐殺し、自治区をほとんど瓦礫の山に変えてしまったということが現実であるのが、本当に信じられません。この虐殺を支援しているのが、他人の命とか人道とかは、自らの利益と金儲けの前には何の意味もないと思っているような連中です。

バイデンはウクライナとイスラエルの支援はアメリカの安全保障における「投資」である、と説明しました。バイデンもネタニヤフも動機は多少は違えども同じ穴のムジナ。ネタニヤフも、ここまでやってしまった以上は、パレスティナ人から彼らの土地を完全に奪い、レバノン、シリア、イランの反イスラエル勢力を殲滅し終えるまで、とことんやるつもりでしょう。そして、それまでアメリカと英仏は見捨てるはずがない、と考えているのでしょう。しかし、ツケは必ず天の采配によって払わされます。ネタニヤフの残りの人生は安楽なものにはならないでしょう。現在、イスラエルは、シリアやレバノンへの空爆も激化させており、それに対してロシアが介入してきています。イスラエルに殺されたイラン革命軍参謀の報復もイランは考え始めているでしょう。このイスラエルと西側利権国とアラブ世界の争いが第五次中東戦争へとエスカレートした場合、最後はネタニヤフはヒトラーと同じ運命を辿ることになるでしょう。

聖書の黙示録とエゼキエル書にあるこの世を滅ぼす悪魔の国マゴグとその王、ゴグはロシアのことだと考えられています。聖書ではゴグが中東や北アフリカの国々と連合軍を組んでイスラエルに攻め込んでくると予言されています。今回のイスラエルの周辺アラブ諸国に対する攻撃が第五次中東戦争へと発展し、そこへロシアが介入してくるとなると、アメリカを巻き込んだ第三次世界大戦勃発となり、アメリカの手下である日本も無傷では済まなくなるでしょう。聖書の記載からはその後、一旦は中東を支配したロシア連合軍が内ゲバで自滅して、最後はイスラエルが中東を支配することになるということですが、本当にそういう展開になるのかどうかは勿論、まだわかりません。

それはともかく、戦争ビジネスの手先となり、安全保障のための「投資」と称して、子供を1万人以上も殺しまくるイスラエルを支援するバイデンも邪悪な存在だと言って差し支えない。彼らにとってパレスティナの子供達は未来のハマスの兵士であり、緑の芝生に生える雑草の芽ぐらいにしか思っていないのでしょう。地球全体で見れば、ネタニヤフやバイデンやアメリカ軍産や、その金魚のフンの自民党の方が、人類に対する害虫です。害虫にも5分の魂と5分の理があるのは認めましょう。しかし、子供を無差別に殺すことは絶対悪です。その一点を以てしても、彼らは最も強い言葉で非難されなければなりません。
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イスラエルを止めるのは

2023-12-26 | Weblog
イスラエル建国以来、イスラエルとアラブ社会の間で四度(以上)の大きなアラブ - イスラエル戦争(中東戦争)がありました。その恩讐を乗り越えて、30年前、PLOとイスラエルは和平に達することができました。それはこの二十年ですっかり崩壊し、現在の極右イスラエル政権によって、最悪の状況が生み出されました。この二ヶ月のネタニヤフの言動や行動を見ていると、この男は気が狂っているとしか思えません。PLOとの和平を実現させたラビン元イスラエル首相の暗殺の裏にいたのがこの男だという噂もあり、筋金入りの人種差別主義者でパレスティナ人の殲滅とパレスティナの土地の単独掌握がイスラエルの正義だと信じているようです。イスラエルの空爆によってガザで一晩で百人以上を殺したクリスマスの日、この男のスピーチには怒りと恐怖で鳥肌が立ちました。


当然、ネタニヤフに対する周辺のアラブ諸国の反感は強く、もとを辿れば、今回のハマスの攻撃にしてもこの男が引き起こしたものと言えなくもありません。自分でわざわざ災いの種を撒いておいて、相手に罪をなすりつけるような行いに私は全く共感の念を持ちませんが、旧約聖書を文字通りに受け取れば、彼の理屈にも筋が通ってはいるのかもしれません。しかし、私は少なくとも彼を同じ人間とは思えません。

現在、当然ながらガザの大虐殺に対する国際社会の非難は激しく、国連でイスラエル政府の味方はイスラエルについでユダヤ人人口の多いアメリカのみ。アラブは実力行使を取り始めています。イエメンのフーシは紅海からスエズ運河を通ってイスラエルに物資を運ぶ船舶の通行を阻止。そしてアラブ社会の外でも、近く中国がイスラエルの経済制裁を決定するとの噂。これは実現するとイスラエルには大きな打撃でしょう。

そこへ来て、イスラエルはシリアへの空爆によって、イラン革命軍参謀、Sayyed Razi Mousaviが殺害されたとのニュース。いよいよ、全面的な中東戦争へと向かうかの様相を示してきました。

ここで、やはり帰趨の鍵を握るのはアメリカとなりそうです。そして、そのアメリカに強く交渉できる国があるとしたら、中国でしょう。とことん実利的な中国人と米ユダヤであるからこそ、この戦争の得失のソロバンを弾いて、イスラエルの狂人を止めることに合意するかもしれません。

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サムソンの選択

2023-12-19 | Weblog
なぜハマスは今回、二年もかけて準備して、勝ち目がないとわかっている奇襲攻撃を仕掛けたのでしょうか?これは私も疑問に思っていました。神風だよりで真珠湾攻撃をしかけた時の日本政府ではあるまいし、彼らが強大なアメリカの軍事支援のもと核兵器でさえ保有しているイスラエルに攻撃を仕掛けて勝てると思っていたはずがありません。それで、私は、これはパレスティナ弾圧を世界に知らしめるために行った命懸けのデモンストレーションであったのだろうと想像していました。おそらく、それは当たらずとも遠からずだったのだろうと下のツイートとインタビューを見て感じた次第です。

このビデオは、イスラエルの前諜報部長官で海軍司令官であったAmi Ayalon氏のインタビューですが、かれは「今回の戦争は、分断によってパレスティナをコントロールしようとしたイスラエルのハマス支援の結果が招いた」と述べています。

ガザにおいてハマスが台頭する前はファタハがパレスティナ自治を担っていました。PLOのアラファト議長は1993年、イスラエルの融和派であったラビン首相と和平交渉をまとめ、イスラエル政府とPLOがお互いを独立した政府と承認し、イスラエルは占領した地域から撤退するとするオスロ合意に調印、共にノーベル賞を受けております。その後、ラビンはイスラエルの反和平派に暗殺され、アラファトも死亡、結局、イスラエルとパレスティナの共存平和路線は頓挫し、2006年のイスラエルのガザ侵攻を以て、この合意は実質崩壊しました。

アラファトはファタハの初代議長であり、ファタハは当初、シリアの支援のためイスラエルへの武装闘争活動をしていましたが、その後、PLOに参加、80年代からやがて穏健路線へと変わっていきます。そのファタハがパレスティナの統治を担ってきたわけですが、2006年のパレスチナ評議会選挙でハマスに敗れ、以後、パレスティナ自治政府はハマスがガザを、ウエストバンクをファタハが支配するという分裂状態になっています。そして、このパレスティナ政府の内部分裂こそが、イスラエルの戦略であったようで、相手を内輪揉めさせている間に火事場泥棒を働こうという計画であったようです。事実、この間もイスラエルはパレスティナ人居住者の土地を力づくで奪い、強引に入植者を入れ、その領土拡大は驚くような速さで進んできました。

ということで、このインタビューとツイート主のArnaud Bertrand氏のツイートの一部を示しておきます。

以下ツイートより。
「なぜ10月7日なのか?」について、この動画は私が聞いた中で最高の説明かもしれない。驚くべきことに、それはイスラエルの諜報機関シン・ベットの元トップであり、海軍司令長官でもあるアミ・アヤロンによるものだ。

(10月7日の攻撃の)最も主要な原因は「政治的パラダイム」であり、イスラエルによるパレスティナの「分割統治」であった。つまりイスラエルは、パレスチナ人が統一された指導部を持たないようにしたかったのであり、パレスティナ人が「話すべき相手もなく、話すこともできない」という状態におきたかったのだ、と彼は言う。そして、イスラエルは、ハマスがガザを、そしてパレスチナ当局がウエストバンクを支配するようにさせ、お互いがいがみ合うように扇動したのである。その目的のために、イスラエルは、ハマスを強化し、援助し、資金を提供したのだ。

その結果、ハマスはパレスチナ人の支持を得たのだが、それは、ハマスが、イスラエルの占領に反対し、パレスチナ人の自由のために戦う唯一の政権であったからである。一方、ファタハとパレスチナ当局はパレスティナ人からは、「イスラエルの協力者」と認識されるようになった。パレスチナ人の70%から80%はハマスを支持しているが、それはハマスを(自分たちの)自由のために戦ってくれる組織だと認識しているからにほかならない。

イスラエルが10月7日以前の状況を完全に誤解していたのは、イスラエルが "ハード "を測っていたのに対し、ハマスが "ソフト "を測っていたからだ。つまり、イスラエルとパレスチナ人の戦いの後、イスラエルにとっての成功は "人命、軍事施設、軍事インフラの損失 "で測られるのに対し、ハマスが測っているのは "人々の支持 "であった。例として、2021年5月、2週間にわたって戦闘が行われ、約300人のパレスチナ人が殺された(イスラエル側は17人)が、その戦闘について、イスラエルはハマスが「大きな損失と軍事的大敗北を喫した」と考えたが、ハマスの立場からすれば、それはハマスに対するパレスティナ人の支持を高めた「大きな勝利」であった。

もうひとつの重要な点は、バイデンが提示した新しい中東(案)だ。パレスチナ人は自分たちを、独立した民族、独立した国家と考えているのに対して、この案で提示された認識を知って、彼らは世界から孤立し見捨てられた存在だと感じたのだ。その結果、パレスチナ人が「サムソン・オプションを選んだ」のは、失うものは何もないと感じたからであり、「パレスチナ人を無視するのであれば、この地域に安定をもたらすことはできないと世界に示すには、この方法しかないと考えたからだと思われる。
 [筆者注:サムソン オプション(サムソンの選択)とは、侵略された場合に、自らの犠牲を承知で世界を道連れに核兵器を使う イスラエルの戦略のことで、旧約聖書(士師記)にあるペリシテ人に捕らえられて奴隷となっていたイスラエルの英雄、サムソンが、自らの命を犠牲にして数多くのペリシテ人を倒したエピソードに基づいています]

現在のイスラエル指導部の多くの人々が、「ガザに人災を起こすことを政治目標」に掲げているという。これはまさに、最も過激で根本的なイスラム組織の理論であり、ISISやアルカイダの神学であり戦略なのだ。

「ハマスはISISである」というネタニヤフ政権の主張を覚えているだろうか?しかし、イスラエルの目指していることは、まさにISISやアルカイダと同じである。イスラエルのシン・ベットの元トップが、現イスラエル政府はISISだと言っているのである。

ここでの解決策は何なのだろうか?
われわれのアイデンティティを失うことなく、より安全になる唯一の方法は、10月7日の出来事が「世界的な問題」となり、世界のすべてのプレーヤーが2国家というコンセプトに合意することだ。これは、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中国、アラブ和平の発起人、彼ら全員が理解している。
、、、、

思うに、イスラエル以外のほとんどの国は、オスロ合意に戻るしか解決策はないと考えていると思います。どうロジカルに考えても他にない。イスラエルのシオニスト政権が「この地はユダヤ人に与えた約束の地であり、そこに住む異教徒を殲滅しなければならない」という聖書の神の言葉を礎に、頑なにパレスティナ人の殲滅と完全な土地の掌握を主張し、1万人近い子供を含む一般人を虐殺し続けています。キチガイ沙汰ですが、手に負えないのは、シオニストの彼ら自身は自らの正当性を半ば本気で信じていることでしょう。イスラエルのシオニスト政権とそれに洗脳されたイスラエル人は、ナチスとそれを支持した民衆と相似だと思うと、暗い気分になります。

想像ですが、この戦争の落としどころとしては、イスラエル国内の良識派とアメリカの支援中止によるネタニヤフ政権の終焉しかなさそうです。実利を重んじるユダヤ人が狂気のネタニヤフとシオニスト政権と心中するはずがないと思います。すでにアメリカのグローバル ユダヤ企業、スターバックス、マクドナルド、フェイスブック、グーグルなどでボイコットやプロテストが起こり始めており、経済損失を出し始めています。アメリカユダヤ商人が損得勘定でネタニヤフを見限ったら、アメリカはイスラエル支援を止めて、シオニスト政権は孤立し自壊するでしょう。

ノーカット版
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バカの壁

2023-12-12 | Weblog
この2か月あまり、イスラエルのパレスティナに対するジェノサイドのニュースで、他の話題に心を向ける余裕がなくなってしまいました。人間はどうしてこんなにバカなのだろう、と中東から遠く離れた場所から眺めればわれわれは思うわけですが、思うに、当事者はひどい視野狭窄に陥っていて、一歩離れたらすぐにわかることでさえもまともに判断できない状態になっているのでしょう。

ナチスドイツを支持したドイツ人、太平洋戦争で特攻隊に日の丸を振っていた日本人、自分たちはパレスティナのテロ組織の被害者だとでも思っているイスラエル人、第三者の立場からみれば、彼らは正気を失っているとしか思えないのですが、当の本人たちは彼らの狭い環境の中で自らの思考や行為の正当性を信じているのだと思います。イスラエルは徴兵制を持ち、兵役従事者はその兵役の間に徹底的にパレスティナ人は敵であって国を守るためには「心を鬼にして」彼らを殲滅することが必要なのだ、という理屈を教え込まれるそうです。「鬼畜米英」とか「中国が攻めてくる」プロパガンダに日本人も容易に洗脳されたこと思うと、軍組織という非民主主義組織で強制的に数年を過ごす間にそこで教え込まれることに染まらない方が難しいように思います。ちょうど、破産して家族を困窮させるまで献金する統一教会の信者、公明党に投票する創価学会員、そして、自民党に投票するする国民のように。

これを乗り越えるのは本当に難しいことです。「バカの壁」という本が昔、流行りましたが、まさにこれです。つまり、「人は知りたくないことに耳を貸さず、都合の悪い情報を遮断する」のです。気分が悪くなるような真実に直面したくないという感情の問題なのです。最初から聞きたくないという感情が先にたっているのだから「話せばわかる」わけがありません。感情は理性で制御しないと暴走します。感情に支配されるのは容易ですが、理性で感情を制御するのは、難しく、トレーニングが必要です。しかるに、理性で感情をコントロールできる能力、それが人間と動物を分けるものであり、それができるようになることが人としての成熟であります。それはともかく、自らの感情や信条を離れ、第三者の立場に立って状況を眺めて判断する能力というのは日々、そういう訓練をしていかないと容易に失われるものです。これは頭がいいとか悪いとかというレベルとは別で、一例としては陰謀論に与する人がそうです。自分の信じていることに対して都合の悪い事実がある場合に、それをいまだ明らかになっていない「何らかの原因」を根拠なく想定することで説明しようとする一種の妄想ですが、本人はそれが妄想であることに無自覚です。事実を客観的に見て何らかの結論を導くのではなく、自分の結論に都合の良いデータを寄せ集め、都合の悪いものは無視するのが陰謀論者であり、謂わば「バカの壁」に囲まれている人と言えるのではないでしょうか。少なからぬイスラエル人が彼らを「テロリストの被害者」だと言い張るのも、ガザのテロリストを殲滅しないと自分たちの国を失うと信じているのも、「バカの壁」でしょう。中東利権とは無縁の世界の大多数、国連参加国の絶対的多数の国が、イスラエルがこれまでパレスティナに行ってきたことは国際法の違反であり、イスラエルが侵略者であり、パレスティナ難民は被害者である、と考えていて、アメリカはイスラエルを利用して中東での立場を強めて金儲けしたいと思っているようですから、イスラエル人以外の国の人々の大多数はイスラエル人の「被害者意識」を共有しているとは思えません。私は、このイスラエル人の「バカの壁」を、イスラエルの科学研究者や高等教育機関のツイートから実感しました。彼らは知性の劣った人々ではなく、むしろ知性においてははるかに優れた人々で、普段の彼らの研究や言動は共感、感心することの方が多いのですが、「イスラエルは一方的に攻撃された被害者であり、その敵であるハマスは殲滅しないとならず、その根を断つためには子供まで殺しておく必要がある」というような立場を頑なに取っています。彼らが、建国以来のこの80年弱のパレスティナ問題の歴史を知らないわけがないと思うのですが、あたかも彼らにとって、そもそもなぜパレスティナ問題を起こしたのは誰か、という根本的な問題は存在しないかのようです。彼らは、1200人のイスラエルの被害者のことは強調しても、イスラエルがこの二か月でその20倍近い数のガザのパレスティナ人を殺し、その多くが子供であるという事実は都合よくスルーします。

これは、自民党支持の知り合いとの雑談でも感じたことでした。私が国会で問題になったとある自民党議員の行いについて述べたところ、その議員が彼の推しだったようで、その問題について、それは他の派閥の誰かが失脚を狙って嵌められたという理論を繰り出し、その議員は被害者なのだ、と言い出したことがありました。その嵌めた奴は誰かと聞いても、それはわからない、と答えるのです。トランプが都合の悪い事実を「フェイクニュース」だと叫びまくり、ウソを垂れ流す病理を私は理解しかねていましたが、どうも多くの人にとって「自分の信じていることは客観的事実に優先する」ということを知ってから、私もあまり親しくない人としゃべるときは、自分の信じていることは大っぴらに言わないようにしています。

バカの壁というのは「自分が正しい」と無自覚に信じることからきており、その危険を知ったからこそ「方法的懐疑」という科学の基礎となった思考法が生み出されたのだと思います。
ガザとイスラエルを隔ている壁は、実のところ、この「バカの壁」だと思います。明らかなのは、この壁は非常に強固であり、問題は、この壁を打ち砕くにはイスラエルが自らそれを打ち砕く努力をする必要があるのに、その兆候が見られないということではないでしょうか。こう考えると、村上春樹氏の「卵と壁」の比喩で"システム"と解説された「壁」とは、実は思考システムとしての「バカの壁」のことでもあったのではないかと感じた次第です。
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長官の死

2023-12-05 | Weblog
先日のニュース。ニクソン、フォード時代に国務長官だったキッシンジャーが100歳で死去とのこと。私が小学生ぐらいの時は、日本の子供がアメリカの歴代大統領の名前を覚える遊びがあったほど、日本はアメリカの植民地色が残っておりました。ケネディー、ジョンソン、ニクソン、フォード、、、子供ですから、ニクソンがなぜ任期中に辞任したのかなど知りません。ただ、彼らは「宗主国の偉い人々」でテレビでよく聞く名前だから子供が覚えただけです。ニクソン、フォード政権のころは、テレビのニュースでは「キッシンジャー長官」は、しょっちゅう出てきて、あの陰気臭い顔を何度も目にしたのを覚えております。日本の子供が名前と顔を覚えてしまうほどアメリカの国務長官がテレビのニュースに頻繁にでてくるという異常な事態は、当時は誰も疑問に思っている人はいないようでした。多分、戦争であまりにコテンパンに負けたので、戦争が終わって30年以上たっていても、日本人は戦争に負けたからアメリカの偉いさんがアレコレ言うのをおとなしく拝聴するのは仕方がないとでも思っていたのでしょう。

そのころ、アメリカは中国との国交正常化に向けて準備中で、キッシンジャーは1971年、秘密裡に周恩来と会談を持ちます。これは翌年のニクソン訪中のお膳立てが目的でありましたが、会談内容は秘匿され、機密期間が過ぎた2002年になって内容が明らかになりました。当時、中国は日本の経済発展を見て、日本が再び再軍備化をすすめアジアの脅威となるという懸念を示しました。現在、日本は世界8位の軍事大国であり、軍拡については50年前の中国の懸念の通りになりましたが、戦争をやるような体力はとてもなく、中国の軍事力は日本をはるかに凌駕するようになり、まともにやれば日本の勝ち目はありません。それはともかく、この周恩来の懸念に対して、キッシンジャーは、日本の軍拡に関しては「在日米軍が抑止力である」という話をします。つまり、在日米軍の真の目的は日本の防衛ではなく、日本をコントロールすることであると考えていたいうことで、これが日米安全保障条約の目的でした。今でも横田米軍基地を「横田幕府」と呼び、真の日本の支配者は在日米軍とその最高司令官のアメリカ大統領だと考える人々が少なくないです。実際、日本の多くの政策を決めているのは、日米地位協定に基づいて開かれてきた定例会議、日米合同委員会での在日米軍からの要求のようです。この委員会は、日本側は防衛省、財務省などを含むいくつかの省庁の役人、アメリカ側は在日米軍司令部の軍人と大使であり、アメリカの日本の政策への「命令」は在日米軍を通じて日本の官僚に下され、それに基づいて官僚が内閣を振り付けるという段取りになっているようです。この度のGDP2%の軍事費拡大も、バイデンが在日米軍を通じて日米合同委員会で出させた命令をキシダが実行したものと考えられます。

さて、米中国交に向けて、密かに段取りを進めてきたキッシンジャーですが、そのお膳立てで実現した1972年初頭のニクソンの訪中のあと、同年秋に田中角栄が首相着任早々、訪中し周恩来と電撃的に会談を行い、アメリカに先駆けて中華人民共和国との国交正常化を宣言するという事件がありました。アメリカが正式に国交正常化を宣言する前に、日本が宗主国の許可なく(本当は田中はアメリカに知らせたらしいですが)中国との国交正常化を宣言した田中の行動にキッシンジャーは「Jap」と呼んで激怒したと伝えられています。それが直接原因なのかどうかわかりませんが、キッシンジャーは田中を快く思わず、数年後のロッキード事件で田中角栄の失脚の絵を描いたという本人の証言もあります。その後、角栄の流れを汲む派閥(経世会系)の政治家は悉くスキャンダルで失脚したり死亡したりした一方、アベ派につながる清和会系の議員は守られてきたことを思うと、従順なる「アメリカの犬」たる清和会系に日本の政治権力を与えてきたのもキッシンジャーであろうと想像されます。

そういうわけで、キッシンジャーは、戦後、アメリカが戦争ビジネスで経済を回すための外交という名の他国の戦争の仕掛け人であり、無数の罪なき人々の死の責任者であると一部では評価されております。アメリカでは、アジアや世界でアメリカが介入した戦争の黒幕という扱いで、市民の反感は強く、政府ポストを去ったあとにコロンビア大学教官へ天下ろうとしたら、学生の抵抗が強くて断念したというエピソードがあります。

イスラエルを使ってアメリカの中東利権を確保するという路線にも寄与してきたと考えられます。現在のイスラエルによるガザのジェノサイドもこの人に責任があると言えないことはありません。Wikipediaによると、国務長官時代に多くのシオニストを政府機関に斡旋し、彼らの活動を支援したという記載があります。日本同様、キッシンジャーは、アメリカの利益のために、南米、アジアの諸国に政治的に介入しました。国際法も正義も人道もアメリカの金儲けに勝るものはないと考えていたでのでしょう。アメリカで権力を得たシオニストがイスラエルのシオニスト政権を支持し、ガザやウエストバンクの数多くの子供や病人や市民の生命や生活を破壊しつづけてきました。そこには彼らの損得計算があります。アメリカはイスラエルを使って中東での立場を強固にしたい、そのためにはガザを完全にイスラエルの領地にして、新たな運河を築きたい、その目的達成のために、イスラエル軍がこの二か月で殺した一万人の子供の命はコラテラルに過ぎないとでも考えているのでしょう。そうでなければ、ほとんど抵抗もできない相手を自国の人質を犠牲にしてまで、ここまで大量殺戮し、街を徹底的に破壊しようとする動機がわかりません。アメリカとイスラエルにとってはパレスティナ人とガザという土地は彼らの望む中東利権に邪魔なのです。ならば、 イスラエルはハマス殲滅を口実に核爆弾をガザに使うようなことを計画しているかも知れません。

もし、キッシンジャーがいなければ、中東の風景もウクライナの風景も、そして東南アジアや南米の風景も現在とは違ったものだったかもしれません。そんなことを思いました。
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腐敗の構造

2023-11-28 | Weblog
あっという間に円はその価値を落とし、一ドル150円あたりに定着しました。アメリカや諸外国でのインフレは基地外沙汰になり、景気抑制のために利上げをしていっている一方で、日本はスタグフレーション、物の値段は上がるのに不況が続くという最悪の状態になっています。こんな状態では、思い切った利上げもできず、円は弱まる一方で、食料やその他の資源の多くを輸入に頼らざるを得ない日本の先行きは明るくありません。

こういう厳しいにありながら、まるで他人事かのような態度で木で鼻を括ったような官僚作文を読み上げるだけの邪悪な無能、増税クソメガネの国会答弁を見ていると、怒りが腹の底から湧き上がってきます。増税クソメガネと自民党は己と党の権力維持が第一、中身のない答弁と答弁拒否でノラリクラリと時間をつぶした挙句、「議論はつくされた」と勝手に宣言、採決要員として比例で担ぎ出した元タレント議員を使って強行採決、経団連とアメリカ軍産と統一教会の悪魔のアジェンダを粛々と強行、国民から税金を「吸い上げ」(アベの表現)て、国民の貧困化を進める裏で、オトモダチには大盤振る舞いの悪行三昧。国会で野党がいくらおかしい点を批判しても、そもそも悪意の確信犯ですから、政府与党は、幼稚園のお遊戯の方がマシなレベルの矛盾だらけの言い訳に終始し、そして矛盾を指摘されると「個々の事案についての答弁は控える、、、」と勝手に答弁拒否した上で一般論を棒読みしてお茶を濁す。この連中、生きてて恥ずかしくないのでしょうか?さすがに頭がカラっぽなのが丸出しのクソメガネには、自民党支持の同僚でさえ「アイツはいかん」とダメ出し。ついに内閣支持率が政党支持率を下回りました。つまり、自民党支持者でさえクソメガネのクソっぷりに愛想を尽かし始めたということです。

しかし、擁護するわけではありませんが、これは、クソメガネだけの責任ではないとも言えます。これは「自民党 = 利権」という構造的腐敗ゆえであり、クソメガネもその腐敗構造にがんじがらめになっており、クソメガネは無力な神輿の飾りにすぎません。つまり、クソメガネを下ろして別の看板に架け替えたとしても自民党政権である限り、何も変わらないということです。ラベルを張り替えたら中身も良くなるだろうと錯覚する日本人のおめでたさを連中は利用して、適当なところで首相や内閣をコロコロと替え、適当なところで解散し、その都度、お祭り騒ぎで目眩し、結局は同じ劇団の大根役者が演じる茶番。こんなにコロコロ解散したり辞任したりで、まともな仕事ができるはずがありません。

この利権による腐敗構造を変えるのは難しいと同時に簡単でもあります。難しいのは自民党が政権を握っている限りは変えることは事実上不可能だからです。簡単というのは、自民党を下野させれば、一瞬にして解消できるからです。そもそも設立時から自民党が支援してきた統一教会ですから、統一教会問題も速やかに解決するでしょう。残念ながら、維新、国民は言うに及ばず、立民も権力をとった瞬間に自民党化し、権力維持のために自民党同様の利権構造を作り出し、現状と同じ国民軽視政策が続くでしょう。立民幹部はみな消費税増税派であることからしても明らかで、党としては立民は国民の敵側です。一方、市民政党であるれいわ、イデオロギー政党である共産や社民は、簡単には転ばないでしょうから、かれらが政権に入れば、少なくとも腐敗のスピードは弱められると思います。つまり投票にこれまでいかなかった5割の人の半数でも投票に行けば、簡単に自民党は政権の座から落ちて、長年の政治腐敗が一旦は解消され、国民生活は一挙に向上すると考えられます。次の国政選挙、地方議会の選挙で、われわれ一般国民が生活向上のためにできることは、悪政四党(自公維国)の議員には投票しない、立民に投票するときは候補者をよく吟味することだと思います。それから世襲議員には基本的に投票しないことです。

ついでに言うと、国民が簡単に騙されるのもメディアの報道のレベルが低いこともあります。NHKもほとんど政権の一方的な意見を述べるだけ。政権に都合に悪い事象は、客観的に解釈し、視聴者に解説することがありません。先日も北朝鮮が人工衛星の打ち上げを行いましたが、日本のメディアだけは「ミサイル」と報道し、屁の役にも立たないJアラートを鳴らすような茶番をしています。さすがに「ミサイル」は盛りすぎだと各方面から批判がきて、ようやく「弾道ミサイル技術を使った人工衛星」とこっそり訂正。北朝鮮から「ミサイル」が飛んでこないと日本政府はまずいのでしょうな。で、さっそく「北京ルート」を通じて北朝鮮に抗議したらしいが、実際にやったことは北京の日本大使館に電話して北朝鮮の政府ご意見箱にファックスで「遺憾の意」と送っただけ。これが日本政府の「外交」、そりゃ、わざわざ出向いて行ってカネでもバラまかなければ誰も相手にしてくれません。今朝のNHKでもハマスを「ガザを実行支配するイスラム系テロ組織」と表現していましたが、ハマスはそもそもイスラエルがガザを軍事支配していたときにパレスティナ住民の支援組織を母体としており、れっきとした政党であって、この15年あまり、選挙で正式に選ばれた政権です。イスラエルやアメリカ、そしてアメリカの金魚の糞の日本はハマスが「テロ組織」でないと困るのでしょう。そして、イスラエルの人質のことは大仰に伝えるくせに、イスラエルの刑務所に何年も収容されていたパレスティナの子供のことは伝えない。そして、アメリカのご機嫌うががいばかりのヒラメ政権に人事をにぎられているNHKは自民党のいうことに逆らえない。すっかり骨抜きにされて上(アメリカ)にはヘコヘコ、下(国民)には傲慢横柄な、いわば、河野太郎のような自民党政権、半世紀前に比べても昨今の日本の政治レベルは日本円以上に急落しているように感じます。
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卵と壁から15年

2023-11-21 | Weblog
週末は20年ぶりに会う知り合いの人々と会食。一人は熊本からわざわざ来ていただきました。二昔の月日というのはバカにできないもので、みなさん外見や肩書もずいぶん変わりましたが、一緒に過ごした頃のことは昨日のように思い出します。

さて、月日の経つ速さといえば、「秋が終われば冬が来る ほんとに早いわ」とという歌う曲がヒットしたのは30年前のバブル期で、普通の若者が週末は踊りに行ったり、夏はサイパンのビーチに行ったりするのが日本人のライフスタイルでした。そして、若い女の子はオバさんになり、ディスコなどというものはなくなり、長い落陽の日々を日本は歩くことになりました。

それから15年、高まる自民党政治への国民の不満が政権交代を起こす直前、村上春樹氏がエルサレム賞を受賞したのは2009年のことでした。氏は、この賞を受賞すべきか拒否すべきか逡巡した、とそのスピーチの最初で述べています。もちろん、イスラエルのパレスティナ迫害が念頭にあったわけです。

そのスピーチは卵と壁という比喩を使ってなされました。硬い壁に当たって壊れる卵、壁は(社会や世界を支配している)システム、卵は一人一人の人間。しかし、こうして一般化される喩えの前提には、アメリカの支援で強力な軍隊と核兵器をもつイスラエルという硬い壁のような組織と、そのイスラエルのシオニストに迫害され天井のない監獄と呼ばれるガザやウエストバンクに追いやられ貧困と苦難のうちにこの半世紀を生きてきた壊れやすい卵のようなパレスティナの対比があります。その上で、そのシステムによって苦しんでいるのはパレスティナ人だけではなく、イスラエルのユダヤ人も含めた個々の人間である、と一般化することによって、ストレートなイスラエル批判を避け、その根源にある権力と権力に蹂躙される個人の権利という対立構造を述べていると思います。人間社会のシステムもそもそもは壊れやすい人間が作ったものであります。まずは、弱く壊れやすい側に立ち、彼らを守る姿勢をとることが重要です。そうでなければ、弱いものは壊れ殺されて消えていく。消えてしまってから取り返そうとしても無理です。まずは弱いものを守る、善悪は一旦おいておいて、子供や女性、マイノリティー、社会的弱者を守ることがプライオリティーである、それが「どんなに卵が間違っていて、どんなに壁が正しくとも、卵の側に立つ」という言葉だと思います。これは民主主義の鉄則でもあります。「人民は弱く官吏は強し」、システムの内部の人間が悪意を持てば、個人は容易に潰される。それが日本も含む独裁国が自国の国民に対して行ってきたことです。われわれは、須らく権力を持つものの暴走を批判し、弱い個人の権利を守る側に立たないといけません。

ハマスのテロに対して自衛権を行使するという建前の元に、民族殲滅とガザの土地支配のため、アグレッシブな無差別攻撃による市民の虐殺を続けるイスラエルのシオニスト政権。開戦に誘い込み、先に日本が真珠湾を攻撃したという口実で、日本を空襲し沖縄では地上戦を行って、最後にはヒロシマ、ナガサキに原爆を投下し、市民を虐殺し、戦後、今に至るまで日本を植民地としたアメリカを思い出させます。そのアメリカがウクライナと同じく、イスラエルに巨額の戦費を融通し、自国は無傷のまま外国での戦争に介入して、ガザの大虐殺に加担しています。世界の人々の多くがアメリカとイスラエルの邪悪な目論見を感じ取っており、それが世界規模のパレスティナ連帯と停戦を求めるデモにつながっています。どんな建前があろうと、ガザへの空爆と侵攻によって5,000人の子供を含む一万人以上のガザの住民を虐殺し続け、ハマスのアジトが病院にあると言いがかりをつけては病院を破壊し大勢の患者、避難民や医療関係者、ジャーナリストを殺害し、アジトがないとなれば、でっち上げの証拠で誤魔化そうとするイスラエル軍の行いを正当化はできません。「テロとの戦い」という怪しげなフレーズで「大量破壊兵器」を隠し持っていると言いがかりをつけて、イラク侵攻し、イラクを破壊しフセインを殺し、多大な市民の犠牲者を作ったアメリカのブッシュ政権と相似です。結局、大量破壊兵器は見つからず、残ったのは死体の山。「ハマスはテロリストであり、テロリストは殲滅しなければならない」、イラク戦争時のアメリカと同じ口実です。そして、儲けるのはいつもの軍産。人殺しで金儲けをして経済を回す、というシステム、そのために殺される人々。我々が立つ側は明らかです。

二者の間のコンフリクトの話にもどりましょう。強いものと弱いものがお互いの利益や権利を争って対峙するとき、われわれは、まずは弱いものの側に立たねばならないと述べました。数年前、アメリカで白人警官の行き過ぎた暴力によって黒人市民が殺されるという事件がきっかけで再燃した「Black lives matter」という運動がありました。人間の命は人種にかかわらず等しく尊いはずですが、現実には、白人社会では黒人やその他の有色人種はさまざまな場面で差別に遭遇します。アメリカでは奴隷の時代から人種隔離政策が行われてきました。ローザ パークスがバスの席を立たなかったり、マルコムXやマーチン ルーサー キングが夢を語ったりしたのは、それほど遠い昔のことではありません。白人という人種にたまたま生まれついたというだけで、現代でも人種差別されずに済む特権を持ち、たまたま有色人種に生まれついたというだけで人は差別されるハンデを負っているのです。だから、まずは、同じ命であってもWhite lives ではなくBlack livesが強調されなければなりません。同様に「すべての人の権利」ではなく、LGBTの人の権利、女性の権利や子供の権利が強調されなければなりません。我々は、卵の側にまず立たねばならない、たとえ卵が間違っていたとしても。そして黒人が白人なみの権利を持ち得るようになって初めて、我々は「All lives matter」と言えるようになり、パレスティナの人々がイスラエルのユダヤ人と同じ権利を持ち得るようになって初めてわれわれは正義を語ることができるのではないかと思います。イスラエル-ガザの戦争において、世界市民である我々がまずしないといけないことは、ガザを攻撃するイスラエルを止めさせることであり、ガザを救うことを主張することです。

前置きが長くなりました。エルサレム賞の村上春樹氏のスピーチは全部が公開されていますので、リンクします。15年経っても世界はなかなか進歩しません。

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歴史は繰り返す

2023-11-14 | Weblog
ネットを使う多くの人と同じく、私の主な情報源はTwitterです。流れてくるツイートを暇な時間にチラチラ見ているだけなのですが、圧倒的にTVや新聞のニュースより早く、そして10倍は深い情報が即時に手に入ります。TVや新聞を主な情報源としている人と議論してみれば、Twitterのパワーを実感します。

Twitterはリアルタイムのニュース情報に限りません。昨今の日本の世紀末的状況を見ていて今後どうなるのだろうと思っていた時にたまたま流れてきた動画が興味深かったのでリンクします。

これは”The Fourth Turning"という25年ほど前に書かれた本の解説動画のショート バージョンで、歴史は80年周期でおおまかに4つの20年の時期(春夏秋冬、起承転結のような)を繰り返すという話を実例を挙げて述べています。それによると現在は最後の20年、”Crisis"にあり、あと五年ほどで次の周期に移ることになっています。つまりまもなく、80年の一周期が終わり、再びゼロに帰るということです。動画ではアメリカの歴史を例にとり、今回の周期は、第二次大戦の終わりから始まって、現在は最後の二十年(2008-2028ごろ)の終わりにあたり、これはリーマンショックにはじまるCrisisの時期であると言っています。喩えると、繁茂した森が山火事によって更地になり新しい周期の始まりにつながる時期であり、それにより古い木々は焼けて死にますが、それは新たに成長してくるものを育てる空間を生むために必要なプロセスなのだということです。この八十年は第二次大戦によって前の周期が終わって始まったものですが、さらにその八十年前は、アメリカでは南北戦争が終わって始まりました。さらにその前の周期はアメリカの独立戦争の終わりから始まっています。つまりこのCRISISの期間は過去の周期をみると大きな戦争によって社会が壊されて、新しい体制がはじまっているということになります。

動画をリンクします。

さて、この周期は日本でも大体当てはまるようです。アメリカの独立戦争がおわった頃、日本では、浅間山が噴火し、天明の大飢饉から寛政の改革という社会変革が起こりました。そしてその八十年後には明治維新で江戸幕府が終わりました。そしてその八十年後は、太平洋戦争で日本は敗戦し、まさに焼け野原となって、ゼロからの出発をしました。現在、敗戦の1945年から78年が経ちました。八十年周期で繰り返す歴史が戦争と破壊で終わるとすると、現在、我々が目にしているイスラエルによるガザのGenocideは第二次対戦時のナチスのホロコーストを思い出させます。これは第5次中東戦争になるかも知れず、ひょっとすると米英-イスラエル 対 アラブ-ロシアという代理戦争が第三次世界大戦へ発展していくのかも知れません。

日本では、平和憲法を改憲し、財源もないのに40兆円以上の軍事費を注ぎ込んで、軍国主義を再興しようとするかのような政権が国民に負担を押し付け強権的に自由を縛ろうしています。岸田政権の現代日本を評して「新しい戦前」という言葉が一時期、流行しましたが、昔からの時代の流れを知る人々は、日本は現在、確実にCRISISの時代の最終段階にあって、そして80年前の悪夢が再現することを直観しているのだと思います。

ちょっと、調べてみるとこの八十年で歴史が繰り返すという話は日本でも主張している人がいて、5年前には下のような記事がありました。


日本はこのCRISISの20年の終わりをどう迎えるのでしょう?民主党政権が失望のうちに消え、アベ、スガ、キシダ内閣が日本の社会のモラルと社会システムをどんどん破壊し、経済成長率世界ワースト4位という没落国家にしたのがこの10年余りでした。日本が再生のためにもう一度焼け野原にならねばならないとすると、それは戦後の55年体制、自民党の一党支配が崩壊するということではないでしょうか。自民党政治とはすなわち利権政治でした。民主主義とは程遠く、一部の利益団体と組織票と引き換えに結託して国民を搾取してきた政治でしたが、この構造が破壊されるとすると、かなり劇的な形で自民党(とその類似政党)が政権から復活不可能な形で転落することではないかと想像します。外圧でしか変わらない日本ですから、あるいは、それは二次的な結果に過ぎず、社会構造を崩壊させるほどのインパクトの(例えば南海トラフのような)特大の自然災害なのではないだろうかと思ったりします。福島原発事故が数件、まとめて起きたら今の「なんちゃって政治」ではどうにもならないでしょう。江戸時代に平和ボケした武士階級が黒船の大砲の威力に何の役にも立たなかったように、大災害に際して自民党政権は完全な無能ぶりを晒して、政治の場から退場することになるのかも知れません。いずれにしても自民党が終わるというような状況が起こるとすれば、劇的な災害や戦争などの相当な規模の厄災ではないだろうかと想像されます。恐れとともに多少の期待も感じます。

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Ben Gurion Canal Project

2023-11-07 | Weblog
イスラエルの病的とも思えるガザへの攻撃の一つの理由を説明する興味深いTikTok動画がTwitterで流れてきたので紹介したいと思います。

ほとんど無差別殺人、Genocideといってよいイスラエルによるガザへの攻撃。パレスティナの犠牲者は一万人を超え、その半数近くが子供です。イスラエルはハマスというテロ集団根絶のための「自衛」であると強弁していますが、これが自衛の範囲をはるかに超えているのは世界の人々の目には明らかで、いまや世界中でパレスティナへの連帯を示す大規模なデモが進行中という事態になっています。イスラエルは病院の地下にハマスが潜んでいると主張し、病院を爆撃、救急車にハマスが隠れていると言って、救急車を爆撃し、ハマス戦闘員のみならず、パレスティナ人の病人、医療従事者、一市民に加え、イスラエル人人質や国連職員でさえも殺しまくっています。

この大規模な空爆が始まる前、イスラエルはガザ北部を攻撃すると宣言し、一般市民は与えられた短い時間にガザ南部へ避難するよう通告しました。ハマスの本部が北部の病院地下にあるからというのがその理由のようですが、ガザ北部を破壊するのには、別の理由があったのかもしれない、そう思わせる話がTwitterで流れてきたTikTok動画にありました。

見てもらう方が話しが早いので下にリンクしておきます。

@mystical04046

The Ben Gurion Canal Project, Israeli Canal. We all need to do our own research and stop relying on the lying ass mainstream media. Israel is INHUMANE! Stop The Genocide. Give them back their land. Free Palestine.🇵🇸

♬ original sound - Mystical

今回のイスラエルのガザへの攻撃に際して、この若い女の子は叔父さんに言われて「Ben Gurion Canal Project」と呼ばれるシナイ半島の東側に地中海と紅海を結ぶ新たな運河を建設するという計画について調べたと言っています。この動画の中では、そのプロジェクトの計画の目的とイスラエルのガザ空爆の関係を、歴史的な流れの中で、米英仏、エジプト、イスラエルの思惑を考慮に入れ、事実関係の確認をしながら、非常にうまくまとめて発表しております。巧な話の構成、事実関係を確認しながら主張を展開し、結論の妥当性を納得させるプレゼンテーション、と私はこの動画に感心しました。アメリカ人だと思われますが、あきらかに発表のトレーニングを大学などで受けてきたと思わせられます。このあたりがアメリカのいいところで、学校では学生は知識と技術を身に着けることを真に要求されるのです。それに比べて、ワセダを出ながら、答弁といえば官僚作文を棒読みするしか能がないキシダのお粗末さ。学校で何か勉強してきたのでしょうか?世襲政治家は授業に一切でなくても卒業できるそうですけど。

さて、この話は歴史的事実をもとにイスラエルの意図を推測しているわけですが、現在のイスラエルのガザ破壊の目的の一つとして可能性の高い仮説というレベルで考えておいた方が良いかもしれません。ただし、そもそものパレスティナ問題の発端は、イスラエル建国の前、中東支配を目論んだイギリスのユダヤとアラブ、それからフランスとの密約という3枚舌外交であることを考えると一聴に値する話だと思います。

さて、内容を要約すると、現在おこっているイスラエルのガザ北部の激しい空爆と破壊は、1956年の事件に関連してアメリカなどが密かに計画してきた運河建設計画に関連しているというのです。以下は話の要約と、付け足した私の補足です。

英仏の貿易の利便のために1869年にできたスエズ運河の使用に関して、1888年、コンスタンチノープル合意と呼ばれる自由な使用を約束する協定にヨーロッパ諸国、トルコ、ロシアらが調印した。これは運河の利用に国の制限を設けないという協定であった。ところが1948年、イスラエルが建国し、(イスラエルがパレスティナのアラブ人を追い出して大量のパレスティナ難民が生み出されたことを受け)これに抗議したエジプトはイスラエルのスエズ運河の使用を禁止した。 [補足 これが第一次中東戦争につながり、この戦争後、ガザはエジプトに分割された。1956年、アメリカは、エジプトにアスワンハイダムの建設援助中止を通告、エジプトは報復にスエズ運河を国有化し、英仏の運河利権を潰した。これに不満を抱いた英仏がイスラエルにエジプト侵攻させたのが第二次中東戦争。その後、イスラエルは周辺アラブ諸国への奇襲を仕掛け(第三次中東戦争;六日戦争)、その意趣返しとも言えるエジプトのイスラエルへの攻撃(第四次中東戦争)を経て、ジミー カーター(当時のアメリカ大統領)の仲介で、エジプトとイスラエルの平和協定(キャンプ デイヴィッド協定)が1978年締結された]

しかし、キャンプ デイヴィドの年から遡ること16年前の1963年に、アメリカは520発の核爆弾を使ってイスラエルに紅海と地中海を結ぶ運河を掘るBen Gurion運河計画を機密理に練っていたことが、機密期間(30年)が過ぎてから明らかになっている。[ところで、これもアメリカのいいところで、アメリカは政府の機密事項を後年公開することによって、歴史の検証に資し将来に役立てるというシステムを持っています。このシステムによって、日本では隠されていた事実、例えば佐藤栄作がノーベル賞にもなった非核三原則の裏でこっそり交わしてた核持ち込みのアメリカとの密約も明らかになりました。その血を引いたアベの政権で行われた公文書の改ざん、隠蔽などを思い返せば、アメリカがこうして記録とその公開を重視するシステムを作ったのは、民主主義を護り、政治腐敗を最小限にするのが目的でであることがよくわかります] さて、第一次中東戦争以来、スエズ運河の巨大な利権がエジプトに握られたことに加え、スエズ運河の運搬能力の低さに不満をもったアメリカとイスラエルが、新たなより高性能な運河をシナイ半島の東側に作ろうと考えたのが、Ben Gurion 運河計画ということ。それはパレスティナの岩盤層を掘り進んで地中海に抜ける経路を取るのだが、計画ではガザのすぐ北側にガザを迂回しなければならない。逆に言えば、ガザの北部が人の住まない土地となり、そしてイスラエルのものになれば、この迂回問題は解決する。この運河は貿易や戦艦の運搬などで米英仏イスラエルに大きな利益をもたらすだけでなく、エジプトが管理するスエズ運河に頼る必要がなくなることから、これらの国のアラブ諸国に対する立場を強くするという政治的意味もある。
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報復の理

2023-10-31 | Weblog
イスラエル建国時から連綿と続く八十年近くに及ぶパレスティナ紛争、俯瞰してみれば、シオニストユダヤが、国土の拡大のために、先住のアラブ系パレスティナ人から土地を奪い、数多くのパレスティナ難民を生み出し、行き場を失った200万人以上のパレスティナ人を、外部の交通からほぼ遮断された天井のない牢獄と呼ばれる狭いガザに閉じこめてきた、民族弾圧の歴史であると総括できるかも知れません。

イスラエルが、ガザのハマスをテロリストと呼び、ハマス撲滅という名目で、ガザの子供たちを含む大勢の一般市民の大量殺人を行ったことは、Genocide以外の何物でもなく、パレスティナのアラブ民族を殲滅し、それによってエルサレムを含むヨルダン西岸とシナイ半島までの領域を完全にイスラエル国家のものとする目論見に向けて意図したものだと私の目には映ります。このガザへの攻撃は、9-11のあと、ジョージ ブッシュ(子)が、突然、イラクが大量殺人兵器を持っていると言いがかりをつけて、「テロとの戦い」と称してイラクに侵攻し、20万人の民間人犠牲者を出した事件を思い出させます。今回、この三週間でパレスティナ8000人以上、イスラエル1400人以上の犠牲者が出ており、イスラエルは空爆を激化させ地上侵攻の準備もしているようですから、パレスティナの一般人犠牲者はさらに増加するのではないかと思われます。

国連では、従来からのイスラエル支持のアメリカをはじめとする西側が、人道的見地から即時停戦を求めるロシア、ブラジルなどの提案を拒否してきましたが、流石に大多数の国はイスラエルのガザへの攻撃をイスラエルの自衛のためのハマスとの「テロ」との戦いであると強弁するのは無理があり、ジェノサイドであると見做しているようで、各国でガザ空爆に抗議し、パレスティナに連帯する大規模なデモの高まりを受けて、先日、121カ国の賛成を得、国連はようやく即時停戦を決議。イスラエルの後ろ盾、アメリカは決議に反対、アメリカの金魚の糞、増税クソメガネ政権は、アメリカの顔色を窺って棄権。忖度は日本のお家芸とはいえ、ヒロシマ、ナガサキの無差別大虐殺を被った国が、ガザ空爆による多数のパレスティナ市民の犠牲を止めるための停戦決議に自ら主張もできないとは情けない。

さて、前回、前々回とこのイスラエルのシオニストユダヤの心理を、旧約聖書の中から私なりに解釈しようとしてみました。一方でイスラムのアラブ パレスティナ側の抵抗運動を支えてきたものは何かということも考えてみたいと思いました。シオニストユダヤによって土地を奪われ、迫害されてきた人々が、イスラエルにどういう感情を抱いているか想像するのは簡単です。しかし、力で押さえつけられて、真正面から戦争しては勝ち目がない相手に対して、どう対処していくかという困難な決断にパレスティナ人は何を拠り所にしてきたのでしょう。パレスティナ解放機構内部にも強硬派と穏健派がおり、そのどちらにもその根底にはやはり信仰があったのではないかと私は想像します。

旧約聖書から読み取れるユダヤ教の底にあるのは、選民思想と強者の理論であり、目には目を、歯には歯をもって償わせるという復讐の連鎖を肯定するかのような考え方ではないかと私は感じました。それは、後で述べるように新約聖書でのキリスト教の考えと一致しないように思います。

アラブ系パレスティナ人の多くはイスラム教徒だと思われます。聖書の時代から随分経った紀元7世紀、人々が聖書の神の言葉を軽んじるようになったとして、改めて神が預言者マホメットを通じて伝えられたのがコラーンにある言葉ということになっています。故に、ここでのイスラムの神、アッラーはユダヤの神と同一であると考えられます。新約聖書では人の子、イエス キリストの言葉を伝えますが、キリスト教ではイエスは精霊とともに神の現れであるとする三位一体説によって、イエスの言葉はそのまま神の言葉となります。一方、イスラム教においては、イエス キリストはイーサーと呼ばれ、イエスはあくまで預言者にすぎず、キリスト教のような三位一体の立場はとりません。イスラム教ではイエスはあくまでモーゼと同じ人間であり、原罪を背負って死ぬこともありませんでした。そこから想像するに、イスラム教とは、ユダヤ同様、唯一の絶体神であるアッラー、すなわちヤハウェに帰依する信仰であり、ゆえに、これら3宗教は同根ではありますが、イスラム教はキリスト教よりは、よりユダヤ教に近いように感じられます。

そのイスラム教では、罪に対する罰には三つの与え方があり、うち、同害報復、すなわち「目には目を」的報復が認められております。またイスラムの罰則は社会の安寧を乱す犯罪に対しては特に厳しく定められているようです。ということは、イスラムの民が彼らの民族を守ろうとするためにイスラエルに抵抗し、イスラエルにやられたことをやり返すのは宗教的にも正しいことであると考えているのかもしれません。また、イスラムでは異教徒との戦い、即ち聖戦(ジハード)は義務であり、ジハードで死ぬと天国に行くと信じられているそうです。今回のハマスのイスラエルへの奇襲は武力で圧倒的に劣るガザ パレスティナの宗教的義務に基づくジハードであるとハマス支持のパレスティナ人が考えているとすると彼らの自滅覚悟のこの攻撃も納得できるように思います。そして、選民思想をもち、パレスティナは神が約束した土地であり、そこに住む原住民を殲滅するのも神の意図だとシオニスト ユダヤが考えているとすると、これだけの国際非難を浴びながらもガザ侵攻を止めないイスラエルの行動も理解できるような気がします。

その二つの宗教的民族が、預言者は違えど同じ神を信じており、その神から下された言葉によってお互いに戦い続けているのがイスラエル-パレスティナ紛争であると言えるのかも知れません。とすると、これがこの紛争の救いのないところではないかと私は思います。 

さて、イエス キリストを三位一体として神の現れとするキリスト教では、上の「目には目を」の精神とは、多少異なる言葉が見られます。最も有名なのは、新約聖書の「ローマ人への手紙」の中の「汝、復讐するなかれ、、、復讐するは我にあり」という言葉でしょう。「害をなす者に復讐してはならない、復讐は神の仕事である」という教えは「目には目を」という旧約での神の言葉と対照的なように思います。イスラム教のコラーンでは、上に述べたように同害報復が述べられていますが、一方で、次のような言葉も見られます。 

、、、傷害には(同様の)報復を、、、しかしその報復を控えて許すならば、それは自分の罪の償いとなる。(5:45)

 つまり、同害報復を認めると同時に、報復を控えることの徳も述べています。これは、あるいは、新約聖書の時代から数百年のあと、新たな預言者によって生まれたイスラム教という宗教がユダヤ教とキリスト教という宗教の両方を踏まえた上で成立した宗教であるからではないか、と考えられます。 とすると、パレスティナ人の中にも同害報復を求めるハマスのような勢力と、報復を良しとせず害をなすものを赦そうとする勢力もあるのだろうと想像します。

しかるに、想像するに、ユダヤでは、害を為すものを許し、右の頬を打たれて左を差しだすような行為は、教えに合わないものとされているのではないでしょうか。それゆえにイスラエルはハマスの攻撃に対して徹底的に報復しようとしているのではないのだろうかとも思います。たとえ、それによって、劣悪なガザという牢獄に閉じ込められ武器ももたない子供や市民の命が、何千、何万と失われようとも。
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民数記にみるユダヤの心 (2)

2023-10-24 | Weblog
イスラエルのシオニスト政権が建国以来やってきたパレスティナ人迫害、そして今回やろうとしているガザのパレスティナ人殲滅作戦とでもいうような軍事行動を支えている心理の根底に、ユダヤの信仰が中心的役割を果たしているのは間違いないはずです。シオニズムは古代のイスラエルの歴史の上に立拠し、それはユダヤ教によって正当化されていると思われます。

しばらく前からぼちぼちやりだした聖書通読プロジェクトは牛の歩みですが、現在、旧約聖書の4章目の「民数記」を一応、読み終えました。旧約聖書の最初の5章、モーゼ五書、はユダヤ教の骨子をなします。民数記では、神がエリコに近いヨルダン川のほとりのモアブ平野で、モーゼを通じてイスラエルの人に命じられた掟と命令などが書かれており、日本語二段で60ページほどあります。これらの細かく煩雑な掟や命令を、普通の人間がまちがいなく実行するのは大変困難ではないかと思われ、ほとんど絶対権力を持つ神の人間に対する「弱いものいじめ」ではないかさえ感じるほどです。

このあたりから、聖書にある「神」とはどういった存在なのかということを私なりに考え始めました。随分以前にも「ヨブ記」という旧約聖書の中で最も解釈が難しいと言われる章について述べた覚えがありますが、これは、サタンと賭けをした神が、信仰厚いヨブを試すために筆舌に尽くしがたい理不尽な苦難をヨブに与えるという話です。最初に読んだ時に驚いたのは、そもそも「神」たるものが「賭け」をしたり、信仰厚い人間を「試し」たり、そのために実際に苦しめたりするものなのか、ということでしたが、今になって思えば、「全知全能」の創造主たる神というものに人間の立場から求めるイメージを私が勝手に作り上げていたからのようです。

そこで、イスラエルの神とはそもそも何なのか、私になりに考えた解釈は、前々回にも述べた通り、その神とは擬人化された「自然」のことではないかということです。気をつけていないと、弱い人間は疫病、天変地異、さまざまな自然現象に巻き込まれて簡単に死んでしまいます。そうでなくてもいずれは老いて弱って死ぬ運命です。そして、自然界は、基本的に弱肉強食、適者生存の法則によって支配されているようです。神は、人間を弱い存在、自然(神)によってその生殺与奪を握られ、困難と苦しみの中で生きていく存在として創造しました。そこに「神の愛」があるかどうかは別次元の解釈のレベルの話です。そして、モーゼはそんな弱い人間が生き延びて繁栄するためのコツを数々の命令や掟という形でイスラエルの民に語ったのだと私は解釈しました。ユダヤの神は単に母性的な慈愛に満ちた存在ではなく、聖書にもあるように「ねたむ神」であり、契約にしたがって、いつでも人間を意のままに生かし殺すことができる畏怖すべき存在であります。また、同じく前回述べたように、厳しい環境の中で、強いものが弱いものを犠牲にして生き延びることは、神の意図したことであり、それが自然の(神の)法則であるとユダヤ人は考えているのではないでしょうか。私のこの勝手な解釈が正しいとすると、ユダヤ人に共通してみられる実利主義や計算高さや民族主義的思考が腑に落ちるような気がします。

「民数記」は、タイトルが示す通り、イスラエル12部族とその構成人数などの情報が書かれており、当時のイスラエルの民の規模が窺い知れます。ここでの物語は、モーゼが奴隷となっていたイスラエル人を率いてエジプトを脱出後、シナイ山で十戒を授けられる出エジプト記でのエピソードの後、彼らが旅を続けてヨルダン川に至るまでの話で、36節からなります。聖書に書かれている数字から推測すると、当時、モーゼが率いていたイスラエル12部族の全人口は200万人程度ではないかと見積もられます。聖書には細かい具体的な数字が書かれていますが、全人口は推計されたものにすぎません。というのは、神はモーゼに次にように命じたからです。

民数記1-1.1-3
「あなた方は、イスラエルの人々の全会衆を、その氏族により、その父祖の家によって調査し、そのすべての男子の名の数を一人一人数えて、その総数を得なさい。イスラエルのうちて、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者をあなたとアロンはその部隊にしたがって数えねばならない、、、、」

そういうわけで、聖書には「二十歳以上で戦争にでることのできる男子」の数だけが記載されているのです。つまり戦争に出ない老人、子供、女性の数は無視されています。

こうした記載から、旧約聖書の書かれた時代は、戦争に出ることができる若者の数を把握し、「戦争」に勝ち、攻められては負けないよう準備しておくことが非常に重要であったことが推測されます。敵と戦い、自分と自分の種族を守り、相手を倒して利用すること、それが、この時代の種族が生き延びるための日々の営みであり、第一の優先事項であったと考えられます。当時の砂漠の厳しい自然の中で生き残っていくために資源を手に入れるには、持っている者から奪うというのは重要な戦略の一つであったに違いないと想像するのです。また逆に力がないと奪われ、殺されるのが当然の世界であったでしょう。

民数記につづく申命記には、神の言葉として次のようにあります。

申命記1.1-.6-8
「われわれの神、主はホレブにおいて、われわれに言われた『あなたがたはすでに久しく、この山にとどまっていたが、身をめぐらして道に進み、アモリ人の山地に行き、その近隣のすべてのところ、アラバ、山地、低地、ネゲブ、海辺、カナン人の地、またはレバノンに行き、大川ユフラテにまで行きなさい。見よ、私はこの地をあなた方の前に置いた。この地にはいって、それを自分のものとしなさい。これは主があなた方の先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓って、彼らとその後の子孫に与えるといわれたところである。』、、、

これが、シオニストがパレスティナの土地を略奪し入植を進めることの拠り所になっていると思われます。そして聖書には、その後、「神」の庇護の下、イスラエルの部族が、先住民を、女、子供を含めて殲滅し、その財産と土地を収奪していったかが詳述されています。

モーゼは神に代わって言います。

民数記7.2-3
(土地の略奪に際して) すなわちあなたの神、主が彼らをあなたに渡して、これを撃たせられるときは、あなたは彼らを全く滅ぼさなければならない。彼らと何の契約もしてはならない。彼らに何のあわれみも示してはならない。またかれらと婚姻をしてはならない。かれの娘をあなたのむすこにめとってはならない、、、

民数記7.6
、、、あなたがたはこのように彼らに行わなければならない。すなわち彼らの祭壇をこぼち、その石の柱を撃ち砕き、そのアシラ像を切り倒し、その刻んだ像を火で焼かねばならない。あなたはあなたの神、主の聖なる民である。あなたの神、主は地のおもてのすべての民のうちからあなたを選んで、自分の宝の民とされた。

古代イスラエルの民が生きた世界がどのようなものであったかが聖書から読み取られます。弱肉強食の現実を肯定し、強い選民思想と差別意識によって、他民族を殲滅し、砂漠の乏しい資源を奪ってわが物とすることを是とする教義によって、生き残ってきた民族がかつてのユダヤであった、と極論するのも可能でしょう。(これは、ユダヤに限りませんが)

そして、このモーゼ五書をユダヤの中心教義として成り立っている宗教国家で、極右シオニスト政権の支配下にあるのが、現在のイスラエルであると考えれば、イスラエルがパレスティナとの共存を頑なに受け入れず、ハマスを人の形をした獣とよび、パレスティナ人を殲滅しようするかのような行動を裏付けているのは、一種の狂信ではないのかと思うのです。イスラエルの民は神によって選ばれ、神が彼らに与えたパレスティナの土地に住む他の人々はイスラエルの民により滅ぼされる存在である、そのように神が創造したと彼らは心の底では信じているのかもしれません。
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民数記にみるユダヤの心 (1)

2023-10-17 | Weblog
イスラエルが宣戦布告をして以来の長い一週間でした。ちょうど山上被告のアベ殺害によって、統一教会の被害や政治腐敗の数々の問題が再び暴きだされたように、ハマスのイスラエルの攻撃によって長年のパレスティナ問題に再び世界が関心を向けることになりました。最終的にどのようにこれを解決していけば良いのかはわからなくても、多くのパレスティナ人が、命と財産と土地を奪われ、難民となり、そしてガザや一部の地域に閉じ込められて自由と尊厳を奪われ続けてきたという現状は改められなければならない、という思いは再び多くの人々によって共有されたのではないでしょうか。

人間が人間の都合で動物を利用し、殺して食糧にするように、帝国主義時代のヨーロッパ人はアフリカやアジアに侵攻し、力で土地の人々を奴隷にし、虐殺し土地を奪い富を収奪しました。日本にやってきたアメリカは大砲をみせて開国を迫り、日米通商条約という不平等な取り決めを押し付けました。つい最近まで、強いものが弱いものを自由にするのは強いものに許された権利であると、ヨーロッパ人は考えていました。ヨーロッパ人に限らず、弱肉強食、適者生存は世の常でした。日本も同じで、国内では戦国時代もそうでしたし、明治以後は西欧流の帝国主義に傾倒し、アジア諸国に侵攻し、「日本人は最も凶暴で好戦的な民族」と欧米諸国から警戒されるようになりました。

さて、土地を持たず権利を制限された弱者であったユダヤ人が、自らの国土を持ち価値観を共有する者同士からなるコミュニティーを確立したいと思うのは当然の欲求だと思います。そして、シオニズムに燃えるユダヤ人が、国家を創るとなればエルサレムを含むパレスティナの地以外にないと考えるのはもっともです。しかし、そこにはすでにアラブ-イスラム系の住民が住んでいました。シオニストにとれば、ユダヤでない先住民は邪魔です。そして、イスラエルの建国と発展は下に述べるように悪名高い虐殺から始まり、立場の弱いパレスティナのアラブ系住人を迫害し、天井のない牢獄と呼ばれるガザに彼らの多くを封じ込め、パレスティナの土地を収奪し入植者を増やすことによって進められてきました。これが80年近くにわたっての建国前から今日に至るイスラエルの歴史であると言えなくもありません。

改めていうまでもなく、ユダヤ人=イスラエル人=シオニスト=極右イスラエル軍ではなく、モスリム=アラブ人=パレスティナ人=ハマスでもありません。大多数のユダヤ人は平和な生活を望む普通の人々でしょう。一方で、パレスティナ人の恨みは深いでしょうが、そういう彼らも同じく平和で殺し合いのない世界を望んでいるのは同じだと思います。しかし、ユダヤ人の一部にパレスティナ人を迫害し土地を奪い虐殺するのも彼らの目的を達成する上でやむを得ないと考える人々がいて、パレスティナの中にも彼らの迫害の歴史を逆転させるには、一般イスラエル入植者を殺し、人質にしてでも彼らの怒りを表明する必要があると考える人々がおり、そうした一部の人々の間の、いわば「エゴ」の張り合いが、今回の多大な一般人の犠牲に繋がったのだと私は解釈しております。普通の生活を奪われた大多数のイスラエル人もパレスティナ人も犠牲者であります。しかし、今回の戦争に至った経緯には歴史的に積み重なった原因というものがあります。

イスラエル建国直前、シオニスト右派軍事組織は、エルサレム近郊のパレスティナ アラブ住民が住むヤシン村において、子供、妊婦、女性を含む少なくとも100名以上の村民を、暴行の上、虐殺しました(デイル・ヤシーン事件  建国初期イスラエルにおけるデイル・ヤーシーン事件の語り)。直後、イスラエルは1948年建国を宣言。このヤシン村のユダヤ人による虐殺が周辺のパレスティナ人を恐怖させ、75万人のパレスティナ難民を生み出すことになりました。このヤシン村虐殺は、シオニストがエルサレムを将来的に占拠するのに、都合が良いという理由で行われたようです。比較的ユダヤ人入植者に友好的であったこの村の村民を、手前勝手な理由で虐殺したのが建国前イスラエル軍の一部の組織でした。

今回のハマスによるイスラエル入植者への攻撃は「アクサーの大洪水」というコードネームで呼ばれています。かつてユダヤ人がエルサレムにあるイスラムのモスクであるアクサーに踏み込んで蹂躙した事件に拠っているそうです。つまり、二年間を費やして計画した大規模な「自爆テロ」とでもいえるような今回のハマスの攻撃は、パレスティナ村民を虐殺したユダヤのシオニスト同様、宗教的動機も大きかったのではないかと想像するのです。その点で、言葉は悪いですが、今回のハマスの攻撃を、75年前に起こった「ヤシン村虐殺」の意趣返しであった、力で及ばずガザという天井のない牢獄に閉じ込められたパレスティナ人の「恨み」のこもった最後の抵抗であったと解釈することもできるのではないかと思っておるわけです。

今回、イスラエルがハマス支配下のガザに宣戦を布告し、イスラエル国防省長官が、ハマスを「人間の姿をした獣」だ、と発言し、ガザ全体を兵糧攻めすると明言しました。私は、パレスティナ人から土地を奪い、難民化した240万人のパレスティナ人を狭いガザに閉じ込めて困窮させた上に兵糧攻めによって、民族殲滅を目論む方がよっぽど、人間の皮を被った悪魔であろうと思ったわけですが、この言葉を聞いて、これはユダヤ人シオニストの本音だと直感しました。つまり、彼らシオニストはパレスティナ人を最初から人間ではなく家畜程度にしか思っていないのではないか、それが「人間の姿をした獣」という表現となって、自然に口に出たのではないかと思ったのでした。このことは旧約聖書の神の言葉からも窺い知れると思うのですが、それはまた次回にこの続きで触れたいと思います。
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イスラエルの理屈

2023-10-10 | Weblog
ハマスがイスラエルを攻撃したことで、極右ネタニエフのイスラエルも報復。正式に対パレスティナ戦争への突入が宣言されたようです。イスラエルはガザのエジプトサイドを閉鎖、物理的攻撃に加えてガザを兵糧攻めにしようとしているようです。ツイッターでは、主にイスラエルサイドの逸話的な投稿を多く目にします。イスラエルの民間人がハマスの急襲でガザに連れ去られ捕虜にされたとか殺されたとかいう話。一方でアラブ世界以外でもイスラエル建国を後押しした英米で、ユダヤがドイツやその他のヨーロッパ地域で受けたと同じ仕打ちを、今度はイスラエルがパレスティナに対して続けてきた結果だとパレスティナに味方する人々のデモがあったことも流れてきています。

この根が深いパレスティナ問題、簡単に総括できる人は少ないと思いますが、イスラエル建国以来、イスラエルが四度の中東戦争を経て先住民であったパレスティナ人の土地を収奪し、アグレッシブに領土を拡大し入植者を増やしてきており、国連も再再度にわたってイスラエルのこの行動を非難してきたという経緯を鑑みると、判官贔屓の日本人ならずとも、現在のようにガザやその他の居住区に追いやられて、苦難の日々を送っているパレスティナに同情してしまうのが人情というものでしょうか。ちょうど、アメリカ大陸に移住してきたヨーロッパ人がアメリカ原住民を保護区に追いやって、土地を我がものにしたような状況に似ているようでもあります。

今回、ハマスが警告なしにロケット弾をイスラエルに打ち込み、民間人を殺傷、捕縛したことをイスラエルは強く批判しているわけですが、まさにそれと類似のことをパレスティナ人に対して行って、勝手に土地を奪い取り、無理やり入植を進め領土を拡大してきたという過去がイスラエルにはありますから、ハマスにとってみれば、たとえ一般人であっても本来「自分たち」の土地に勝手に入って住み着いたイスラエル人は、等しく自分たちを害する敵なのでしょう。

しかしながら、イスラエルにはイスラエルの言い分があります。もともとイスラエル人は神がモーゼに約束した聖なる土地であるパレスティナに古代から住んでいたが、2千年前にローマ帝国に支配されてパレスティナから出て行かざるを得なかったという古い歴史があります。とすると、イスラエル人はパレスティナはもともと神によって示された自分たちの土地であった、故にそこに自分たちが国を作るのは正当であると強弁するのも可能でしょう。しかし、そんな言い分が通るなら、ユダヤ人が住み着く前はその土地は誰のものでもなかったのだから、それは屁理屈であると反論もできます。理屈はどうあれ、イスラエルはパレスティナの土地を力づくでパレスティナ人から奪ってきたというのは事実です。とはいえ、ユダヤがイスラエルをパレスティナに建国したのはその宗教に基づいているわけですから簡単にはいきません。信仰と洗脳は紙一重で、彼らはパレスティナは「イスラエルの神が約束した土地」であると信じているわけですから。オウムの信者が一般人を無差別に「ポア」するのも、統一教会の信者が全財産を寄付するのも、信者はそれが正しいと信じていたからでしょうし。

最近、旧約聖書を少しずつ読んでいますが、ユダヤ教のトーラーは旧約聖書の最初の5章、モーゼ五書に基づいております。モーゼ五書のうちの4つをとりあえず読んで思ったのは、イスラエルの「神」とは「砂漠の自然」のことではないかということです。母なる自然は人間を含む全ての生き物を作り出し、養っていますが、人間ににとってみれば、「自然」とは、丸裸で一人で放り出されたら、数日と生きていけないような厳しいもので、恐れの対象に他なりません。モーゼ五書はその厳しい弱肉強食の「自然の法則」の中で、人間が生き延びる知恵について書かれているのではないかと私は解釈しております。自然の中では、自分より強いものから身を守り、自分より弱いものを食糧として犠牲にしないと生きていけず、物質的にみれば、それは恐怖に満ちた殺し殺される世界です。ユダヤの神とは擬人化された厳しい自然のことであり、その厳しい現実の世界を受け入れた上で、イスラエル人が生き残り繁栄を達成することがこの宗教における第一目的なのだと私は感じました。つまり、彼らにとって、自分の身を守り、自分と仲間のユダヤ人が生き残って利益を得るためには、邪魔なものを排除し、殺し、犠牲にしていくのは、正しいこと(少なくとも十分に正当化できる事柄)であると考えているのではないかと想像するのです。彼らにとってパレスティナの土地はそもそもが神がイスラエルの民に約束した土地であり、よって領土を彼らの自身の繁栄のために拡大するのは神の意に叶う正しいことであり、そのためにパレスティナ人が土地を失い、仕事を失い、家族を失っても、それは我々が他の動物を殺してその肉を食べるのと同じように、止むを得ない犠牲であると思っていると考えているのではないでしょうか。パレスティナ人にとってもエルサレムは聖地であり彼らが長年住んできた土地は彼らのものだと思っているでしょう。

ローマ帝国に支配されて以来、ヨーロッパに散り散りになって、差別され迫害されてきたユダヤ人が、同じことをパレスティナ人に対して行ってきたという矛盾をユダヤ人はトーラーによって正当化してきたのだと思います。これを中東のアラブ世界がジェノサイドと捉えれば、アラブ世界とイスラエルとその背後にいる米英との対立はさらに深まり、武力で劣るアラブはテロによる抗議を激化させることになりかねないのではと想像したりします。

今後、イスラエルとパレスティナがどうなっていくのか、私には予測はつきませんが、圧倒的武力差があり、ガザが完全制圧されるのは時間の問題だろうとは感じます。あるいは、一日でキエフは制圧されるだろうとの予測と裏腹に泥沼化したロシアーウクライナ戦争のような帰趨をとる可能性もあります。アラブ世界がどう反応するか、米英がこれまで通りイスラエルを支援するのか、そのあたりも大いに影響するでしょう。どんな結果になっても、「恨み」と「憎しみ」は増大し、長く残るでしょう。人間の感情の中でなかなか消えることがないのがこれらですし。

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