百醜千拙草

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アジア パージ

2019-02-08 | Weblog
イギリス(GB, UK)で研究室を持っている同窓の先輩と久しぶりに会って食事をする機会がありました。
移民問題で揺れるイギリス、EUからの離脱もそもそも移民の増加が原因かと思います。所属する大学が新自由主義者の学長を呼んできて、リストラを敢行したそうです。しかし、近年のナショナリズムというか反移民感情の高まりゆえなのか、ターゲットになったのは、少数に過ぎない外国人教官、特にアジア人とのこと。アジア人教官の首を切るとは大っぴらには言えないので、ターゲットとなったアジア人研究者のプロファイルを調べて、その研究分野を大学のプログラムから削るという口実で、狙い撃ちしてのアジア人パージが堂々と行われたとのことで、現在、裁判準備中という話。
なんとも壮絶な話で、何と言ってい良いのか、言葉もありませんでした。

やはり帝国主義の時代から連綿と続く白人の他人種への差別、偏見、優越思想というのは根強いです。人間ですから、誰もが自分が他人よりも優れていると思いたいのです。しかるに科学分野で、実際に現場を回しているのはアジア人です。彼らがいなければ近代の科学研究というものは成り立ちません。しかし、彼ら白人にとっては、アジア人は優秀な奴隷であるべきであり、研究室を主稈して大学での白人教官の優位を脅かすような存在となるのは許されない、そう思っているのでしょう。

悲しいことですが、人種ぐらいしか優越性の拠り所にするものがない白人の根強い他人種への反感というものは、厄介です。感情の問題ですから。そういう連中は、そもそも勝ち負けでしか物事を判断できないのに、能力ではアジア人にかなわないわけです。外国人、それも人種的に劣っているはずの日本人や中国人が、自分の国にやってきて、同胞の白人教官を押しのけて、大学でデカい顔をするのは我慢ができない、ということでしょう。でも現実は、優秀なアジア人研究者が、デカい顔をして、ヨーロッパの田舎の大学のパワーゲームにうつつを抜かすようなことは稀でしょう。彼らは人種差別を十分に感じているし、多くの場合、単に研究を追求したいだけで、そのために彼らのとってのベストの場所を探して、その大学にたどり着いたに過ぎないのだと思います。

他人は変えらないし、そんな偏狭な人種主義者が陰湿ないじめをするような場所は学問をするべきところではない、学問の精神とヒューマニティーを踏みにじる金儲け主義で人種差別主義の大学には、優秀な学生も来ないし、すぐ衰退することが目に見えているから、移動する方が良いと思う、とは言ったものの、そう簡単に良い移動先が見つかるようなご時世でもないわけですし。

貧すりゃ鈍する、余裕がなくなれば偏狭になる、それがナショナリズムの正体で、自分の優位性や生存が脅かされていると感じている人間に、もっと余裕を持ちましょう、と言ったところで、どうしようもないです。彼らにとってはアジア人教官は脅威であり、アジア人がいなくなれば素晴らしい世界が実現するとでも思っているでしょうから。そもそもそれは勘違いなので、アジア人がいなくなれば、また別の人々をターゲットにすることになるだけでしょうが。

ま、われわれできることはこういう現実に際しても、心の余裕を忘れないこと、「許せないを許してみる」気持ちではないかと思います。
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