終身雇用、年功序列という制度が崩壊し、年金制度が破綻しつつあり、貧困化する中で、副業や資産運用を積極的に行うのが当たり前となってきました。Gig economyという言葉が使われ出してしばらく経ちますけど、ネットの発達で個人同士で仕事をやりとりするような形で働く人が増え、会社や組織を介さずに収入を得る人も増えました。ネットでのビジネスの場合、場所は関係ないですし、コロナでリモートワークが増えたこともあり、さらにこの傾向は加速しそうです。
となると、多くの人が個人事業主となり個人が自分自身の一生の経済問題に責任を持つ時代になります。そんな中でFIRE(Financial independence, retire early)と呼ばれるような生き方を目指す人が増えました。(この手のライフスタイルにラベルを貼るやり方は、どうかと思うのですけど、20-30年ほど前に流行ったハイ コスト ライフ スタイル、DINKS (double income, no kids)を思い出すと、世の中の移り変わりの激しさを感じますね)
消費は美徳、経済を回すために地球資源はどんどん利用すればよい、というような高回転型ライフスタイルを支持する人は現在では激減していると思います。地球温暖化や石油資源の枯渇、激しくなる環境汚染、人口爆発にパンデミック、一つしかない地球でこれからも人類が生きていこうとするならば、人類が生きていける環境をできる限り維持するよう、エネルギーやものの消費、それにともなう廃棄物の産生を抑え、再生可能な低回転型ライフスタイルを選択すべきと考えるのは当然だと思います。
FIREは、若いうちから貯蓄と資産形成に励んで、引退資金を早くに貯め、資産の運用益で生活をまかなうことで、早期引退して自由に過ごす時間を増やすというアイデアのようです。ということは、金やものよりも時間、瞬発性より持続性を重視するラ低消費、低回転型のライフスタイルといえるでしょう。若い時から貯蓄に励めば、当然、慎ましやかな生活になりますし、引退後の運用益で生活費を賄うのであれば、やはり慎ましく生活しないといけません。その貯めた金は基本的に使うためではなく、心の安心と時間の確保のためにとっておくものという考えだと思います。逆に言えば、その金で安心を買っているとも言えるわけで、その代償が慎ましい生活ということだと思います。
そこで中心となるルールが4%ルールと呼ばれるものです。つまり、生活費を運用益でまかなうために年間に資産の4%までなら比較的安全に引き出せるということで、これはアメリカなどでの年間投資利益が5-6%と見積もって出された数字です。
とすると、資産が一億円あれば、年間の運用利益が500-600万円と見積もられ、4%の400万円ぐらいを毎年引き出して使っても、資産を一定水準で保て、インフレにも対応できるという計算です。ということでそこそこの資産形成をできるだけ早く達成することが鍵になってきます。アメリカなどでは401kやIRAなどの税金優遇のある貯蓄制度を目一杯利用して若いうちから貯蓄する癖をつければ50-60歳ぐらいまでに一億円規模の貯蓄は可能だと思います。一億円もなくても運用できる資産がその半分ぐらいあれば、半年働いてあとの半年寝て暮らすという生活も可能ではないかと思います。ま、私もそういう生活をしたいなあと考えているのですけど。
ただ、投資の運用益に依存するこのやり方は、皆がこの方式で慎ましく生きるようになると、当然、経済規模は縮小し、投資運用益も減っていくでしょうから、あるところで成り立たなくなるでしょう。そのときには、また共産主義思想が復活するかもしれません。