前回、アグレッシブな貯蓄で早期に資産形成して投資運用益で生活を賄うFIREの話をちょっとしました。資産は基本的に使わない前提で生活設計するのですが、その金を使わざるを得なくなる時期がくるというのを言い忘れました。4%ルールで資産の4%を年間の生活費として使えば、資産は減らないのですが、それでは賄えない時期が来ます。
アメリカの投資会社のシミュレーションでは、その時期のコストを年間一千万円以上、その期間は平均6年と見積もっているようです。つまり、死亡前の6年間にかかる介護、医療費用のことです。つまり、アメリカで人並みに死ぬためには、それまでに必要な生活費用に加えて六千万円以上が必要ということになります。資産の4%に加えて67歳からは公的年金の支給を受けることができますが、年間一千万円には多分とどきませんし、また、運悪く人生最後の高コスト期間が6年以上続く場合を想定すると、一億円の資産で慎ましく過ごしたとしてもまだ不安があります。
日本においては、社会保障の点ではアメリカよりはいまのところ状況はマシでしょうけど、今後経済的に低迷していって、生産人口が減少し超高齢化社会が到来することを考えると、政府は例によって「自己責任」論を振りかざして、社会福祉を切り捨てていき、そのうちにアメリカ並みの高額介護医療費用を個人負担せざるをえなくなるようになる可能性もあると思います。そもそも「自己責任」とか「自助共助」という言葉を平気で口にして恥じない政府というのはタダの税金泥棒です。税金 = 年貢だとでも思っているのでしょうな。
大企業は海外でビジネスをするようになっていますから、国内最大の産業が医療と介護となる日も近いかも知れません。医療介護サービス業で内需経済が回っていくならそれはそれでいいのではないかと思いますけど、介護や医療は社会保障の一環でもあるわけですから、長期的計画に基づいて国や公的機関がコントロールしていく必要があるでしょう。残念ながら、この国の政治や役所は長期的視野にたって全体の利益を考えるということが得意ではないのに加え、やっているふりだけはするという困った性質を持っているわけですが。