百醜千拙草

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停戦の意味

2025-03-18 | Weblog
停戦というのは戦闘を一時的に中断することであります。スポーツで言えば、前半が終了して後半に入るまでの休憩時間です。だから、停戦という合意には、戦闘の再開が前提とされています。前半戦と後半戦の間の休憩時間に、スポーツ選手やチームは、後半戦に向けて体力を回復し、エネルギーを補給し、戦略を考えるわけですが、戦争においても停戦中にやることは同じでしょう。

ウクライナの戦争においては、現在、ロシアが圧倒的優位に立っています。当初は、トランプが一方的にウクライナへの支援を止めて戦争を終わらせる予定でしたが、ゼレンスキーがウクライナの鉱物資源を差し出すの引き換えに、トランプが30日の停戦を交渉するという話になっており、このトランプの予測不能の朝令暮改に皆が振り回されております。まもなく行われるプーチンとの電話会談はどういう形になるのでしょう。停戦がこの電話一本でまとまるはずはないですが、プーチンにとってトランプは対ロ政策に関しては最悪のアメリカ政治家の中での一番マシな相手でしょうから、この一回で対話を打ち切ることはないでしょうし、それはトランプにとっても同じです。プーチンとの「取引」に失敗する、というのはトランプにとっては大きな政治的汚点となります。

いずれにしてもゼレンスキーの政治生命は時間の問題なのに、西ヨーロッパの悪党どもはゼレンスキーに戦い続けさせようと必死です。つまり、ゼレンスキーは自らの保身のためにまだ戦争を終結させるつもりはなく、しかもそれを煽っている英仏はウクライナに派兵するとまで言っているわけです。それにしても、ヨーロッパはどうしてここまでバカになったのでしょうかね。ま、というわけで、今のところ、ウクライナもヨーロッパ(英仏)も、仮に停戦となったところで、そこでロシアの要求を受け入れて戦争を終結させるつもりはなさそうです。

平和協定が前提とされていない状態での戦闘凍結で続くことは、ウクライナ東部州の不安定な状態が延々と続くということです。これまでもウクライナ政府からの差別や暴力に苦しみ、2014年以来、ウクライナのネオナチ政府によって1万4千人の女性や子供を含む市民が殺害されたこの地域のロシア系住民に先の見えない苦難が続くということです。ロシアの軍事作戦の理由の一つが、迫害を受けてきたウクライナ東部州のウクライナからの独立支援とその住民の保護だったはずです。恒久的平和につなつながらず、戦闘再開が予定されているような停戦は、その目的の達成にはマイナスですから、ロシアが合意するはずがありません。

そして、圧倒的優位に立った状態で、相手が降伏せざるを得ない状況に向かいつつあるのに、わざわざ休憩時間を与えて、体力の回復をさせるような真似をするメリットがロシアにはないです。プーチンが紛争の初期から求めているのは、持続的なNATOととウクライナとの平和協定であり、戦争の恒久的な終結です。それは、バイデンとボリス ジョンソンが邪魔をしなければ、3年前に達成されていたはずのものです。プーチンの戦争終結に関しての要求は侵攻前からも変わっておらず、さらに言えば、ロシアの要求は30年前から変わっていません。それは幾度となく、提示され、東西の合意文書にもなっていることです。

客観的に見れば、そもそもアメリカこそが、これまでこの戦争を作り出し、煽り、ウクライナに武器支援をしてきた災いの原因であり、ロシアの真の敵です。その敵が(政権がトランプに変わったとは言え)、仲裁者のような顔をして、ウクライナに再軍備と体力の回復の機会を与えるような停戦をロシアに要求しているということになりますから、厚かましい話です。しかし、これまでロシアとの対話を拒否してきた西側が対話をしようとしている機会をプーチンは喜んでいるようです。

さて、トランプに、物事を俯瞰的、論理的に深く考えることができるような頭があるように思えませんが、彼の言動や行動の結果、いろいろと物事が動くので、ひょっとしたら、深い思慮があって、それを隠すために「うつけもの」を装っているのではないかと考える人もおります。私もその0. 1 %の可能性に期待していないわけではありませんが、先週のイエメンへの軍事行動やイランに対する脅迫を見ると、ネタニヤフの下僕であるのは同じようで、トランプは、やっぱり見た目そのままなのでしょう。

その上で、ウクライナに関してトランプに計算があるとすると、それは、ロシアが停戦に合意しないであろうことは折り込み済みで、とりあえず、ヨーロッパとウクライナ向けにやっているフリを見せ、その間にウクライナの資源に手をつけ、そして、ロシアとの交渉をダラダラと長引かせた挙句に、ウクライナの敗戦を確定させる、というような筋書きではないかと妄想しています。そうすれば、東欧の平和を実現したというレガシーに加えて、ウクライナの天然資源が手に入るとでも計算しているのかも知れません。そもそも30年かけてこの戦争に持ち込んだのはアメリカと言ってもいいわけですから、マッチポンプもいいところですけど。

停戦実施の困難さについては、プーチンが自ら語っています。恒久的な終結につながらない停戦の提案がどれほど非現実的なものかは、具体的な問題を考えてみれば、理解できるでしょう。

「戦闘が止まることは良いことだ。しかし、問題がある。第一に、我々が包囲しているロシア領内のクルスクの領域(のウクライナ兵)はどう扱うか?我々が30日の停戦に合意するということは実際には何を意味するだろうか?彼ら(クルスクのウクライナ兵)は戦わずに立ち去るのか?彼らがロシア市民に対して犯した犯罪の後で、彼らが立ち去るのを我々は許さなければならないのか?ウクライナ政府は彼らが銃を置き、降伏するように命令するのか?実際にどうなるかは明らかではない。それから、ほぼ2000キロメートルに及ぶ前線に関わる問題はどのように解決されるだろうか?周知の通り、前線のほぼすべてにおいて、ロシア軍は攻勢を強めている。停戦では、我々はそれらの非常に多くの部隊を休止させることになるのだ。それで、その30日の停戦期間はどう使われるのか?この期間はウクライナが再び戦闘を続けれるように兵站や武器を補給するためのものなのか?または部隊の訓練に使われるのか、あるいは、そのようなことは行われないのか?それから、停戦が(正しく)実施されることとその保証と確認はどうやって行われるのかという問題もある。一体どうやって、上に述べたようなこと(ウクライナの再軍備や停戦合意違反)が起こらないと保障できるのだろうか?
このような問題があることは、皆さんは常識のレベルで理解してくれると思いたい。これらは、皆、深刻な問題だからだ。
そして、誰が停戦の命令を出すのか?そして、その価値は?
想像してほしい、2000キロメートルの前線がある。どこで誰が停戦合意違反を監視し決定するのだろうか?誰が誰に停戦合意違反を通告するのか?(停戦の実施とその保証には)あらゆる問題が存在し、それは当事者間での注意深い探索と研究が必要になってくる。だから、戦闘休止の考え自体は正しいと考えるし、我々はそれに賛成する。しかし、そこには、実施にあたっての諸問題があって、議論が必要なのだ。我々はアメリカ サイドの人々、パートナーとこれらの問題について話し合う必要がある。我々は、平和的手段によって紛争を解決するという考えを支持しているからだ」

つまり、プーチンは戦闘が止まるということには「原則的」には賛成しているが、(戦闘が再開される恐れがある「停戦」ならば)実際にそれを実行するのは難しい、と言っているわけです。このことは、停戦中もパレスティナ人を殺害し続けているイスラエルを見れば、実感できるでしょう。

NHKのニュースは、ロシアに停戦を受け入れるようにと、ヨーロッパが圧力をかけることで合意し日本も賛成した、というように報じていましたが、連中は自分の立場をわかっているのですかね。日本が何の力もないのは当然として、ヨーロッパでさえ、何をしようとこの戦争の帰趨に大したの影響もないどころか、ロシアに敵対的に行動すればするほど自分の首が絞まるだけのことです。そんな極東の一素人が見ても当たり前のことが、スターマーやマクロンやEUのカヤ カラスはわからないのですかね?それともわかっていてわざとやっているのでしょうか?

停戦は恒久的平和条約の締結の見込みなく起こり得ないし、恒久的平和は、ウクライナ政府が、ドンパス地域の独立とロシアへの編入、クリミア半島の継続的なロシアへの帰属、そしてウクライナの中立化というロシアの要求を丸呑みすること、すなわちゼレンスキーの無条件降伏がないとおこらないでしょう。結果としてウクライナは6割の人口を国外に失い、多くの死傷者を出し、国土の20%を失い、残りの国土と資源をアメリカに押さえられた挙句に、中立を宣言させられる結果になります。
本当の被害者は、アメリカ・NATOの戦争ゲームに巻き込まれた東西のウクライナ国民とロシア人です。


コメント (1)
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