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節電所をつくろう!

2011年05月26日 | 環境問題
日本経済新聞(5/19付)の経済教室で、京都大学教授の植田和弘氏がこんな指摘をされていた。見出しは「エネルギー政策再構築(中)電源別コスト検証が必要」「原発の経済性に疑問 節電・自然エネの拡大カギ」。全体の「ポイント」は《●節電により電力をつくりだす発想が必要に ●後処理コストを含めると原発は高価な電源 ●再生可能エネルギーは町づくりと連携容易》だ。

最も興味深かったのが「節電所」のくだりである。《震災を受け、国民的にも企業の間でも節電意識と節電対策への受容性が高まっている。耐乏という感覚ではなく、新しいライフスタイルの提示や、他者を思いやり電力を大切に使う倫理的消費という価値創造と結び付けて、電力負荷平準化(ピーク時需要の削減)に結実させる必要がある。これは追加的な電力供給能力の調達を回避できるという意味で、短期的にも長期的にも経済性を持つ。一種のイノベーションであり、新しいビジネスにも結びつく》。

《節電所の建設に投資するという発想が有効であろう。最初の提唱者エイモリー・ロビンス氏によれば、節電所は省エネ機器を購入することを通じて、消費してしまうはずだった電気を生み出し発電所の代わりになる(ペーター・ヘニッケほか「ネガワット」)。節電により電気をつくりだすのである。省エネ機器だけでなく、電力・エネルギー消費行為(ライフスタイル、ワークライフバランス、オフィス・工場の業務・操業形態など)の変更も多くの電気を生み出す可能性がある。節電・省エネ型消費行為への変更は節電所への投資なのである。節電所の良いところは、発電所のような長い建設期間が不要で、明日からで少量からでも稼働する点である》。



いかがだろう、これは面白い発想ではないか。「節電しよう」というと何だかチマチマした話のように聞こえるが、「節電所をつくろう」という呼びかけは、とても勇ましいし、ポジティブな発想である。この話は、5/21付の同紙のコラム「春秋」でも紹介された。

《「節電所」と聞いてもピンとくる人は少ないだろう。無駄な電気をドンドン削ってくれる電力会社の施設、とかではない。節電にはその分の電気をつくるのと同じ効果がある、という発想から、節電に努める家庭や企業をこう呼ぶのだ。▼おとといの本紙「経済教室」で、京都大学の植田和弘教授がこの考え方を紹介していた。節電といえば我慢だ辛抱だと説かれ気分も沈む。が、これが発電所のかわりになるとは目からウロコだ。省エネ機器導入やライフスタイルの転換は節電所「建設」への投資で、新しいビジネスにも結びつくと植田教授は言う》。

《▼さて、どんな節電所をつくろうか。思案をめぐらせていたら、甲子園の高校野球の記事が目に入った。今夏は電力消費のピーク時間帯にテレビ観戦が重ならないよう、決勝戦は午前中にプレーボール。ほかの日も開始を早めて照明点灯は避けるという。配慮は分かるけれど、もっと踏み込んだ対応があってもいい。▼高校野球のテレビ観戦に費やされる電力は、東京電力のエリアだけで少なくとも数十万キロワットにのぼる。いっそ大会は秋にずらしたら、とも思う。熱闘は夏でなければという声も出そうだが、あの炎天下の試合はそもそも球児にとってずいぶん酷だ。さわやかな秋風の甲子園。これもまた、目からウロコではないか》。



夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)は朝日新聞社の主催なので、新聞社同士でよく話し合ってもらいたいが、これは検討に価する名案である。しかし朝日新聞に頼らなくても、もっと身近な節電策がある。資源エネルギー庁がまとめた「家庭の節電対策メニュー」(PDF)である。これはとてもよくできた節電ガイドになっている。しかも3ページ目はチェックシートとして使えるというスグレモノだ。主なメニューを抜き出すと、

○エアコン:設定温度を28度を目安に2度上げる。節電効果11% 代わりに扇風機を使う 節電効果50% すだれ、よしずなどで日差しを緩和 節電効果10%
○冷蔵庫:設定を「強」から「中」へ 節電効果 2%
○照明:日中は消灯、夜間も最小限  節電効果 5%
○テレビ:必要な時以外は消す 節電効果 2% 省エネモード、画面の輝度を下げる 節電効果 2%
○洗浄便座:便座保温、温水をオフ 節電効果 1%未満
○炊飯器:早朝にタイマーで一日分をまとめて炊飯 節電効果 2%
○待機電力:リモコンではなく主電源を切る、または長期間使わない器具はプラグを抜く 節電効果 2%

電気ポットなどは800W(沸騰時)も消費するので、わが家では早くから使うのを止めている。こんな簡単なことの積み重ねで、大きな節電効果が得られるのだ。つまり、大きな節電所がつくれるのである。「資源・エネルギー多消費型社会」といわれ、その見直しが叫ばれている。しかし例えば個人レベルでは、とっくに「カロリー多摂取型食習慣」を反省し、コーヒーに砂糖を入れなかったり、マヨネーズを使わなかったり、魚や野菜など低カロリー食への転換を進めているのではないか。電気で、それができないはずがない。電気代も節約できるのである。

今年はクールビズの前倒しや期間延長で、一層の省エネに取り組む企業などが増えている。「わが家では、大きな節電所ができたぞ」「ウチの節電所はまだまだ。何しろ社長が暑がりで、いまだに設定温度は26℃なんや」などという会話が普通にできるようになると、夏の電力不足を心配せずに済むのであるが…。
※写真はクールビズの様子。いかにも涼しげである(南都銀行登美ヶ丘支店で5/23に撮影)
コメント (4)
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