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うかうかしている間に、もう9回目になってしまった。海龍王寺住職の石川重元さんの「人生あおによし」(全20回)が、朝日新聞奈良版に連載されているのである。トップ画像はその初回(5/5付)である。記事から抜粋して紹介すると、
「イケ住とは?」ですか。ウ~ン。何なんでしょうかね。ウィキペディアなどには、イケ住とは「イケてる住職」の略語で、私が親しくさせていただいている仏像探訪がお好きなイラストレーター・みうらじゅんさんが2003年、雑誌で私のことをそう表現されたと記されています。
「イケメン住職」と勘違いされる方も、いらっしゃるようだ。トップ画像のお写真など、いい感じに撮れている。Wikipedia海龍王寺には《住職が親交のあるイラストレーターのみうらじゅんより「イケてる住職」という意味である「イケ住」の称号をつけられ、雑誌などでは「イケ住」と紹介されるケースがある》と出ている。
確かに、ブログやフェイスブック、ツイッターを駆使して発信したり、ラジオのディスクジョッキーをしたりする私のようなお坊さんは珍しいのかもしれません。イケ住と呼ばれるようになって10年になりますから、薹(とう)が立ってしまったようで、恥ずかしいやら申し訳ないような気持ちでございます。
とはいえ、お坊さんがインターネットなど今どきのものを使うことに違和感を覚えられる方が多いかもしれませんし、私に直接そうおっしゃった方もおられました。ですが私は思うのです。民衆に辻説法した鎌倉時代の僧のように、混沌(こんとん)とした今、宗教者としての思いをもっと発信していかなくてはならないのではないかと。07年にお寺のホームページが出来ると同時にブログも開設し、初めて書いた記事は境内に咲いたハナミズキの話でした。発信できた喜びは今も覚えていますよ。
さらに友人のウェブデザイナーから、「宗教者としてリアルタイムに発信してゆくことが必要では」と勧められ、ツイッターを始めました。ツイッターは距離や老若男女を超えたつながりを生んでくれました。5千以上の方々がフォロワーになってくださり、おかげで私も多くの事を知ることが出来ました。今はフェイスブックでも、お寺の行事や日ごろの様子を発信しています。初めて参拝に来られた方とも、「はじめまして」だけど「はじめましてじゃない」という、不思議な関係が生まれました。
一方で、ツイッターなど文字での表現だけでは物足りないとも思うようになりました。少年時代、深夜のディスクジョッキーに耳を傾けていた私は、ラジオでも思いを伝えてみたいと思い立ちました。奈良市のコミュニティーFM局「ならどっとFM」に出演する機会に恵まれた御縁から、同局で2年前から月1回、番組を持つこととなりました。インターネット中継でも番組を配信。動いて話している私を、色々な地域の方に姿を見ていただくことも叶(かな)いました。
平城京天平祭2011で(同年 4.29撮影)
石川住職は「ならどっとFM」で、毎月最終木曜日の午後9時から“イケ住の「it's 僧 night!」”という1時間の生番組を持たれている。《40代~50代向けトーク番組》で《ご住職の飾らないトークと、バブル世代の音楽をお楽しみください》とあり、Ustreamでも同時配信されている。オーソドックスなDJのスタイルで番組を進行されている。
実は私も同日の午後7時から“ソムリエtetsudaの「どっぷり!奈良漬」”という1時間の生番組を持っている。《奈良にまつわるトーク番組です。どっぷり奈良に漬かっている人のゲストコーナーもお楽しみに》という趣向で、気の合うゲストとワイワイ語り合うスタイルだ。石川住職とは、局でお会いすることもある。
私のことを「積極的な人」との印象をお持ちになることと思いますが、実際は10年ほど前までは極めて消極的で、思っていることを口にすることが出来ない性格でもございました。(全20回、構成・矢代正晶、渡義人)
そのようである。これまでの回の見出しを拾うと、
〈その2〉祖父の機転で命拾い (5/06)
〈その3〉寺の再興へ艱難辛苦 (5/08)
〈その4〉三つ子の道徳観 今も (5/09)
〈その5〉中学で音楽と出会う (5/10)
〈その6〉孤独だった高校生活 (5/11)
〈その7〉バイクが生きる力に (5/12)
〈その8〉日本一小さい大学へ (5/13)
「孤独だった高校生活 」(5/11付)には、こんなくだりがある。《高校2年になり、大きな試練に見舞われました。もともと友人をつくるのが得意でなかったのに加え、大半が1年生で友人関係ができあがった連中ばかりのクラスになったため、次第に孤立していったのです。休み時間にクラスで会話する人もおらず、いつの間にか勝手に弁当を食べられ、昼の時間に弁当が無いとかね。事態が好転する様子もみられないし、そりゃつらい時間でした。そんな学校に居るのがイヤになり、午前中で勝手に下校したことも何度かありましたよ》。
ところが《孤独な高校生活の中、同級生や学校に反抗心を抱くと同時に現状を変えたかった私は、思いがけない行動を起こすこととなりました》。それが翌日付の「バイクが生きる力に」と展開するのである。今の住職からは想像できないが、そんな時代がおありだったのだ。
石川住職はFacebookに、チラチラとこの連載のことを書かれている。《朝日新聞に掲載されている写真が、加工したかのようによく撮れています。見合い写真にも使えそうです》(5/5)。《朝日新聞奈良版に連載中の、人生あおによし。ちょっとぐらいカッコよく書こうかと思ったけど、知ってる人は知ってるから、そんなことして笑われるぐらいなら正直に書いて、笑われたりバカにされるほうがよっぽどマシ》(5/9)。《連載終わったら、知り合い減るかもしれん。でも作った自分で縮こまって小さく窮屈に生きるより、自分らしく大らかに、伸び伸び生きたい。だって、世間からの評価を受けるために生きてるんじゃないからさ》(5/11)。
連載もいよいよ「成人編」に入るので、この続きが楽しみである。残すところ、あと11回。皆さん、石川住職の「人生あおによし」にご注目ください!