tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

まもなく見頃!月ヶ瀬梅林2009

2009年02月21日 | 写真
奈良県の三大梅林といえば、賀名生(あのう)梅林(五條市西吉野町 2万本)、広橋梅林(吉野郡下市町 5千本)、月ヶ瀬梅林(奈良市月ヶ瀬 1万3千本)である。

2/18(水)、休暇を取って月ヶ瀬梅林に行ってきた。2/15~3/31までの期間中、「月ヶ瀬梅渓 梅まつり」が行われている。
http://narashikanko.jp/j/whatsnew/ume/


月ヶ瀬は、お茶の名産地でもある

観梅のピークには交通規制が行われるようだが、この日は、まだ車で奥まで入れた。たいてい真福寺の駐車場に車を止め、帆浦梅林周辺を歩くことにしている。



村落の中は、すっかり春の景色だ。庭の梅が香り、売店からは焼餅の良い匂いが漂ってくる。



遠くに見えるのは、高山ダムの「月ヶ瀬湖」である。五月川(名張川)を堰き止めて作られたダム湖だ。湖を遠景にして梅を撮るのが写真の定番であるが、今はまだ咲き始め~5分咲き、といったところだった。



Wikipedia(月ヶ瀬梅林)によると《奈良市月ヶ瀬尾山とその周辺(旧添上郡月ヶ瀬村)に位置する梅林である。五月川の渓谷沿いに梅の木が広がる様から月ヶ瀬梅渓とも呼ばれる》。しかも《1922年、当時の内務省は日本国が指定する初めての名勝に奈良公園、兼六園とともに「月瀬梅林」を指定した》ということだから、これはすごい。





《明治時代に入る頃まで月ヶ瀬は烏梅(若い梅の実の燻製。紅花染めに必要な材料)の一大生産地であり、月ヶ瀬梅林は烏梅の原料となる梅の実を収穫する用途で規模を拡大していった。最盛期の江戸時代には約10万本の梅の木が成育していたとされる。20世紀に入ると合成染料の発達により、烏梅はほとんど生産されなくなったため、月ヶ瀬梅林は観光資源として利用や食用の青梅の栽培に軸足を移した》。



《月ヶ瀬梅林の起源は古く、1205年(文久2年)に真福寺境内に天神社を建立する際、菅原道真の好んだ梅を植樹したとの口伝が残っている。この記録の真偽は定かではないが、「桃仙の梅」が樹齢600年と推定されることから、月ヶ瀬梅林の起源は少なくとも600年前にさかのぼるのではないかと考えられている》。

《1331年に起こった元弘の乱で大敗を喫した後醍醐天皇が笠置山から撤退する際、一緒に逃げてきた女官の一人が月瀬に滞在した。その女官が熟れた梅の実を見て月瀬の民に京で使用される紅花染め用の烏梅の製法を教えたという伝承が残る》。今も真福寺の境内には、この伝承にちなんだ「姫若の梅」という古木がある。




真福寺境内の梅。「姫若の梅」はまだつぼみ

《その約100年後の15世紀ごろには五月川流域一帯は烏梅を作るための梅林で埋め尽くされたという。深い渓谷にある月瀬の村々には耕作地として利用できる土地に乏しく、厳しく取り立てられる上納米を納める余裕がなかった。そこで換金作物である烏梅を生産し、烏梅の販売金を銀納した。耕作地として利用できない斜面で烏梅に用いる梅を栽培し、限られた耕作地では自給食料を生産することで自らの生活を守ったのである》。

《明治時代に入り合成染料が伝来すると、烏梅を用いた手間のかかる紅花染めは徐々に行われなくなり、烏梅の価格は暴落した。梅樹の手入れはおろそかになり、畑地に植えられていた梅は伐採されて他の作物に植え替えられていった。最盛期に10万本を誇った梅林は徐々に衰退してゆく。しかし、風光明媚な風景を求めて観光客はむしろ増えていった。月ヶ瀬梅林は徐々に一般の人々の観光地に変化していく》。



《一方、朽ちてゆく月ヶ瀬梅林を守るための保存活動が行われるようになった。上野町長を務めたことのある上野の事業家、田中善助は隣村の梅林を守るために「月瀬保勝会」を発足させた。しかし村民の意識の低さからか、梅林の伐採はおさまらず、月瀬保勝会の事業は頓挫した。1889年、町村制施行により月瀬村が発足すると、奈良県知事税所篤や月瀬村長奥田源吉らは梅林の衰退を憂い、租税減免など、梅林保護の政策を実施した。熱意が功を奏し、月瀬村民は自主的に「月瀬保勝会」の運営を行うようになった》。



《梅林の保護は軌道に乗り始めたかに見えたが、1937年ごろからの戦時統制の時代に突入すると食糧増産のために梅の木畑は半ば強制的に伐採され、耕作地に姿を変えた。そして、戦前は2万本といわれた梅の木は戦後は半分以下まで減少した》。



《1953年に当時の建設省から木津川総合開発計画が発表された。大阪平野を洪水から守るため、木津川支流に水量調節用のダムを建設する計画であった。この計画には名張川の高山ダムが含まれており、計画の実現は月ヶ瀬梅渓の水没を意味した。月ヶ瀬村では村を挙げての反対運動が行われ、奈良県やマスコミも声を上げたが、下流域の安全確保の大義の前にしてついに水没を回避することはできなかった》。



《高山ダムが完成すると約3800本の梅がダムの底に水没することになる。水没する梅林を補償するため、移植可能な古木を現在の月ヶ瀬尾山天神の森付近や月ヶ瀬嵩三山付近に移植した。また、月瀬村内各所に新たな梅林が設けられた。また、梅林を保護する立場である月ヶ瀬保勝会は戦中戦後の混乱から休眠状態に陥っていたが、新生月ヶ瀬梅林を盛り立てるために活動を再開した》。


「湖畔の里つきがせ」のうどん
http://web1.kcn.jp/tukigase/kaiin/kohan.htm

《高山ダムは1969年に完成し、五月川の渓谷は月ヶ瀬湖に変貌した。渓谷が沈んだ後も月ヶ瀬梅林では月ヶ瀬梅渓保勝会や観光協会による梅林の管理保全、移植梅樹や幼木梅の育成が続けられている。また、月ヶ瀬梅林は1975年には奈良県立月ヶ瀬神野山自然公園の一部に指定された。名阪国道の開通や県道・広域農道の整備などにより交通事情が改善したこともあり、1988年には推定観光客10万人以上を見込める観光地となっている。今では月ヶ瀬湖の湖水と育成した梅樹が調和し、新生月ヶ瀬梅林が観光客の目を楽しませている》。

これは知らなかった。現在の月ヶ瀬梅林は、「月ヶ瀬保勝会」をはじめとする多くの人々の努力のおかげで保たれてきたのである。この素晴らしい観光資源を、私たちは子々孫々の代まで伝えていかなければならない。
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遷都1300年祭イベントに助成が受けられます!

2009年02月19日 | 平城遷都1300年祭
平城遷都1300年記念事業協会は、県民活動支援事業の募集(第2弾)を行っている。応募締め切りは3月31日(火)である。

※県民活動支援事業の募集(第2弾)のお知らせ
http://www.1300.jp/kenmin/

あまり知られていないのが不思議である。同協会のHPによると《平城遷都1300年祭に県民のみなさんが主体的に参画し、主催者となって企画、実施する事業を募集します。なお、採択された事業については、平城遷都1300年記念事業協会(以下「協会」)が定める範囲で支援を行います》。

支援内容は《事業費全体のうち、対象経費の1/2以内の額を50万円を限度に助成及び協会後援事業と認定し、広報支援を行います》。つまり、イベントなどの経費の「半分以下かつ50万円以内」という範囲内で、助成金がもらえるという仕組みなのだ。

助成の対象となるのは《県内で活動するNPO法人、市民活動・ボランティア団体、自治会・町内会、婦人会、老人会、PTA等の地縁組織及び地域振興等を目的としている財団法人及び社団法人(以下、「NPO等」)、または複数のNPO等で構成する実行委員会など》。

イベントの実施場所は《原則、奈良県内をはじめとする全国各地(平城宮跡を除く) 》と対象は広い。なお、応募して助成の対象(①活動支援事業)から外れても、同協会の「後援名義」が得られる(広報で支援してもらえる)「②後援事業」もある。

今回の募集は「第2弾」とあるとおり、すでに第1弾が昨年秋に行われている。「①活動支援事業」に24事業、「②後援事業」に18事業が選ばれた。
※遷都1300年祭の民間イベント
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/c/270c805e90804ea7413010beefb03fb1

このほか同協会では、無料で30分のステージイベントができるという《「まほろばステージ」春の宴 秋の宴 「一般参加催事」募集のお知らせ》も行っている。
http://www.1300.jp/mahoroba/

奈良市も助成制度を発表した。「平城遷都1300年祭 奈良市市民連携企画補助事業の募集」である。こちらは《対象経費の1/2以内の額を補助します。(100万円を限度)》で、応募期間は《平成21 年5 月1 日~平成21 年6 月30 日》である。
※平城遷都1300年祭 奈良市市民連携企画補助事業の募集について(PDF)
http://www.city.nara.nara.jp/www/contents/1231292629360/files/s2102_01.pdf

1988年の「なら・シルクロード博」は、華やかなお祭りではあったが、お仕着せの観が強かった。平城遷都1300年祭は、記念事業協会や県の祭りではなく、われわれ県民の祭りである。「踊る阿呆に見る阿呆」ではないが、せっかくの助成制度はフルに利用させていただいて、お祭りで踊らないと「ソンソン」である。
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「みよし」のツインライス

2009年02月17日 | 奈良のカレー
久しぶりに、ならまちの「喫茶お食事 みよし」に立ち寄った。このお店は「奈良のうまいもの」メニューの「黒米カレー」も提供されているが、この日は「ツインライス」(750円)を注文した。
※参考:ならまちで昼食を(1)「喫茶お食事 みよし」(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/a42f7428a0f365880d04eeffa470bb6e

ツインライスとは、カレーとハヤシのツインである。「みよしはカレーが美味しいが、ハヤシもイケる」との噂を聞いたので、一度に両方食べられるようツインライスにしたのだ。これで750円とは、とてもおトクである。



それが冒頭の写真で、大きなお皿にカレーとハヤシがきれいに分かれてご飯に載っている。混じらないよう気をつけながら、まずはカレー、これを平らげてからハヤシという順序でいただいた。

カレーは程よい辛さで、お肉もたっぷり。じっくり煮込まれて、まったりした味に仕上がっている。ハヤシがまた美味しい。昔懐かしい味をベースに、現代風に具材がたくさん入っている。2つの名物を同時に楽しめるとは、これはぜいたくなメニューである。

「奈良のうまいもの」メニューを提供するお店は、県のHPに名前が載る。その関係で、遠方からこのお店を訪ねるお客も多いそうだ。このお店は「うまいもの」のスタート当初から、「黒米カレー」と「大和肉鶏照焼丼」を提供されている。
http://www.pref.nara.jp/norinbu/umaimono/omise/Miyosi.html

この時期は、ならまちを訪れる人も少ないが、こういう時期こそ、静かで落ちついた町の風情が楽しめる。ぜひならまちを、そして「みよし」をお訪ねいただきたい。

奈良市脇戸町6 電話 0742-24-7214 10時30分~19時30分 
定休日 月曜日(月曜が休日の場合は火)

※キッチンPEPITAのムルギーカリー(奈良のカレーシリーズ・当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/e3bf53f2ad316b8653ff34082e62f017
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観光地奈良の勝ち残り戦略(22)タコヤキストと語る地域の魅力

2009年02月15日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
2/14(土)、奈良女子大で「2008年度奈良女子大学 生活観光現代GPシンポジウム」を聞いてきた。テーマは「タコヤキストと語る地域の魅力」で、「奈良の『たこやき』を探せ!」という副題がついている。
※シンポジウムのポスター
http://www.nara-wu.ac.jp/news/H20news/090214.pdf



シンポジウムは2部構成で、第一部は熊谷真菜さんの基調講演と学生による活動報告、第二部はたこ焼きの実食会だった。開会時間の午後2時前に会場(生協食堂)に入ると、すでに学生たちが実食用のたこ焼きを焼いていた(写真の右にシンポジウムのポスターが見える)。とても良い匂いがする。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nara/news/20090214-OYT8T00969.htm



この現代GP(グッド・プラクティス)は「地域資源を活用した全学的教育プログラム」で、「古都奈良における生活観光」というタイトルがついている。

同事業のHPによれば、生活観光とは《地域の生活環境の再評価と観光による地域の活性化》のことで、《生活観光の発展は、地域資源の価値を高め、新しい奈良像の形成に直結すると考えます。本プログラムでは、地域の人々とともに地域資源の発掘と再評価を行い、それらの資源をコンテンツとする新しい観光の設計をすることで、地域づくりに貢献していきます》とある。これは頼もしいチャレンジである。
http://www.nara-wu.ac.jp/gp2007/



さて、まずはタコヤキストで日本コナモン協会会長の熊谷真菜さんの講演「コナモンでまちおこし」である。なおコナモン(粉もん)とは、粉をベースに作られた食べ物のことである。具体的な提言を交えたお話は、とても参考になる。ポイントをかいつまんで紹介すると…。


1.B級グルメによるまちおこしの必要最低条件
(1)地元(商店、家庭)での密着度
(2)単純明快な(わかりやすい)メニュー
(3)勢いとバランス感覚のあるキーマン…「必食仕掛け人+必食仕事人」、「いいだしっぺ・いちびり+仲間」
・私(熊谷さん)が最近注目しているのは、青森の「黒石やきそば」で、これは際立って面白い。
http://kuroishiyakisoba.com/ 


講演される熊谷さん

2.ご当地名物になれるか、5つのチェックポイント
(1)味…おいしい(わかりやすい味、見せ方、意外性)
(2)背景…歴史、文化、地産地消
(3)担い手、つなぎ手、いちぴり隊…若者、よそ者、バカ者
(4)名物度…まちのお宝自慢度、メジャー度(信頼度)
(5)話題性、認知度…ストーリー→メディア露出度
・有名な富士宮やきそば(富士宮市)は、おいしいだけでなく、ストーリーがある。富士宮市へ行き、富士山を仰ぎ見て(富士山頂=富士宮市)、神社(富士山本宮浅間大社)にお参りする。その後で富士宮やきそばを食べる、という仕掛けである。


富士宮やきそば。有限会社マルヤスのホームページ(楽天市場内)より
http://www.rakuten.co.jp/maruyasu/862433/862440/

3.奈良の「生活観光」を考える
・私は「シルクロードは麺ロード」と言っている。ある意味で、奈良は日本の麺類の発祥地といえるのではないか。
・しかし残念ながら、奈良の「食」は、あまり知られていない。奈良の人に聞いても「何もない」という。それは、あまりにもたくさんありすぎるからではないか。逆に「これしかない」という所は、それを言うしかないのだが…。
・奈良へ行き、行列ができている有名店で食事しても「おいしくなかった」という声を聞く。情報発信に問題があるのではないか。
・「観光」は易経の言葉「王たる者、その国の光を観(示)すべし」に由来する。「自国の良いところ(光)をお観せするのが、最良のもてなしになる」ということである。生活観光とは地域住民が暮らしの中の光を示す(観す)こと。しかし奈良には光があふれすぎていて(真っ白になっていて)見えないのではないか。
・また「観(かん)す」とは「示す」ことだが、「示」という字は象形文字で祭卓(神を祀るときに使う台)の意味。台の上に載せて提示しなければ、客には見えないし人が集まらない。「良いものを見せよう」(観光情報を発信しよう)という努力が必要だ。



4.奈良のB級グルメ・おすすめ4案
(1)奈良チーズ饅頭…吉野葛を使って、夏は葛饅頭、冬は蒸しタイプ。奈良は饅頭の発祥地(林神社)でチーズの元祖・醍醐(蘇)は飛鳥で作られた(飛鳥時代・文武天皇の命による)ことにちなむ。
(2)奈良うどん…奈良の穀醤(こくしょう・こくびしお=米・麦・豆などの穀物を発酵させて作った醤油で、今の醤油・味噌の原型)や醍醐(蘇)を使った濃厚特製ダレで食べる。飛鳥鍋の締めにも。
(3)奈良茶漬…奈良の米、お茶、茶碗を使い、旬野菜の煮しめ、奈良漬を添える。「奈良茶漬カフェ」、メイドカフェ風の「飛鳥美人カフェ」なども。
(4)(人も食べられる)鹿せんべい…ノンソルト(無塩)、ノンフライで、人にも美味しく体にやさしいせんべい。ミルクせんべい、ソースせんべい、たこせん(たこ焼きをサンド)など。「鹿しか食べないせんべいなんて…」倶楽部の発足も。


このほか熊谷さんは、たこ焼きが世界中に広まっていること(ソウルでは甘い生地で焼く、マレーシアでは回転寿司店で売っている)の紹介や、ここへ来るまでに2軒のうどん屋さん(麺闘庵、ふく徳)を訪ねてきたことなどを披露された。会場から、「ぶっかけそうめんのような料理はどうか」という質問があったが、「今もそうめんチャンプルーは出回っているが(麺が細いため)今ひとつインパクトに欠けるのでは」とコメントされていた。

休憩時間に熊谷さんと名刺交換をした。「tetsudaです」というと「日々ほぼ好日のtetsudaさんですか? 奈良に行ったらぜひお会いしたいと思ってました」と言っていただき、これは光栄だった。ついでに、私のお薦めのうどん屋さん(初次郎)とお好み焼き屋さん(団)の情報をお伝えしておいた。
※うどんの匠 初次郎(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/f55e07001cee56296659ea8f17eb37e2
※お好み焼き 団
http://naraslow.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_65b5.html


団のお好み焼き・ミックス(08.3.5撮影)

熊谷さんのお話は、示唆に富んでいる。「奈良は食情報の発信が足りない」というのは私も気になっているところだし、「人が食べられる鹿せんべい」も、よく話題に上るが未だに実行されていない。林神社や蘇(醍醐)などの良いネタを持ちながら、それを生かしていない。「奈良うどん」は、うどん玉が商品化されているが、これを売り物にする店はほとんどない。

熊谷さんご推奨の富士宮やきそばは、今は亡き「浪花麺だらけ」で食べたことがあり《一見、ごく普通のソース焼きそばですが、食べてみるとラードのからんだ麺がパスタのような口当たりで、とても斬新な食感です。豚肉の背脂を揚げたという「肉カス」に花かつお、粉末の干イワシなどが渾然一体となって、にぎやかな現代風の味を醸し出しています。自家製ソースも地元産キャベツもよくマッチしていました。これはソース焼きそばの富士山です》と紹介したことがあった。
http://www.news.janjan.jp/living/0411/041106443/1.php

「こってり」味ばやりの現代にあって、そうめんのような「あっさり」した料理は受けない、ということなのだろう。

基調講演のあと、学生たちによる生活観光現代GP取組報告があった。「安全・安心のまちづくり実践講座」「文化発信の企画力をつける」「24 時間テレビスタッフ体験講座」「奈良の食をさぐる」「生活観光情報発信講座」「M-House Project ~道~」の6つである。


とろけるチーズ(たこ焼きの具)

いよいよ第二部はお待ちかね、たこやきの実食会である。手元のメモによると、ずらり並んだたこ焼きは、約10種類。オーソドックスなたこ焼きから、チーズ、奈良漬、豚肉、エリンギ、大和まな、エンドウ豆、キムチ、チョコレートなどが入った「変わりたこ焼き」が次々と焼かれ、約60人の参加者たちがどんどん平らげていく。これで参加費500円とは、激安である。



シンポジウムのレジメにはアンケート用紙がついていて、どれが美味しかったか記入するようになっている。奈良漬は意外と美味しかった、大和マナは塩漬だったので塩味がきつすぎる、どんな具でもチーズを組み合わせると味がまろやかになって良い 等々と書いておいた。


エリンギ(たこ焼きの具)

実食会のとき(他大学の)大学院生の話を聞いた。彼によると「奈良女子大の現代GPは大変成功している。なぜなら地域住民の支持を得ているから」ということだった。確かに「奈良の食をさぐる」(食材の生産現場等の見学などを通じて理解と関心を高めるとともに、地産地消や地域活性化の取り組みを理解する)では、奈良漬を使ったアイデア食品の開発やセブン-イレブンでの弁当販売など、全国的な話題を集めた取り組みがあり、地元も歓迎していた。
※ならならのお弁当(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/f222a94c6cf603d2b33ab829aabd21a8


熊谷さんの実技指導。写真中央は、粉もん調査隊の渡辺裕文さん

シンポジウムで閉会挨拶をされた増井正哉氏(生活観光現代GP代表 生活環境学部教授)は、この事業のHPに《活動の中で、地域で活躍しておられる様々な方々とのつながりができてきました。新しい生活観光現代GPは、その繋がりをベースに進めていきたいと考えています》《全学部でひとつの教育テーマに取り組むのは、大学としてもおそらく初めての試みでしょう。試行錯誤の繰り返しになるかと思います。教員、学生、そして地域の皆さんで、一緒に良い教育プログラムへと仕上げていきたいと思っております》と書かれている。


同会場内で行われた奈良漬チョコレートの試食会

奈良には「生活観光」のネタがたくさん転がっている。神社仏閣を外しても、むかし町、職人さん、伝統工芸・伝統食、奈良晒・大和木綿、農家民宿、吉野林業 等々、数え上げればキリがない。産・官・学のみらなず、公・民が一致協力して、もっと奈良の生活観光を盛り上げていきたいものだ。
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三浦雅之氏の「食卓を吹く7つの風」

2009年02月14日 | グルメガイド
株式会社「粟」は、2001年(平成13年)にオープンして話題となった「清澄の里『粟』」(奈良市高樋町86)に続き、「粟ならまち店」(奈良市勝南院町1番地)を1/19に出店した。

「清澄の里『粟』」には3年前にいちどお邪魔し、当ブログでも紹介したことがある。予約を入れていなかったので喫茶だけの利用だったが、裏の畑からヤギ小屋までご案内いただいた。
※田の神さま(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/27e83540ac302421b850b5c871917f7d

「粟ならまち店」は近いので、オープン早々にお邪魔して、お昼の「粟『収穫祭』御膳」(2,900円)をいただいた。とても美味しかったので当ブログで紹介しようと思ったが、すでに1/22付の奈良経済新聞(ネット新聞)に、行き届いた紹介記事が載っていたのを知った。
http://nara.keizai.biz/headline/56/


粟ならまち店

そのうち奈良新聞「シニア瓦版 特別号第1回」(1/29付)に、「食から見た健康づくり」という全2ページの対談が掲載された。《食の原点「医食同源」》というタイトルの、三浦雅之氏(株式会社「粟」社長)と佐伯省吾氏(西大和さえき料理長・株式会社グルメジャパン社長)による興味深いお話だった。この対談記事はネットには掲載されていないので、ここでピックアップして紹介したい。写真はすべて、粟ならまち店で「粟『収穫祭』御膳」をいただいた時のものである。


地場野菜などの前菜

●三浦雅之氏の発言
《かつての日本は、お百姓さんの仕事がしっかりとその地域の気候風土に根ざしていました。そしてそこから生み出される食卓の中には、風土、風景、風習、風俗、風情、風格、風味という「7つの風」が息づいていました。ところが昭和38年に農業基本法が制定され、自給農業から農業の工業化がスタートすることによって食料の安定供給と引き換えに、7つの風が失われていきました》。7つの風とは、言い得て妙である。土地(風土、風景)とヒト(風習、風俗)と食べ物(風情、風格、風味)が、ガッチリと結び付いていたということなのだ。

《現代の飽食は莫大な石油エネルギーと発展途上国の農業生産によってささえられており、「持続可能性」、そして「エコロジカル」な観点から考察しても、日本の食のあり方をもう一度見つめ直さなければならない時期にあると思います》。


ヤマノイモの一種・仏掌(ぶっしょう)芋

《伝統野菜を育ててこられた多くの方々とお会いしているうちに、興味深い相関関係に気がついたのですが、それは伝統野菜が残っている地域には比例してお神楽などの伝統的な芸能、そして生物の多様性に美しい景観が残っていることが多く、また生涯現役で働いている方が多いということです。食を通して地域間と世代間が結びつき、人の結びつきが地域の文化を、そして役割と生きがいを生みだしてゆく、そんな関係が野菜の種を通してもたらされているように感じさせられています》。


サトイモの一種・烏播(ウーハン)。奈良市高樋町の農家で作り継がれてきた

●佐伯省吾氏の発言
《社会が豊かになって食生活が豊かになること自体は、私はいいことだと思います。ただ、その民族や社会に伝統的にある食文化との整合性が問題であると思います》。

《日本は、世界的に見て長寿国です。それは根野菜を自分の身近なところで農産物として生産し、タンパク源は魚をベースにして摂取してきたからです。したがって、老人になってからも健康で長寿という社会が長く続きました。自然界でも、草食獣は長命ですが、肉食獣はどうしても短命です》。


天理産のイチゴ・ゆめのか。甘味と酸味のバランスが絶妙だ

《ファーストフード店が30年ほど前から目に付くようになりました。すると、食事をいただくのに箸(はし)がない。やがて箸を作る職人がいなくなります。そして箸だけではなく、陶磁器の器を作る職人もいなくなります。また掛け軸や蒔絵(まきえ)など、食にまつわる広い文化が衰退し、それを支える担い手がいなくなってしまうのです》。

《フランスでは4百年前でも手で食べていました。日本は平安時代には2本の箸で食べていた歴史があります。日本の食のあり方も考えてみる必要があります》。


ゆめのか1粒は、こんなに大きい

●対談の最後に
三浦氏は、対談をこのような発言で締め括っている。《熟年世代の方々は、日本の生活文化が気候風土に根ざしていた時代を、体感として感じることができた最後の世代でいらっしゃると思います》。



リタイヤ組が《家庭菜園や、援農、市民農園などをしながら、またお仕事を通して培ってこられた得意分野を生かして地域や社会のために貢献していかれる。このような方々が増えていけば、小さな地域や、顔の見える範囲で気候風土に合った、農と食、そして医食同源といった人と自然の関係性、そして熟年世代の方にとっては懐かしく、若い世代の方にとっては新しい日本の食に対する価値観が再構築される一助となってゆくのではないかと思います》。


私たちは軽々しく「食は文化だ」などということがあるが、背後にはこのような深い意味があったのである。人は自然の力で生かされており、人と自然の関わりの中で人間同士の関係性を築き上げている。そのことを「食」を通じて、今一度しっかりと理解しなければならない。

日本の食糧自給率(カロリーベース)は40%に過ぎない。これは主要国の中でも最低である。ドイツなどは84%もあるのに。昨今の不況のなかで、「もっと農業に人材を振り向けよう」という動きがあり、私は注目している。風味、風情、風格、風景、風土、風習、風俗の7つの風(「短けど士族」と覚えた)が、再び1億人の食卓の上を吹く日を楽しみにしている。

※撮影にご協力いただきました粟ならまち店・店長の新子大輔さん、料理長の村田豊明さん、有難うございました。
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