tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光地奈良の勝ち残り戦略(29)そこに愛はあるのかい

2009年07月17日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
以前、当ブログで「奈良県宿泊施設経営者セミナー」(7/2、9、16の3回)のことを紹介した。私は参加できなかったが、参加された方に聞くと、とても良かったという。宿泊観光客の増加は、県の最重要施策の1つだ。今後もこのような機会を作っていただきたいものである。
※「宿泊施設経営者セミナー」が開催されます!(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/afcffd88d85849b842855e5c230c7482

セミナーに参加した同僚のK嬢によると、7/2の渡壁ほづみ氏(株式会社リサージュ 代表)の話が特に印象に残ったという。「古都のホスピタリティ・観光宿泊で求められるおもてなし」という講話と「経営者が身につける接客基本トレーニング」というロールプレイングの二本立てだったそうだ。

彼女は渡壁さんのお話を克明にノートしていたので、それを見せてもらったところ、奈良の宿泊観光の問題点が浮き彫りにされていた。以下、かいつまんで内容を紹介することにしたい。

1.古都のホスピタリティ・観光宿泊で求められるおもてなし
(1)京都ではなく奈良を訪れる観光客の思いと現実
■奈良は期待通りの観光地か?
奈良に対する期待は、日本のまほろば、歴史の原点、万葉集、世界遺産 など。奈良が発祥のものも多い(能、相撲、饅頭、清酒、そうめん など)。京都は派手、奈良はしっとり落ち着いている。京都では若い人(=お土産物を買う)からお年寄りまで楽しめる。年を重ねると「奈良の方がゆっくり、ほっこりできる」と感じてもらえる。奈良は次の世代へのアピールが弱い。

奈良は期待通りの観光地ではない。奈良らしい食べ物がない(美味しい食べ物には期待が集まる)。体験観光が難しい。宿泊施設が少ない。観光地が点在しているため「次のお寺へ」と回るのが難しい。「楽しいなぁ」と感じてもらえないから、泊まってもらえない(お客様に積極的なアプローチができていない)。

奈良は説明不足、知識不足。宿泊施設の従業員は、もっと知識を身につける必要がある(飛鳥鍋に牛乳を使う理由 など)。

奈良に関する知識のある人が来れば楽しめるが、深すぎて、知識のない人には難しい。奈良は、情報を求めない限り入ってこないというイメージがある。もっと情報を発信し、若者の心をつかもう。中谷堂(餅つきのパフォーマンス)のように「わあっ」と楽しめる空間を作ろう。奈良には特級クラスの観光資源があるのに、PR下手のため、観光資源がうまく生かせていない。もっと自信と誇りを持って対処しよう。



(2)奈良のお宿に求められるお客様満足度と売上の関係
■売上アップに繋げられる人とそうでない人との差とは
遠方の人は奈良を知りたいが、知識が少ないと案内できない(どこを訪ねたら良いのか分からない。無愛想な人が多い)。しっかりと案内できる人が売上をアップできる。奈良の葛餅を持って帰りたいが、3時間しかもたない→「奈良にお連れ下さい」と伝える必要がある。「何かお薦めがありますか」→お薦めして、さらに知識があると説明できる。それが売上アップに繋がる。

(3)今こそ求められる古都・大和の国のホスピタリティ
■宿泊のお客様に100%の思いを向ける。
「わざわざ来ていただいて有り難い」という気持ちをぶつける。もっと「お客様」という意識を持つ、愛想よくする。重厚で愛想よく、いい笑顔でお出迎えを。

■古都・大和の国のご案内という誇りを持つ
今は知識不足。誇りを持って案内できる所があるか。観光に携わっている人は、何を聞かれても案内できるように。「思い入れ」があれば、自然と説明したくなるもの。

■思いを声と動作で表現する
奈良と京都の違いを明確にし、奈良の良さ・奈良にしかないお薦めを伝える(人に案内してもらうと、よく学べ、感動できる)。案内した人との出会い・ふれあいが観光客の心に残る。知らない場所を知ることができたという喜びが中高年には受ける。

2.経営者が身につける接客基本トレーニング~お客様の満足度を高めるための人材育成を考える~
(1)スタッフ教育のポイント
■押し売りと満足感、紙一重の指導
気持ちよく案内・説明する。お客様に高い満足度を持っていただくと、自然と売上がアップする。業務知識が必要。

■施設の特徴、個性を伝え続ける、マイナス箇所を好ましい箇所に変える表現
デメリットは必ずしもマイナスではない。マイナス面もプラスの表現で説明する。

■知識と好ましいご案内・説明方法は接客の要
AIDMAの法則では、消費者がある商品を知って購入に至るまでに次のような段階があるとされる。Attention (注意)→Interest (関心)→Desire (欲求)→Memory (記憶)→Action (行動)。

まずお客様に「へぇ」「ほぅ」と言ってもらえるよう(Attention) 、五感に訴える話し方をする(ウンチクも)。例えば「柿の葉寿司」などと、品名だけを伝えてはいけない。商品の特徴を伝えて、少しマイナス面も話すと「正直な人だな」と思ってもらえる。「この人は良い人だ」と思われ、聞き耳を立ててもらえる(Interest)。



■「出来て当然のこと」の徹底指導
第一印象が大切。接客3点セットとは、
・アイコンタクト…せめて2~3秒、お客様と目を合わせる
・笑顔…4番目の歯(スマイルティース)が見えるのが自然な笑顔
・明るい声…ドレミファの「ファ」から「いらっしゃいませ」

説明・案内・業務知識を身につける。「いらっしゃいませ」に+αの言葉を添える(自分らしい言葉で)。観光資源をいろんな角度から見ていく。

■ホスピタリティの素(もと)
・自信を持つ、持たせる
・宿泊施設経営者自ら、笑顔・知識・話法(+α)ができているか←もてなしの心
・奈良に対する誇りがあるか

K嬢のノートはここで終わっているが、ネットで検索すると、尾鷲市(三重県)の「東紀州宿泊施設ホスピタリテイ・アップセミナー」(東紀州観光まちづくり公社主催)で、渡壁さんの講話がブログに紹介されていた。
http://higashikishu-koyou.org/info/?itemid=196

ある中国人が《日本の田舎を体感したいという事で、先生はこの東紀州にお連れしたそうなんですが、それはそれは、この海・山に囲まれた日本ならではの田舎風景に感動されたそうです》。

しかし宿泊施設では《(質問した)料理について説明もできない、料理が残っているお皿を勝手に片付ける、といった事で、その中国人の方はとても残念がっていたそうです。その中国人のお客様は、料理に添えられているオレンジを最後に食べようと残していたもので、その接客係の人は食べないんだと勝手に判断し、さげようとしたそうです。そこで、「お下げしてもよろしいでしょうか?」の一言を添えるだけで何も問題は起こらないはずなのに、全くの自分の考え方だけでお皿を下げてしまった店員には「おもてなし」の気持ちはあるのでしょうか?》。

《細かい事ですが、何事に対してもそのお客様に対する(利用していただきありがとうございますという)感謝の気持ち、その人の立場になって考える思いやりの気持ち、というのは、全てお客様には伝わっています》。

《宿泊施設(=サービス業)というのは、料理がおいしい・お風呂がキレイ、それは当たり前です。観光地に来て、普段見られない景色や思い出を作り、その土地にまた来たい、と思わせるには、宿泊施設はとても重要な役割をもっているのだそうです》。

《全く知らない土地にやってきたお客様を暖かくお出迎えし、その土地でしか味わえない料理を出し、気持ちよくお風呂に入って頂く、そして宿を出発する朝には温かい出来立ての朝ご飯を召し上がって頂き、その1泊を最高の思い出にする。その1回の宿泊がその観光客にとっての、その土地の良し悪しイメージに繋がるそうです》。

このブログ記事は、次のような言葉で締めくくられている。《サービスとは、期待どおりの事。「おもてなし」とは、期待以上のサービス。だそうです。それは各ホテル・旅館・民宿それぞれの個性でもあり、「経営者の生き様(心意気)=おもてなし」に現れるのだと、渡壁先生はお話くださいました》。

これは良いお話だ。私としては、K嬢のノートの最後にあった「奈良に対する誇りがあるか」という言葉に強く惹(ひ)かれた。誇りを持っていれば、わざわざ奈良市が条例化するまでもなく、自然と知識欲も自信も湧(わ)いてきて、ちゃんとした「もてなし」ができるはずなのだ。ドラマ「ひとつ屋根の下」の名文句「そこに愛はあるのかい」ではないが、愛情も湧いてくるに違いない。

奈良に住みながら、他府県人に奈良の悪口を言いふらす人が絶えないのは、奈良に対する誇りも愛情も持ち合わせていないからだろう。いくら世界遺産が3つあっても、地元の人がほめないような所へなど、観光客が足を向けないのは当然だ。

渡壁さんの話から、奈良に関する知識不足→関心不足→誇り・愛情不足という悪循環が見て取れる。確かに、奈良の人は奈良のことを知らなさすぎる。それが私には悪の根源のように思えてならない。だからこれを逆に回し、誇り・愛情をもつ→関心を持つ→知識を持つ、という好循環に変えなければならない。奈良の悪口を言いそうになったとき「そこに愛はあるのかい」と、自らに問いかけてみるのも一法だろう。

※写真はすべて東向北商店街(奈良市)で、7/17の会社帰りに撮影。奈良では住民と鹿が共生している。
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ハラハラ、ドキドキ 『1Q84』

2009年07月16日 | ブック・レビュー
1Q84 BOOK 1
村上 春樹
新潮社

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先日、村上春樹著『1Q84(いちきゅうはちよん)』 (BOOK1、BOOK2)を読み終えた。こんなぶ厚い長編小説(しかも2巻)を終始ハラハラしながら読み終えたのは、久々のことである(もったいないので、通勤電車の中などでわざとゆっくり読んだ。おかげで3回ほど駅を乗り越してしまった)。

以下に感想を書くが、未読の方のため、ストーリーに関わることには、できるだけ触れないことにする(しかし、わずかに触れざるを得ないので、少しでも気になる人は今日の記事はお読みにならないのが無難である)。

今や『1Q84』 は、文学現象を超えて社会現象となった。わずか6週間で、発行部数(2巻合計)が200万部に達したと思ったら、韓国では版権競争で1億円を提示した出版社も現れたというから、驚きだ。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200907/2009070700038
http://www.chosunonline.com/news/20090710000061
1Q84 BOOK 2
村上 春樹
新潮社

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本書の冒頭に登場するヤナーチェックの「シンフォニエッタ」は、本書発売後3週間で1万2千枚を出荷した。CD化した1990年から今年までの出荷は、たった6千枚だったというのに…。
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/555/san_090701_5553399762.html
※「シンフォニエッタ」が試聴できるセブン&ワイのサイト
http://www.7andy.jp/cd/detail/-/accd/C1074130

すでにWikipediaにも『1Q84』の項目ができた(ただしWikipediaはストーリーに触れているので、大いに注意を要する)。差し支えない範囲内で引用すると

《全2巻が2009年5月29日、書き下ろしとして新潮社から刊行された。刊行前、「予断を持たずに読んでほしい」との村上の意向と、前作『海辺のカフカ』発表の際に「内容を知らずに作品を読みたい」という読者からの意見を受けた新潮社により、一切の内容が明らかにされなかった》。

《執筆はオウム裁判がきっかけであり、地下鉄サリン事件は「現代社会における『倫理』とは何かという、大きな問題をわれわれに突きつけた」。また犯罪の被害者と加害者からの「両サイドの視点から現代の状況を洗い直すことでもあった」という》。

同書の書評をいくつか読んだが、早稲田大学教授・石原千秋氏の「文芸時評」7月号(産経新聞6/28付)が行き届いている。少しストーリーに触れるが、かいつまんで引用する。《僕の観察では、いま電車で「単行本」を読んでいる人がいたら、まず『1Q84』だと見てまちがいはない。そこで、今月は『1Q84』について書いておきたい》。
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/090628/bks0906280831001-n1.htm

羊をめぐる冒険〈上〉 (講談社文庫)
村上 春樹
講談社

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《村上春樹はジャズ喫茶をたたんで背水の陣で『羊をめぐる冒険』を書いたあと、自分にはそれほど多くはないが熱心な読者がいると実感できたと書いている》《『ノルウェイの森』のミリオンセラー達成は、村上春樹にとっては「誤算」だったろう。事実、そのことによって「居心地の良い場所」を失ったと書いている》。

《その後に『ダンス・ダンス・ダンス』という、『ノルウェイの森』以前の村上春樹の読者でなければわかりにくいような小説を書いて、いわばバブルを消しにかかったのではないだろうか。しかし、それは成功しなかった》《それ以降の村上春樹はそのバブルを引きうけるために、試行錯誤を繰り返し始めたように見える。『ねじまき鳥クロニクル』と『海辺のカフカ』は、どう見ても小説としてのバランスが悪い。しかし、おそらくようやく準備ができた》。

《『1Q84』は、内容的には100万人の読者に見合う社会へのコミットメントを示した『アンダーグラウンド』の血を引きながら、形式的には村上春樹お得意のパラレルワールドを使って書かれており、自分にとっては多すぎる読者も、以前からの村上春樹の読者も、同時に引きうける覚悟を決めた小説ではないかと思っている》。

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)
村上 春樹
講談社

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なお「パラレルワールド」とは、《ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す》《「この現実とは別に、もう1つの現実がどこかに存在する」というアイディアは、「もしもこうだったらどうなっていたのか?」という空想を形にする上で都合がよい。したがって当然のことながら、パラレルワールドはSFにおいては非常に人気のある一般的なアイディアであり、登場人物が何らかの切っ掛けで自分が知っているのとは違う現実に迷い込んでしまうといった作品が多く存在する》(Wikipedia「パラレルワールド」)。

再び石原氏の書評に戻る。《小説の構成は、「ふかえり」(深田絵里子)という17歳の不思議な少女の小説『空気さなぎ』が、密(ひそ)かに殺人を請け負っている若い女性青豆と、小説家志望の青年天吾という2人の主人公をしだいに近づけていくところにある》。

《『1Q84』はラブストーリーでもある。しかし、青豆の両親が入信していた「証人会」は「エホバの証人」を思い起こさせ、「ふかえり」が逃れてきた「さきがけ」は「ヤマギシ会」や「オウム真理教」を連想させる。だから、読者はますます「解答」を求めるだろう》。しかしそういう性急な読者に対して、石原氏は「文学というものは役に立ってはいけないのではないかと思う」という岡真理氏(アラブ文学研究者)の言葉を引用して、やんわりと牽制している。

私は本書の「BOOK1」を読み始めたとき「これは『ノルウェイの森』のようなリアリズム小説なのか」と思った。渋谷や新宿で、サスペンス小説もどきのストーリーが繰り広げられるからだ。しかし読み進むうち「あれ、これは変だぞ」と気がつく仕掛けになっている。そのキーワードが上記の「パラレルワールド」である。

本書は決して難解な小説ではない。短いセンテンスはハードボイルド小説のように精彩を放ち、お得意のレトリックが冴え渡る。適度な蘊蓄(うんちく)も、読者の知的好奇心をくすぐる。

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)
スコット フィッツジェラルド,村上春樹
中央公論新社

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私は村上小説の熱心な読者というわけではない。『風の歌を聴け』『ノルウェイの森』『国境の南、太陽の西』『スプートニクの恋人』の4つの長編と、いくつかの短編集および村上訳の『グレート・ギャツビー』を読んだ程度である。それでも「さきがけのリーダーは、『神の子どもたちはみな踊る』のモチーフだったな」とか「『1Q84』の親しみやすい語り口は、『ノルウェイの森』に似ているな」という程度のことは分かる。

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社

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気になったのが「BOOK2」のエンディングである。これは決して完結していない。続き(BOOK3~)があるのではないか。担当編集者の鈴木力氏は「7回通読しましたが、この物語は、この終わり方以外にあり得ない」(「AERA」6/22号)と断言するが、私は続く方に賭ける。

本書で印象に残ったのは「この世界で自分は孤独なのだと思った。おれは誰ともつながっていない」という主人公の独白に見られる「関係性の欠如」と、カルトの問題だ。読売新聞のインタビューで村上氏は、現代における原理主義の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)について触れている。
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20090616bk02.htm

《世界中がカオス化する中で、シンプルな原理主義は確実に力を増している。こんな複雑な状況にあって、自分の頭で物を考えるのはエネルギーが要るから、たいていの人は出来合いの即席言語を借りて自分で考えた気になり、単純化されたぶん、どうしても原理主義に結びつきやすくなる》。

《テーゼやメッセージが、表現しづらい魂の部分をわかりやすく言語化してすぐに心に入り込むものならば、小説家は表現しづらいものの外周を言葉でしっかり固めて作品を作り、丸ごとを読む人に引き渡す。そんな違いがあるだろう。読んでいるうちに読者が、作品の中に小説家が言葉でくるみ込んでいる真実を発見してくれれば、こんなにうれしいことはない。大事なのは売れる数じゃない。届き方だと思う》。

「大事なのは売れる数じゃない」とおっしゃるが、この時代にハードカバーが200万部とは尋常ではない。3600円(=1800円×2巻)の値打ちは十分ある。読んで、決して損はない。ぜひご一読をお薦めしたい。
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「奈良にうまいものあり」(けいはんな市民雑学大学・第15回講座)

2009年07月15日 | 奈良にこだわる
来たる7/25(土)午後2時から、奈良マーチャントシードセンター(奈良市橋本町3-1。もちいどのセンター街入ってすぐ左=東)で、けいはんな市民雑学大学の「第15回講座」が開かれる。
※奈良マーチャントシードセンターの公式ホームページ
http://www.nmsc.or.jp/


上北山村の郷土料理「栃餅の茶粥」(コース料理の一品 7/4撮影)

講師(市民教授)は「SNSけいはんな」(地域版Mixi)のメンバーなどが交代で務めることになっていて、今回は私にお声かけいただいた。なので演題は「奈良にうまいものあり」である。いずれ雑学大学のHPに掲載されるが、ほぼ予定が決まっているので、先に当ブログで紹介させていただくことにした。
※けいはんな市民雑学大学の公式ホームページ
http://academia.keihanna-city.com/


「奈良のうまいもの」(県農林部)創作7品の1つ「黒米カレー」700円(7/8撮影)

雑学大学は、原則として毎月第4土曜の開催で、参加費は100円(資料代として)で、参加資格はない。90分の講演のあとは休憩時間をはさみ、場所を変えて、希望者参加の懇親会がある。今回の懇親会は、築130年の「江戸川ならまち店」を予定している(3千円・飲み放題つき)。申し込み方法など詳細が詰まれば、追って当ブログに掲載させていただく予定である。
※江戸川ならまち店(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/9d9e47d367fbb90a793c42732fb04f88


江戸川ならまち店の「大和野菜のにぎわいランチ」1850円

何しろ6月の講座では、けいはんな地区在住でピアニストの上田賀代子さんが、奈良女子大学記念館で百年ピアノの名演奏をされたので、その後釜は、とてもやりにくい。
※第14回けいはんな市民雑学大学(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/4b21400ba333c22d6bfd635482d22a78



そのかわり今回は、懇親会で「奈良の美味しいお酒と料理」を楽しんでいただく予定である。講演内容も、PowerPointの画像をふんだんに使い、話を聞いて奈良に食べに行きたくなるような「実用的」な情報を中心にしようと思っているので、ぜひ気楽に聞いていただきたいと思う。

7/25といえば、もう学校も夏休みに入り、午後2時はとても暑い時間帯であるが、懇親会では、冷たいビールや美味しい日本酒、奈良の名物料理がお待ちしているので、よろしければ、ぜひお出ましを。

※トップ写真は、花空間けいはんな(京都府相楽郡精華町)で08.6.22撮影。
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月吠(げっぽう)のランチ

2009年07月14日 | グルメガイド
「折衷庵 月吠」(奈良市椿井町45)は、奈良の有名店である。ぐるなびには《隠れ家的な路地裏の店。30名様迄対応のフロア貸切や、6名様~12名様対応の掘りごたつ式のお座敷などで歓送迎会ご予約受付中!》。
http://r.gnavi.co.jp/k474000/

《近鉄奈良駅から徒歩5分、路地裏のひっそりしたお店です。料理は和洋折衷で、飲物も地酒からワインまで全てそろっております。若者からアダルトまでお客様は多種多様、ゆっくりと楽しんでいただけます。今、リーズナブルなコースとしてシェフのおまかせ花コース3,500円とシェフのおまかせ月コース4,500円がおすすめです。前菜を和、洋から選んでいただき、お魚料理、お肉料理と続きます》。



くねくねと曲った路地に面しているが、この路地は、もともと率川(いさがわ)が流れていたところを暗渠(あんきょ)にしてできた道路である。
http://www.narakko.com/gourmet/Y20307.html

この有名店のランチは、意外と知られていない。メインはAランチ750円(日曜休)とBランチ(松花堂風)1300円で、他にはビーフシチューセット2200円、要予約のお昼のコース料理(2500円、3500円、4500円)、要予約の特別松花堂風弁当1800円~などがある。割り箸も、ちゃんと吉野の天削箸(てんそげばし)が出てくる。



トップ写真は7/11(土)のAランチ「鶏ムネ肉のごま風味揚げ&焼き春巻き」、すぐ上の写真は別の日のAランチ「鶏もも肉のカレー煮&エビフライ」。他にも、「ポークソテー&小海老のフリッター」「ハンバーグステーキ&カジキのアーモンド揚げ」(Aランチ)や、「ローストビーフ」「ミニステーキ梅肉ソース」「帆立とカジキの西京焼き」(Bランチ)などがある。スープ・味噌汁、パン・ご飯を選ぶことができる。A・Bランチのメニューは、一覧表になっていて持ち帰れる。計画的に訪れることができるので、とても重宝する。


ポークカツとサツマイモのフォンダン(砂糖菓子)、ジャガイモの冷製スープ

お店のオーナー兼シェフの中谷英雄さんは《1948年7月、奈良市生まれ。早稲田大で劇団「自由舞台」に参加、その後「大駱駝艦」に入団。2000年6月、「奈良小劇場(仮称)設立準備委員会」を発足。若手映像作家の作品発表などを企画してきた》という経歴の持ち主である。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nara/kikaku/038/14.htm


これはトップ写真と似ているが、「豚ロース」のゴマ揚げとポテトのグラタン

近鉄奈良駅からは、小西さくら通り商店街をまっすぐ南下し、三条通を越えて椿井小学校手前の時計屋の角の左側(約5分)。JR奈良駅からは三条通を東へ進み、やすらぎの道を越えてシネマデプト友楽西館(モスバーガー)の角を右に折れ、時計屋の角の左側(約15分)。ランチといえども手抜きしない本格派、ぜひいちどお訪ねいただきたい。
※月吠の公式ホームページ
http://www10.ocn.ne.jp/~geppoh/index.html
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観光地奈良の勝ち残り戦略(28)神戸っ子の評価

2009年07月12日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
「奈良のむらづくり協議会」をご存じだろうか。《住む人と訪れる人との間に信頼関係が醸成され、各地域の自律発展につながる「むらづくり」を進めていくために、奈良にこだわりをもち、積極的な活動を展開されている方々の総力を結集した「奈良のむらづくり」プロジェクトを実行する》ことを目的に、07年2月に設立された。「むらづくり」は「地域おこし」のことだ。代表幹事は、村田武一郎氏(奈良県立大学教授)である。
http://www.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/cgi-bin/profile/data.cgi?number=5036

同協議会の活動事例としては《(1)奈良のモニターツアー 奈良県東部・中部の「自然」「ふるさと」に焦点を当て「従来の奈良」のイメージを変える新しい切り口の「奈良旅行」を全国に向けて提案。モニターツアーを実施 (2)奈良県東部・中部の山間地域における工房街道づくり 旧室生村から川上村にかけて、工房が多く立地しており、「工房街道」として認識してもらえるように、工房街道ウィーク、工房街道ツアー等を開催 (3)交流の促進 奈良にこだわりをもち、積極的な活動を展開されている方々の総力を結集するための交流を促進するためのイベント等(シンポジウム、物産展)を開催》というものである。
http://www.naranomura.jp/


神戸花鳥園(ポートアイランド南駅 07.3.10 撮影)
 
同協議会は、過去に2回「奈良観光の評価に関する調査」を実施・公表しているが、その3回目(2009年春期調査結果)が、先週発表された。県下のマスコミは奈良市長・市議選の報道で多忙なのか、まだ報道していないし、Webでも出回っていないが、興味深い結果が出ているので、いち早く当ブログで公表させていただくことにする。

このアンケート調査は《奈良・神戸が私鉄により直結したことから、兵庫県在住者の奈良への評価情報(評価できること、改善すべきこと)を得、今後の奈良の観光交流の改善に資することを目的に実施した》というものである。私も先日「快走!阪神なんば線」というブログ記事で兵庫県からの来県客が増えたことをお伝えしたが、今回の調査では中身を詳細に調べて分析されている。
※快走!阪神なんば線(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/638331bc0c14729ad99e506230679a1d


神戸花鳥園(同)

ただ、結果の分析(コメント部分)は、村田武一郎氏(神戸市在住)一流のシニカルな論調で貫かれていて、私が(素直に)結果数字から受けた印象とは、ずいぶん違う。マスコミは村田氏のコメントをそのまま載せるのだろうが、当ブログでは《 》で引用した以外の部分は、私の意見を書かせていただくことにしたい。
※「奈良観光の評価に関する調査」2009年春期調査結果
http://mail.google.com/mail/?ui=2&ik=15d665318f&view=att&th=1225eca9bbac6c55&attid=0.1&disp=vah&zw

この調査は《近鉄奈良駅前広場において、4月25日(土)~5月6日(水)、兵庫県下へ帰る観光客にアンケート調査票(ハガキ)を手渡し、郵送回収により、334人から回答を得た(兵庫県在住者への配布4,154票、回収率8.0%)》《回答者の居住地は、神戸市が約45%を占め、神戸・阪神間で約77%であった。なお、加古川市・明石市・姫路市など阪神電鉄と相互乗入れしている山陽電鉄沿線からも10%超が来訪している》。


神戸花鳥園(同)

Ⅰ.観光消費額は伸びている。
《日帰り客一人あたり消費額は、7,045円にものぼった。この金額は、従来の奈良の観光調査における同消費額3,150~3,600円をはるかに上回る。神戸市の日帰り客一人あたり消費額が約8,800円であり、日帰り観光にその程度のお金を使うことが普通になっている兵庫県民を調査対象としたことから出てきた数値であり、神戸との直結は、地域経済に好影響をもたらしていると考えられる》。

Ⅱ.「もてなし」は不足気味だが、大した問題ではない。
《奈良観光の「全体的満足度」は、「とても満足」約22%、「ほぼ満足」約59%で、回答者の約81%が満足しているが、「もてなし対応」については、「とても満足」約15%、「ほぼ満足」約51%で、満足している回答者の割合が約66%》。全体的満足度に比べてもてなし満足度は15ポイント低いので、やや「もてなし」が不足という感じだ。しかし、過半数が満足しているし、もてなしが「不満」は6.1%(全体の「不満」は4.6%)に過ぎないので、大きな問題ではない。なお《「飲食店・土産物店」の「もてなし」は、神戸と奈良で「かわらない」が約59%で大勢であるが、「神戸が上」の約24%に対して、「奈良が上」は約17%》。


奈良ホテル玄関(07.7.25撮影)

Ⅲ.史跡などに高い評価
《「神社仏閣・公園・史跡・博物館等」は、回答者の約84%が「奈良が上」と評価しており、「神戸と違って歴史の重みが感じられる」などの意見が挙げられた》。
なお《「見どころの多さやまちの雰囲気」は、「神戸が上」の約20%に対し、「奈良が上」は約45%あり、神戸にはない「まちのゆとりや佇まい」が評価されている》。

Ⅳ.飲食店・土産物店の値段は安いが、中身の向上が必要
《「飲食店・土産物店」の「価格」は、神戸と奈良で「かわらない」という回答が約48%あるが、「神戸が安い」の約23%に対して、「奈良が安い」は約30%あり、神戸に多いオシャレな飲食店等の価格の高さを反映していると言えよう》。
《「飲食店・土産物店」の「内容」は、回答者310人のうち180人(約58%)が「神戸が上」と評価しており、「奈良が上」との評価は10%にも達しなかった》《奈良は、神戸に比べ人口・都市集積が低く、また、新規参入しにくい風土があり、多様で質が高い飲食店等が揃うことは期待しにくいが、新規参入を容易にするインキュベータ施設の整備により、飲食店等の質・量を着実に確保していくことが望まれる》。


旬彩(しゅんさい)ひよりのご主人・尾崎さん。味ももてなしも、抜群のお店だ(5/21撮影)
※旬彩ひより(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/7e4e182c63653809d01d959153c80ca2

Ⅴ.特徴的な意見
調査結果に掲載された「奈良に対する代表的な声」および「奈良での訪問施設とその評価」から、私の目を引いたものをピックアップしてみる。
1.良かったこと
(1)全体・もてなし対応
《人々がせかせかしておらず、穏やかに行動されていて良かったです》《県庁前広場のマジックショーが良かった。/県庁が開放されていて係員が最高》《タクシーの運転手さんが皆とても親切でした。/気軽に接される》。

(2)飲食店の内容(全文)
《葛をつかった料理が神戸にはあまりないのでおいしかったです。/出されるお茶もおいしく食事もホッとする。昔からのひなびた感じがありとても良かったです。/テーブルの上にあった抹茶ドリンクがものすごくおいしく、良かった。/柿の葉ずしとソーメンのセットがおいしかった。お茶などもこちらから言わずに入れてくれた。/静か。一人でも気兼ねがない。/茶粥がおいしかった。雨が降って寒く、アツアツのお粥をおかわりできるのがうれしかったです。/奈良らしい建物とそれにマッチした食事内容。/メニューの説明をしてくれた(アレルギーなど)/風情があった。/食べ方を説明してくれたことは良かった。/京都のように現代化されていない昔ながらの優しい味が良い》。


旬彩ひより名物の蒸し野菜。田原本町の畑から直送される(同)

2.改善すべきこと
(1)全体・もてなし対応
《歴史の見せ方が京都よりヘタだと思う》《京都と比べると食事する所が少ない(割烹料理屋とかフランス料理等)。/駐車場のあるレストランが少ない》《GWで混んでいて食べるところに困りました》《観光案内所が無いし、観光バスのチケット売り場の人の接客が悪い》《「奈良まち散策マップ」に某所で「抹茶をいただけます」と書かれていましたが、これは無料でいただけると勘違いします。記載には注意してください》。

(2)飲食店の内容(全文)
《店に個性はない。奈良ならではの飲食物がほしい。/味もあまり特徴がない。/ランチやカフェはそれぞれ良い所があるのですが、神戸の方がオシャレ。/もう少しオシャレなカフェや店が多くなれば良い。/奈良は和のイメージが強いが食事は平凡だった。/味はおいしいが内容的には満足していない。神戸で2,800円だせばもっと満足する。/お昼の食べ物のメニューが少ないと思う。/奈良らしいものが少ない。/驚きを感じさせる店には残念ながらめったにめぐり会えない。/新しい商品や、ここにしかないというものが分かりづらい。/神戸は、神戸の雰囲気に合った料理・喫茶ともに観光客を喜ばせていると思う。/駅前でお弁当を買おうと思っても思うものがなかった。神戸はデパート地下で買える。/はじめに水を出してもらったのですが、コップがワンカップのコップみたいだった。/注文して出てくるまでに時間がかかった。/子ども用の椅子がない》。


日本料理 志まづ・夢しるべ風しるべ店の葛ご膳(ランチ・2100円)。吉野葛がたっぷり(08.7.12撮影)
※「夢しるべ風しるべ」の歩き方(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/e949ebc60f825f141bc3770fe75557cb

ざっと調査結果をまとめると、以上のようなことになる。「調査結果の要点」には《この調査では、神戸へ行きなれた人たちから、奈良が一定の評価を得たと理解できるが、今後とも彼らに奈良訪問を続けてもらえるかとなると、疑問が生じる。観光行動のなかで、いまや重要な位置を占める飲食店・土産物店の内容の評価が低いからである》。

《神戸と奈良は、歴史過程も発展過程も極端に異なるまちである。双方の市民が、双方の良さを認識し合い、交流が深まること、奈良の飲食店・土産物店においても、神戸からの刺激による質の向上へと展開していくことが望まれる》。

「もてなし」は巷間言われているほど悪くなかった。それは県の「奈良・もてなしの心推進県民会議」会長をお務めになる村田氏ご自身が《従前の奈良は、来訪者に無関心で、その思いやニーズに応えようとは考えていませんでした。来てもらってうれしいという気持ち、気づかいや心くばりは、他地域に比べ劣っていたと言わざるを得ませんでした。しかし、この県民会議の発足から4年、県民・委員各位のご参画とご協力により、奈良のもてなしが日々向上していると感じます》とお書きの通りである。
※「奈良・もてなしの心推進県民会議 通信」第6号(08年10月)
http://www.pref.nara.jp/kenmin/motenasi/tsushin/tsushin6-1.pdf


山口水産のランチ600円。ご飯も漁師汁(魚のアラ汁)も、お代わり自由(4/9撮影)
※海鮮居酒屋「山口水産」(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/d28beefb19d347c72d9f0ba608b66de6

やはり問題は「飲食店」だ。Ⅴ.の(2)では、調査結果に掲載された全ての文章を紹介したが、なかでも「奈良ならではの飲食物がほしい」「奈良は和のイメージが強いが食事は平凡」「驚きを感じさせる店には残念ながらめったにめぐり会えない」「ここにしかないというものが分かりづらい」という意見には、グウの音も出ない。見せ方や料理そのものに工夫がなく、地場産品も使っていない、という私が感じていた不満が一挙に表面化した、という観がある。

奈良には、上記の写真で紹介したような美味しい食べ物屋さんが多いのだが、中には路地裏とか住宅地の中などにあって、場所が分かりにくい店があることも否めない。ガイド本には、十年一日のごとく同じ老舗がそのまま掲載されている。PRや情報発信が不足している店も多いので、観光客がそれを見つけ出すのは至難の業である。だから当ブログも存在価値がある訳だが、遷都1300年祭を控えて、これは情けない状況である。
※「ならまちで昼食を」シリーズ(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/327aef09af4dba618f5cf3a6273b477d

奈良で最強のグルメサイトは、naranaraさんの「奈良グルメ図鑑」で、私も愛用しているが、どなたかこれをうまく編集して、手軽で便利なガイド本に仕立てていただけないものだろうか。1300年祭記念事業として、十分通用する内容であるが…。
※奈良グルメ図鑑
http://www.eonet.ne.jp/~nara-gourmet/

※トップ写真は、奈良公園内の浮見堂(07.7.25撮影)
コメント (7)
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