エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

「ゆく秋の静寂を偲ぶ」

2006-11-08 | エッセイ
 
今日11月8日は、私の新しい誕生日だ。満3才になった。一度死の淵を見て来たが、今元気になって静かに過ごしている幸せを思う。はからずも妻と同じ誕生日となった。静かに二人でささやかなお祝いをした。食後、コーヒーを沸かし、リンゴ、柿を剥いた。
 いろいろ願いはあるが、健康第一に穏やかに過ごしたいと思っている。

 今日のエッセイ
ゆく秋の静寂を偲ぶ
 紅葉した木々を前景に、白亜の校舎の彼方に磐梯の山並みが美しい。家の近くの、会津大学短期学部周辺に晩秋を楽しんだ。この校舎前の小さな林は、ときどき孫を連れて歩く楽園で、たまに私の憩いの野外書斎となることもあった。
 昨夜来の風雨に、トチノキの大きな葉はほとんど散ってしまった。今朝は、雨上がりの秋の陽にソメイヨシノの紅葉がまばゆいほど鮮やかに美しかった。その織りなす錦はアントシアニン、カロチノイドなど自然の化学変化の贈り物だが、一枚一枚に違う鮮やかな配色は美しく、特に黄から赤へのグラデーションはたとえようもない。
 グランドの水たまりで赤とんぼが打水産卵を繰り返し、腰を下ろした私の腕や膝に何匹もが親しげに止まり、羽を休めた。静寂に赤とんぼの羽音が聞こえるようだった。
 あれから何年の歳月が流れたのだろうか、芝を駆けめぐる孫が、ふと私の子供達の姿と重なった。
 はらはらと散り急ぐ紅い葉をみつめながら、ゆく秋の静寂を偲んだ。