エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

受賞小旅行

2006-11-15 | 旅行


 11/15 はからずも、ささやかな表彰を受けることになった。体調も心配だったが、折角なので、産業教育功労者表彰伝達式に出席することにした。
 自分の打ち込んだ半生の足跡を振り返り、見つめてみたいと思ったからだった。

 ○ 前日は飯坂温泉に泊まることにした。午後三時過ぎに妻と土湯回りで福島へ向かった。中ノ沢までの晩秋の風景は、峠が近づくにつれて一気に冬に変わっていった。数日前の雪が道路の端に残り、すっかり葉を落とした木々が冷たい風をいっそう寒々感じさせた。夕暮れが近い木々に白樺の幹が特に美しく見えた。

 ○ 当日は昼食を兼ねての表彰伝達式だった。何年ぶりかの背広、ネクタイで旅館を出た。リンゴ畑を眺めながらフルーツラインを走らせ、途中、直販所でサンフジ、王林などを、また白菜、葱などの野菜を沢山求めた。
 受付までの時間、会場近くの旧日本銀行の福島支店長役宅:御倉邸を見学した。
 絹の集散地として栄えた福島市には、東北で初めて日本銀行が設置され、阿武隈川河畔にある歴代の支店長宅は、現在一般に公開されている。静かな落ち着いた庭から、光る阿武隈川が美しく見えた。円筒状に苅られたサザンカの大木が、うすピンクの大きな花を咲かせていた。所々に、松が美しく、根元にはシャリンバイの実がたわわに実っていた。
 式の最中、妻はもう30年ぶりになるか、すっかり変わった福島の街を散策、ショッピングに自分だけの世界を過ごした。

 ○ 帰路も土湯回りにした。土湯峠手前の「原郷のこけし群 西田記念館」を見学した。こけしの蒐集、研究、指導者西田峯吉のコレクションで、もう数十年も近くを通過するだけで、何時か見たいと思っていた。
 東北地方独特の湯治の習慣と木地師の存在が、こけしを発生させ、東北地方の厳しい風土が育んだこけしが所狭しと並んでいた。現在東北6県に11系統のこけしが見られるという。木地は昔はミズキやマンサクなど利用価値の低い材を用いていたが、今は、木地の美しさを見せるためサクラやツバキ、ナシなどの有色材を用いているとのことだ。
 同時に展示されていた写真家、矢田金一郎の作品に目を奪われた。七が宿を中心とした
今はない、過ぎ去ってしまった山村の、貧しいが豊かな生活が克明に撮されていて、強い郷愁を覚えざるを得なかった。
記念館からは、真っ白に冠雪した吾妻小富士や一切経山の雄大な景色が広がっていた。麓の晩秋の紅葉とのコントラストが何ともいえず美しかった。

 ○ 秋の錦の彩りの世界は、今、無機質の、水墨の世界へと移りつつある。木々が葉を落とし、冬が景色を支配していた。ダメを押して雪の美しさが厳しい冬の始まりだとおもった。土湯峠は沿道に積雪、木々が一面の銀世界と変わっていた。
もうタイヤ交換をしなければ峠越えは無理となった。いよいよ本格的な冬の到来だ。