透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「住宅の射程」を読む

2006-11-04 | A 読書日記


住宅の射程/TOTO出版

 書店でこんな本を見つけたら、中身なんて確認しないで買ってしまう。この本はギャラリー間20周年を記念して今年の1月から2月にかけて開催された連続講演会「21世紀の住宅論」の全記録だということが自宅に戻って初めて分かった。

寸評(にもならないか・・・)

〇磯崎新「住宅は建築か」講演録なのにどうもよく分からない、私には磯崎さんは難しすぎる。
〇安藤忠雄「すまいについて考える」安藤さんのキーワードは闘い。
〇藤森照信「二十世から二十一世紀への日本のすまいの流れ」全体像を概観して簡潔に説明してみせるあたりはいつものことながらさすが。

表参道ヒルズはほとんど要塞的に自閉していると見学者の感想を紹介している。住吉の長屋とその点で共通していると以前私も指摘した。伊東さんの「せんだい」のチューブについては「内化した外」、チューブの中に外が流れ込んでいると指摘。確かに「せんだい」をトポロジカルに考えると面白い。

〇伊東豊雄「今、住宅とは何か?」最近家の機能が分化していると指摘し、その傾向が体現された住宅として西沢立衛の「森山邸」を紹介している。因みに藤森さんはこの住宅を新しい「分離派」の最初の作品としてとりあげている。なるほど分離派ね(むかし登場した分離派とは違うことに要注意)。

塩尻のプロポの時にも書いたが、藤森さんの表現に倣えば最近の建築は「分離」する傾向にあるようだ。

やはりときどき建築の本を読まなくては・・・。




ガレリアな空間

2006-11-04 | A あれこれ


〇 ガレリアな空間

ガレリア(イタリア語)、ガラスの大屋根を架けた回廊のこと、英語ではギャラリー。日本でもガレリアを模した建築があちこちにある。

ここは松本郊外のショッピングセンター、アイシティ21。専門店街と井上(デパート)との間にガレリアな空間が創られている。施設内部はこのガレリアを主動線として2次動線をここから直角に枝のようにつくっているので分かりやすい。この写真を撮った先週末には、この大きな吹き抜け空間の1階で小さな子供向けのイベントをやっていた。ここにはオープンカフェも書店もある。ただしあまり利用することはない。大音響でイベントが行なわれると、落ち着いて本を選ぶ気にもならないし、コーヒーをゆっくり味わおうという気持ちにもならない。吹き抜けの空間だから音が施設内に響きわたるのだ。
特に客層を限定している施設ではないから、子供向けのイベントが行なわれることも当然あるだろう・・・。

日本は騒音だらけのうるさい国だと指摘されて久しい(この本の出版は96年)。騒音そのものを「賑わい」の演出と理解する向きもあるようだ。



ここには6つの映画館がある。ときどき観る。そのあとゆっくりコーヒーでも飲むことができればいいのにな、と思うのだが、既述の理由でできない。 尤もガレリアを街の賑わいを演出する空間なのだと理解すれば、そこで静かに過ごすということは望むべきではないのかもしれない・・・。