■東京 建築観察記 4
一葉記念館 柳澤孝彦 (061125)
柳澤孝彦氏の作品は何ヶ所か見学しているが、雑誌などで文章を読む機会が少ないから氏の建築理念についてはほとんど何も知らない。
『建築家のメモ メモが語る100人の建築術』丸善 に収録されている氏の「メモ」には**建築を一要素とする環境としての風景は、地勢と建築のデザインの双方を、重ねあわせたところにこそ開かれる。**と書かれている。
**私は常々、建築100%、ランドスケープ100%、合計200%と思い続けている。** と柳澤氏は文章を続けている。
一葉記念館が立地する台東区竜泉にはいわゆる路地空間や地域のコミュニティが今でも残っている。柳沢氏がこのような環境との調和を意図して計画したことを遠景から覗うことができる。伝統的な連子格子によってファサードのデザインを抑制して、周辺環境によく馴染む落ち着いた雰囲気の創出に成功していることによる。
建築に近づくとアルミ製の格子がモダンな印象に変わるが、縁甲板を型枠にしたコンクリート打ち放しの外壁(柳沢氏が好んで使う出目地付き)とよくマッチしている。ただ1階のスチール製(だと思うが)の黒い格子と外壁との納まりはなんとも不自然で、竣工後に追加設置したような印象だった。受付で訊いて、当初から計画されていたということを確認したが・・・。
この記念館の主人公、一葉については機会があれば書きたいと思っている。
ところで、『建築家のメモ』で柳澤氏は「中川一政美術館」をとり上げている。川上弘美の最新作のタイトルにもなった「真鶴」にこの美術館をいつか再訪したいと思う。
10年以上前に訪ねた時のパンフレット