透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

1123

2006-11-23 | A あれこれ

 **君の新しい記念館がこの秋に完成するそうですね。設計したのは柳澤孝彦さんという東京藝大出身の有名な建築家。美術館をいくつか手がけたベテランだからきっと素敵な記念館ができると思います。ぼくも是非見学に行きたい。記念館のオープンが11月23日だとしたら、君はどう思うだろう・・・。**

君にこの手紙を書いたのは、ここ信濃が春爛漫の四月は二十二日のことでした。あれから七ヶ月。小雪も過ぎて早、冬の気配が感じられます。手紙の最後にはこんなことを書いていたんですね。僕は君の記念館はもしかしたら今日、君の命日に開館するのでは、と思っていたのです。でももう開館したんですね。

どんな建築だろう・・・。まだ雑誌には掲載されていないようだけれど、先日ようやく写真を見つけました。正面はどうやら連子格子、光と影が織り成す静謐な空間・・・。 

この記念館の所在地、台東区竜泉は、**「たけくらべ」の素材を得た地であり、その歴史のなかで培われた江戸から昭和にかけての雰囲気が今も濃密に感じられる地域です。**  と、この「公共建築ニュース」に紹介されています。

近々、出かける予定です。僕は美術館や記念館に出かけても展示作品より、建築の方にどうしても目がいってしまうけれど、今回は展示品もじっくり見学したいと思います。そう、君の達筆な筆字の手紙などを。それにしても君は、1123(いいふみ)をたくさん残してくれましたね。





 


デザインの優先順位

2006-11-23 | A あれこれ


          ○ ティファールのHPより

確か先週の土曜日(11/18)、朝日新聞の朝刊にティファールの全面広告が載っていた。**取っ手がとれると、キッチンは美しくなる。**というコピー。
**取っ手が取れるから、狭いスペースでも重ねてコンパクト収納、だからキッチンがスッキリきれい。**という説明文がついていた。

他にもお皿のようにすみずみまでキレイに洗える、余った料理はそのまま冷蔵庫で一時保存できる、と取っ手がとれることの利点が挙げられていた。なるほど、確かに。 鍋には取っ手、この常識はティファールに取っ手、おっと、とって非常識(?)ということなんだろう。

スタッカビリティ、隙間無く重ねることができる、ということは折りたたむことができることと共にコンパクトに収納するための条件だ。その好例として椅子を挙げることができる。会議室などで使用する大量の椅子はコンパクトな収納を可能にするために、このどちらかの条件を満足している、まず例外なく。

ふだん収納しておく椅子のデザイン(設計)の優先事項は「コンパクトに収納できること」なのだが、鍋の場合はどうだろう。料理の際の持ち運びのためには取っ手が必要、だからきちんとした取っ手をつける、そのことにのみ注目すると取っ手が着脱できる鍋は発想できない。鍋を使うとき、使わないとき、さてどっち。

デザインの条件の項目やその優先順位を変えて考えると、全く違ったものが生まれることがある・・・。例示はしないが建築の設計にも、もちろんそのことはあてはまる。

鍋に話を戻そう。雑誌に紹介されているキッチン、見事になにも写っていない。「スッキリと美しく」だ。その一方で、カントリー風とでもいうのだろうか、フライパンや鍋、食器が美しくディスプレイされたキッチンが紹介されることもある。ウッディなテーブルには白やピンクのテーブルクロス・・・。前者は建築の専門雑誌に、後者は主婦などを対象にした雑誌に多い(ような気がする)。

キッチン、どちらの状態を好ましいと思うかは、人それぞれだろう。ところでうまい料理が出てきそうなキッチンはどっち? 後者、私はそんなイメージをもっている。