透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

スパイラルな表参道

2006-11-28 | A あれこれ

■東京 建築観察記 3

表参道ヒルズについて設計者の安藤さんは、新建築に寄せた「公共という主題」という文章を**とにかく難しい仕事だった。**と書き出している。企画から完成まで12年にわたるプロジェクト、100人近い権利者との打ち合わせ、その苦労を**冗談でなく100倍のエネルギーが要った気がする。**と書いている(06年5月号)。困難な仕事をまとめた安藤さん、闘う建築家の面目躍如といったところだろう。



さて、この表参道ヒルズ観察記。これは、表参道ヒルズの内部の様子を写したものだが、もう少しアングルを工夫すれば、どこかのショッピングストリートに見せることが出来そうだ。

安藤さんはこのプロジェクトの経緯について**表参道と建築空間を繋ごうという話が、建物の中にもうひとつの街路を、もうひとつの街をつくろうという話に発展していった。**と紹介している。そのことは、この文章を今日再読するまで知らなかった。そういうことだったのか・・・。この内部空間の構成がよく分かった。表参道ヒルズは建築の中に街をスパイラル状に創ったところなのだ。そのように捉えると上の写真がどこかのストリートに見えて当然だ。そして下の写真は、「内部空間化されたスパイラルストリート」の様子をよく示している。



休日ともなるとこのショッピングストリートを設計者の目論み通りに大勢の人たちが「回遊」する。先日私も回遊したがなんだか息苦しかった。あまりに閉鎖的なのだ。せめて一ヶ所、黒川さんがやったように抜けていたら、そして表参道のケヤキの紅葉が見えたら・・・。そのためだったらもう少し高層にしても良かったのに、私はそう思う。



それが無理だとするなら、安藤さん、吹き抜け空間の上に屋根など造らないで欲しかった、「住吉の長屋」のように。

もうすぐクリスマス、この吹き抜けに雪が降る・・・、最高の演出だと思うけどな。開閉式の屋根という手だってあったじゃないですか。 クリスマスのころ東京には雪なんか降らないか・・・。


 


開いた建築、閉じた建築

2006-11-28 | A あれこれ

■東京 建築観察記 1

① 日本看護協会ビル 黒川紀章(061126)

表参道に面する大きな屋根つきの開口。ビルの向こうに緑が見えるが、これも通りからのビスタを意識して計画的に植栽されたもの。階段の上はカフェテラスになっている(写真②)。


② 紅葉したケヤキの向こうに見えるのが表参道ヒルズ。


③ 表参道ヒルズ 安藤忠雄(061126)


④ 表参道ヒルズの裏側へ抜ける通路から見る。向こうに見えるのが日本看護協会ビル。

このふたつの建築は都市(と表現するのが大袈裟なら、表参道)との関係が対照的だ。日本看護協会ビルは黒川紀章の設計だか、私的な領域と公的な領域との間に公私の中間的な領域を設けている。日本の伝統的なすまいに見られる縁側のような空間なのだと黒川氏はこの中間領域を説明し、その必要性について早くから唱えている。約30年前に竣工した福岡銀行本店にもこの考え方が適用され、ここと同じような大きな屋根(大袈裟だと思うが、当時アーバンルーフと黒川氏は説明していた)付きの空間が計画されている。随分昔に九州まで見学に出かけた。

都市と建築との「共生」のために必要な空間ということなのだろう。日本看護協会が掲げる社会への貢献という理念とも合致している。

一方、安藤忠雄設計の表参道ヒルズは表参道に対して閉じている。このことは既に書いたが、大規模な建築の割には出入口が小さい(写真③)。ただしこれは意図的なものだろう。

向かい合っているふたつの建築、表参道との関わり方が全く対照的なことは写真だけでもよく分かる。私は黒川氏の考え方に共感する。

安藤さんは自閉する建築が好きなんだなと改めて思った。あるいはクライアントの要望を受け入れたのかもしれないが、「表参道との空間的な繋がりを考えて欲しかった」と思う。表参道ヒルズについては稿を改めて書く予定。