■ 6月のブックレビュー、読了本7冊。
『見えがくれする都市』槇文彦他/鹿島出版会SD選書
今から30年以上も前に出版された本だが、いまだによく読まれているようだ。名著と言っていい本だろう。Ⅴ章 槇文彦の「奥の思想」という論考が一番知られていると思うが、今回再読して興味深かったのはⅣ章 大野秀敏の「まちの表層」だった。
日本では住宅地において、道路(公的空間)からいくつもの薄い層(例えば竹垣、のれん、格子、障子など)を重ねて次第に住宅内部(私的空間)へ空間の質を変えているが、このことについていくつかのタイプに分類し、まちの表層について論考する。これがヨーロッパだと厚い層、つまり壁1枚で行われる。「層」という視点で街の空間構成を観察して歩けば面白そうだ。
奈良井宿 撮影060708
『ま、いっか。』浅田次郎/集英社文庫
エッセイ集。
「目だけ美人」の氾濫 **いかに目鼻が秀でていようと、肌が美しかろうとパーツの配列が正しかろうと、口元が悪ければ全てが悪い、とまで言える。(中略) 絶世の美女と謳われる女優さんなどは、洋の東西を問わずこの口元が美しいことに例外はない。(中略) まさしく口元の良さこそ「七難を隠す」のである。**(53、54頁) この指摘が印象に残った。
先日、ロンドンオリンピックの女子バレー選手、確か12人が選出されたと新聞に出ていたが、選手たちがコートに立つと途端に美しく輝いて見えるのは、口元をギュッと引き締めているからかもしれない。そう、みんな口元美人になるのだ。
『はじめての〈超ひも理論〉』川合光/講談社現代新書
『重力とは何か』大栗博司/幻冬舎新書
時間や空間に関する最先端の理論。共に物理好きの高校生や大学生に分かりやすく(こちらの理解力も大いに関係するが)説く。
『重力とは何か』はよく売れているようで、今日(1日)の新聞の読書欄を見ると、八重洲ブックセンター本店の売れてる本10冊に入っていた。
光の波と粒の両義性を「ルビンの壺」、1枚の絵が壺にも向き合うふたりの横顔にも見えるという例の絵を取り上げて説明するなど、著者の喩えや説明は実に巧みだ。
『東京レスタウロ 歴史を活かす建築再生』民岡順朗/ソフトバンク新書
「レスタウロ」は聞き慣れない言葉だが、副題の「歴史を活かす建築再生」という意味だと理解していいと「はじめ」に書いてある。東京のレスタウロ50の紹介。
下の写真は松本のレスタウロ。古い薬局をカフェ、ギャラリーへリノベーション(用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりすること)した。
『蜩ノ記』葉室 麟(はむろ りん)/祥伝社
感涙。今年前半のベスト作品。
『建築と言葉』小池昌代・塚本由晴/河出ブックス
小池昌代という名前を見て購入、読了。ふたりの対話、よく分からなかったが、ま、いっか。
さて、7月。今年後半はどんな本と出会うことができるだろう・・・。