■ 『事故のてんまつ』臼井吉見/筑摩書房の再読を終えた。
小説というかたちをもって川端康成の自死の背景を追求した作品。遺族の訴訟や他者からの圧力もあったそうで絶版になっているから、あまり具体的に内容を記さない方がいいのかもしれない・・・。
1箇所のみの引用に留めておく。先生にどうしてもと乞われてお手伝いさんになった主人公による分析だ。
**先生は母の胎内にあること七か月の未熟児だった。その母にも、三つのとき死なれてしまったのだ。先生と生母とのつながりは、そんなにもろく、はかなかったのだ。だからこそ、先生の無意識の世界では、生涯を通じて、母につながろう、ゆくえの知れない母の姿を追いかけようと必死になったにちがいない。それが先生の文学の動力だったのかもしれないと思った。母の愛への飢えが、若い女性への根強い執着となって現れたのではないかしら?**(145、6頁)
過去ログ1
過去ログ2
なるほど、確かに例えば「山の音」には息子の嫁に恋心をゆさぶられる老人の心模様が描かれている。
これを機に川端康成の作品を再読するか・・・。