『建築の大転換』 伊東豊雄 中沢新一/ちくま文庫
■ 先週の土曜日(7日)に久しぶりに松本駅近くの書店、丸善に出かけた。
高村 薫の『空海』新潮社を買い求めるためだったが、地階の文庫と新書のコーナーもざっと見て回った。その時、『建築の大転換』 伊東豊雄 中沢新一/ちくま文庫を見つけた。
『銀の匙』 中 勘助/岩波文庫を中断して『空海』を読み、そしてこの本も読んだ。
中沢新一さんは本書の中の「建築のエチカ」という文章で、チベットの仏教寺院のありようについて、**自然からできるかぎり祝福されていなければならないのである。**(272頁)と書き、続けて**彼らは自然のなかにおかれる寺院という建築が、人間の作るものとしてどうしても自然に同化しきれない部分を持ってしまう運命にあることを知って、だから人間の精神の作り出すものは自然のプロセスが産み出すものより優れているのだ、とその優位を誇ったりするのではなく、可能なかぎり自然から祝福されたものであろうとした。**と説いている。
伊東豊雄さんは「おわりに」のなかで3.11以降、自然から祝福される建築という言葉の持つ意味は重いと述べている。
この言葉は本書のキーワード、伊東さんが舵を切って向かうべきとする建築のありようを示す言葉なのだろう。