■ 今年読んだ本を「ブックレビュー」で確認すると、今月の5冊を含めて58冊だった。以前はもっと多かったが、ここ何年か、減っている。それでも宇江佐真理の作品を集中的に読んだ結果この冊数になった。その中から印象に残った今年の3冊を選んだ。
『海辺の光景』安岡章太郎/新潮文庫
初読は1976年の10月。実に40年ぶりの再読。海辺の病院に入院中の母を見舞う信太郎。看病しながら病室で過ごした9日間。美しい光景を見ながら、来し方を回想する。
日本文学の本質は作者の孤独感が投影されているところにあるのかもしれない。いや、これは極論か。ならば、僕はそのような作品に惹かれると改めておく。
『利己的な遺伝子』リチャード・ドーキンス/紀伊國屋書店
本書は全13章から成る分厚い科学書。本書のことを知ったのは学生の頃だった。なぜそのころ読まなかったのか今となっては分からないが、その後ずっといつか読みたいと思っていた。今年ようやくその願いを果たすことができた。
生物の諸々の振舞いを遺伝子の生き残りという観点から読み解いたもの。生物ではなく、遺伝子を主人公というか、主体に据えて生物の進化を捉えてみようという試み。読んだというだけで満足。
『火星の人』アンディ・ウィアー/ハヤカワ文庫SF
予期せぬアクシデントでひとり火星に取り残されてしまった、主人公。彼は常にポジティブシンキング、実用的な科学知識を活かして火星で生き延びる。そして地球に生還するというシンプルストーリー。久々に読んだ海外の作品。
今年は宇江佐真理の作品を髪結い伊三次捕物余話シリーズ他、何作も読んだ。このことも記しておきたい。
今年も残すところあと1週間、年越し本の『吾輩は猫である』を読み始めた。来年はどんな本との出合いがあるだろう。