『国宝消滅』デービッド・アトキンソン/東洋経済新聞社
■ 日本人には自国の伝統文化の特質やすばらしさを、外国人に指摘されて初めて気がつくということがあるようだ。このことはいくつもの実例が裏付けている。
桂離宮の価値を認め、その名を広く知らしめたのはドイツ生まれの建築家、ブルーノ・タウトだったし、飛騨高山の町屋、吉島邸を地球の裏側からでも訪れる価値があると評したのはアメリカの建築家、チャールズ・ムーアだった。日本文化の特質を『菊と刀』で説いたのは文化人類学者のルース・ベネディクト。この『菊と刀』は今はどうか知らないが、私が学生のころは必読書でもあった。日本文学を古典から現代まで広く、深く研究し、その魅力について論考しているドナルド・キーン氏。
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NHKのラジオ深夜便の朝4時過ぎからの「明日へのことば」というコーナーを聴いている。今月5日、このコーナーに出演したデービッド・アトキンソン氏は元ゴールドマン・サックス金融調査室長で、現在は国宝や重文の修復を手掛ける小西美術工藝社社長。
番組では、日本の伝統文化がいかに奥が深いかということ、そのことを日本人がいかに理解していないかということ、宝の持ち腐れではないか、といった内容が語られた。これも外国人による日本の伝統文化はすばらしいという指摘。
番組を聴いて、ぜひこの本を読んでみたいと思い、早速コンビニで注文した。送料も手数料もかからず、3日後くらいには届くから実に便利(書店がどんどん減っていってしまうわけだ)。
この本のカバー折り返しに**なぜ日本人は伝統文化を大切にしないのか ― その答えを探るとき、経済再生の道が見えてくる。**とある。 経済再生の道にも関心を持たなければならないが、私はなぜ日本人は伝統文化を大切にしないのか、という問いに対する著者の答えが知りたい。この問題についても外国人が鋭い指摘をしているのだ。
今週はこの本を読む。読みたい本が次から次へと現れる。嬉しい限り。
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