■ 映画「ジュラシック・パーク」が公開されたのは今からおよそ30年前(もうそんなに経つのか・・・)の1993年のことだった。原作はマイクル・クライトンの同名小説(ハヤカワ文庫1993年)。この映画は大ヒットしてシリーズ化された。その完結編となる第6作「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」が現在公開されている。
マイクル・クライトンは実に興味深くておもしろい作品を何作も書いた。文庫になるまで待ちきれなくて単行本で読んだ作品もある(写真下)。
琥珀に閉じ込められた蚊の体内に残っていた血液から抽出したDNAをスーパーコンピューターで解析、複雑な作業を経て恐竜をよみがえらせる「ジュラシック・パーク」。何の説明もなく恐竜を出現させられたらおもしろくもないが、クライトンは科学知識を駆使して読者に説明した。
コンピュータで完全にコントロールされていて安全なはずの「ジュラシック・パーク」、だがシステムにトラブルが発生して恐竜たちが人間に襲いかかり、大パニックに。これと同じことが福島第一原発で起きた。クライトンは作品の中で最先端技術に潜む危険性を指摘し、警告を発し続けた作家だった(*1)。
「ジュラシック・パーク」では恐竜たちの生息域は孤島という限定的なエリアだったのに、「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」では、恐竜たちは世界中で生息していて、各地でトラブルを起こしている。
敢えてこの映画の内容には触れない。悪の研究施設に潜入、間一髪脱出という007でよくあるパターンのストーリー、と簡単に括っておく。巨大な翼竜・ケツァルトアトルスが飛行機を襲ったり、パラサウロロフスが馬と一緒に草原を疾走したり・・・。まあ、映画は娯楽と割り切って、おお、すごい! と単純に楽しめばよいと思う。このシリーズに登場する恐竜たちの多くはタイトルの由来のジュラ紀ではなく、白亜紀に生息してしていたという(*2)が気にしない、気にしない。
この映画では恐竜との共生が模索されるが、恐竜が絶滅していてよかったと思う。巨大隕石の衝突という偶然に感謝。
遺伝子改変などという神の領域に立ち入らない方がいいと思うけどなぁ、映画を観ての感想。
*1 マイクル・クライトンは2008年に66歳で亡くなってしまった。現代社会に欠かせない作家だったと思う。クライトンにはコロナ禍がなかなか収束しない現代社会の混乱を予見したかのような「アンドロメダ病原体」という初期の作品がある。
*2 『ジュラシック・パーク 下』(ハヤカワ文庫)の解説文(404頁)による。