『日本が飢える! 世界食糧危機の真実』山下一仁(幻冬舎新書2022年)
■ カバー裏面の内容紹介記事の後段に**軍事危機で海上交通路を破壊されたとき、国は国民にどうやって食料を供給するのか? 日本は有事において武力攻撃ではなく食料不足で壊滅する――。**とある。腹が減っては戦(いくさ)はできぬ、ということ。著者の山下氏は元農林水産省官僚。
本書の章立ては次の通り。
第1章 食料とは何か?
第2章 貿易から見える世界の食料事情
第3章 真実をゆがめられた日本の農業
第4章 “食料自給率”というまやかし
第5章 持続可能な日本の水田農業
第6章 食料危機を作る農政トライアングル
第7章 食料危機説の不都合な真実
第8章 日本が飢える―餓死者6000万人
最終第8章の最後の一文は次のように結ばれている。**戦前陸軍省が農林省の減反政策案を潰したように、主食の米を減産する減反は安全保障と相いれない。これまで減反で多くの水田を潰した。食料安全保障のためにも、米の減反をただちに廃止すべきである。**(236頁) これが著者の山下氏が言いたいことだろう。論拠となる様々なデータ(日本の農地面積の推移、農家戸数と農業従事者数の推移、作物別の国内生産量の推移等々)を示し、このことを論じている。
知らぬが仏的な内容は脳が理解しようとしないのか、字面を追うだけということもあった。だが、日本の食料事情について知っておくことは必要だと思う。日本の農業事情がテーマの類書もあるから、一読をおすすめしたい。
ロシアのウクライナ侵攻により、両国からの小麦の輸出量が減少して、小麦価格が高騰しているという。このようなことから食料遮断という最悪の事態が現実的なこととしてイメージできるだろうか。さらに対策を講じることが実行に移せるだろうか・・・。著者は**保身しか考えられない農林水産省職員や国会議員から減反廃止の提案が出てくることは期待できない。**(240頁)と手厳しい。