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■ 『ボッコちゃん』星 新一(新潮文庫2022年128刷)を朝カフェで読み終えた。SF作家と言われることが多い星さん、この本に収録されている星さん自選の作品50編にはファンタジーもあればミステリーもある。
好きな作品を1編に絞り込むことはできない。で、次の4編を挙げたい。「約束」「ゆきとどいた生活」「ある研究」「肩の上の秘書」。
「約束」
既に書いたがもう一度。別の星に調査に行く途中に立ち寄った星(作品では地球とは明示されていない)で、植物採集をしようとする宇宙人は手伝った子どもたちにお礼をしようとする。子どもたちが望んだのは大人たちにウソをつかせないようにすることと、ワイロをやめさせることだった。宇宙人は急ぎの仕事を終わらせてから、帰りにまた寄ってやってあげるといって、飛び去っていった。帰路、ふたたび約束の星に降り立つと子どもたちは大人になっていて・・・。予想外の結末が魅力な星作品だから、ここに結末は書かない。
「ゆきとどいた生活」
朝になっても目覚めない男。室内にある装置の《手》が男を抱き起こし、シャワーの下に運び・・・、食堂に案内して椅子におろす。《声》が出かける時間だと告げ、《手》が男を繭のような形の乗り物に乗せる。パイプの中を強い空気の圧力で押された繭は5分後に会社につく。男はなぜか繭から出ようとしない・・・。
「ある研究」
**「あたしと研究と、どっちが大切なの」(中略)「おれはこの研究に、なぜだかわからないが、心をひかれている。なにか、すばらしい結果がもたらされそうに思えてならないのだ」**(228頁)
**「変なことに熱中するのは、いいかげんでやめて、まともに働いてよ。あたし、新しい毛皮が欲しいの」**(229頁)
研究職についている夫と妻の話、だろうと読み進めると・・・。
「肩の上の秘書」
過去にSFで描かれたものが実現して話題になることがある。ファミレスでは注文した料理をロボットが運ぶ。
ロボット・インコは持ち主のつぶやきを詳しく相手に伝えることができるし、相手の話を要約して報告することもできる。このインコがすべての人の肩にとまっている時代のセールスマンと主婦の会話。ロボット・インコはやがて実現するのではないか、そう思いながら読んだ。
対話型AI、チャットGPTが今話題になっている。AIが人に代わって、膨大なデータをベースにごく自然な文章を作成する。AIが患者を診察する。やがて、裁判所でAIが判決を下し、AIが議員に代わって・・・。人は何をする?