透明タペストリー

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「データサイエンスが解く邪馬台国」

2023-07-23 | A 読書日記

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『データサイエンスが解く邪馬台国 北部九州説はゆるがない』安本美典(朝日新書2021年)

 今月の4冊目も新書。

畿内か北部九州か・・・。邪馬台国所在地論争。本書で著者・安本氏んは北部九州が圧倒的に有利であることを理詰めで説明する。データサイエンスによってこれだけ緻密に、明快に論じられてしまうと、畿内説を支持する論者は反論できないのでは。完璧なる詰将棋、と言う印象。安本氏は権威主義的な考古学界に対し、厳しい批判もしている。次のような指摘も。

**従来の方法を発展させて行くという進み方は、限界にきているのではないか。古代史像をつかもうとするばあいに、不正確で恣意的な「解釈」と、大幅な「空想」をともなうようになってきているようにみえる。**(224頁)

ところで一般人が邪馬台国と聞いてまず思い浮かべるのは「魏志倭人伝」だろう。何通りにも解釈できる所在地への方向、旅程に関する記述ついて、本書では触れていない。たったひとつの記述についてデータサイエンス的に扱うのは無理、ということは分かる。でも、と言いたい。この問題について、安本氏がどのように解釈しているのか、示して欲しかった。

この問題について松本清張が『陸行 水行』という短編で書いていたと思う。清張作品の文庫は全て古書店に引き取ってもらったので、確認できないが・・・。

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『データサイエンスが解く邪馬台国』の第1章「データサイエンスとの出合い」の第1節「私の研究歴」に著者が文学作品の文体を統計学的に研究していたことが紹介されている。この節は実に興味深い内容だ。

谷崎潤一郎と志賀直哉の文章の相違を複数の観点から統計的に分析すると、両者の違いが明快になることが示される。現代作家100人の作品を統計学的に分類し、各作家を作品の文体的な特徴を3次元の座標上にプロットした図は興味深い。

また、安本氏はこの節で源氏物語の「宇治十帖」の作者問題について、検定した結果についても取り上げている。「宇治十帖」については文体がそれまでの帖とは異なる印象を受けること、和歌の数が少ないことなどから作者が違うのではないか、という見解が昔からある。

邪馬台国について書かれた本に源氏物語のことが書かれているなどとは思いも寄らなく、びっくりした。安本氏は単なる印象論ではなく、直喩、色彩語、助詞など文体に関するいくつかの項目について計量分析を行い、「宇治十帖」には他の四十四帖と偶然とはいえない違いがあることを示している。

この本の購入動機については敢えてふれないが、結果オーライだったことを記しておきたい。


 


晴れ男四人組 夏の上高地をゆく 

2023-07-23 | A あれこれ

2023.07.20

 午前11時ころ、真っ赤なスポーツカーがぼくの待つ上高地線の新島々駅に向かって滑るように走行してきた。運転してきたKBさんとは2020年10月以来の再会(過去ログ)。助手席のMRさんとは昨年の10月、都内で行われた大学の研究室のOB会で会っている。狭そうな後部席(何しろスポーツカーだから)のKRさんとは何年振りだろう。集まったのは大学で同じ研究室に同時期に所属していた4人。


今年の4月ころだったかと思う。長野に行きたい、と言われていた。さて、誰から言われたっけ、KBさんだったかな。長野か、どこがいいだろう・・・。浮かんだのは上高地。河童橋から奥へ4キロ近く入ったところに高校の同級生がオーナーの明神館がある。そこに1泊しよう。しばらく前からグループラインで旅行について、あれこれ情報交換していた。

新島々駅を11時30分発のバスで上高地に向かう。上高地バスターミナルの3キロほど手前の大正池に12時30分少し前に到着、下車。大正池ホテルで食事をしてから、河童橋めざして歩く(① 正面は焼岳)。ゆっくり歩いて約1時間。バスターミナルで帰りのバスの予約をする(⑬)。 




上高地と言えば河童橋。写真の撮り方によって風景の印象がだいぶ違う(②、③)。


河童橋。KRさんは上高地2回目、KBさんとMRさんは初めて、と聞いた。私は3回目。晴天なのは晴れ男4人の相乗効果か。


明神岳 明神館まであと少し。

私が予約していた宿は河童橋から4キロ近く奥にある明神館。野鳥のさえずり、清流のせせらぎを聞きながら梓川左岸の林間歩道を歩く。宿には午後4時過ぎに着いた。

この日の歩数は約13,000歩。よく歩いた。ぼくと高校で同級だった宿のオーナーが笑顔で迎えてくれた。2018年の8月に同級生8人がこの宿で旧交を温めた。その時の記事に宿の外観その他、写真を載せている(過去ログ)。

さっそく風呂に入って汗を流し、浴衣に着替えて食堂へ。カンパ~イ!! あ~~ ビールが美味い。

ゆっくり食事をして、部屋でのんびり。建設業界の表話に裏話、それからMRさんのクラシック音楽のレクチャー。フルトヴェングラーとかカール・ベーム、ずいぶん昔の指揮者にも話が及び・・・。

あっという間に9時半、館内消灯。熟睡、のはずが大きなBGMが始まって・・・。


2023.07.21


朝5時ころ 明神館2階のバルコニーから明神岳を望む。


梓川に架かる明神橋と明神岳




早朝、肌寒くて薄手のセーターを着る。外に出て、梓川に架かる明神橋(⑦)を渡って明神池へ。池のほとりに穂高神社奥宮(⑧)がある。

ここは神域。ご神体の明神岳に向かって2礼2拍手1礼する3人(⑨)。ぼくが持っていった3脚を使って4人並んで写真を撮ったが、掲載は控える。


宿に戻って朝食。9時ころ宿を出発。明神橋を渡り、梓川右岸の歩道を歩く(⑩)。KBさんは富士山登山10回という健脚。5年前にもここを歩いているが、記憶なし。


さわやか上高地


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20日に買い求めた乗車券 発行日に14時52分とプリントされている。

ほぼ定刻、12時30分ころ新島々に着いた。さて、昼食。信州と言えばそば、ということで新島々駅から車で10分くらいのところにある山形村のそば集落、唐沢へ。一押しのそば屋で天ざる、美味い。その後、松本で観光するという選択枝もあったと思うけれど3人は鄙里の拙宅経由の帰路を希望とのこと。で、案内。

(小一時間経過) 

近くの道の駅に立ち寄るも、残念なことにこの時季は果物がない。長野道のIC近くまで案内して、お別れ。高速道路を覆面パトに追いかけられない速度で走行した、と信じる。

この日の歩数は約11,400歩。


2日間、天気に恵まれてホッとしている。

ラインで早くもこんなリクエストが。