■ 寅さんシリーズ第39作「寅次郎物語」
母親さがし、幸せさがしの旅
オープニング、寅さんは中妻駅の待合室で寝ている。中妻駅ってどこ?分からなかったので調べてみた。関東鉄道常総線の駅だと分かった。ぼくはこの常総線で水海道駅で降り、駅近くの火の見櫓を見に行っている。中妻駅は水海道駅の二つ先の駅(常磐線の取手から水戸線の下館に向かって)で、その時この駅も通過していた。
とらやにリュックサックを背負った少年が訪ねてくる。少年の名前は秀吉、寅さんのテキヤ仲間の息子だった。秀吉君の父親が死に、母親(五月みどり)は家を出てしまっていて行方不明。秀吉君は父親から「オレが死んだら寅さんのところへ行け」と言われていたらしい。
母親が和歌山にいるらしいことが分かり、寅さんは秀吉君を連れて母親捜しの旅に出る。
大阪は天王寺、和歌山は和歌の浦、奈良は吉野、ふたりの旅は続く・・・。吉野の旅館で夜に秀吉君が急に熱を出して、寅さん大慌て。偶々隣の部屋に泊まっていた隆子さん(秋吉久美子)が看病を申し出て、寅さんは医者を呼びに行く。旅館に連れてきたのは既に引退したじいさん先生(2代目のおいちゃん、第6作「純情篇」でも医者役で出ていた)、しかも耳鼻科の先生。宿で秀吉君を診察する先生、寅さんと隆子さんを夫婦と勘違い。まあ、状況からして誰もふたりが赤の他人とは思わないだろう。
隆子さんは寅さんを子どもの父親だと思ってお父さんと呼び、寅さんはそれに合わせて隆子さんを母さんと呼ぶ。まあ、この辺りは寅さん映画的。
幸いにも秀吉君は翌朝すっかり回復する。その日、寅さんと隆子さんは連れ立って金峯山寺へ。そこでふたりは秀吉君の回復を喜び、隆子さんは寅さんに旅館にひとりで泊まった事情を話す。男と泊まる予定だったが断られてしまい、旅館の窓から飛び降りてしまおうかと思っていたことも告白する。
秀吉君の母親の居場所がようやくわかる。三重県の伊勢志摩。寅さんと秀吉君は隆子さんと別れて、母親に会いに行くことに。その前夜、3人は川の字になって寝る、本当の親子のように。
部屋で隆子さんは大事な人生を粗末にしてしまったと泣く。「まだ若いんだし、これからいいこといっぱい待ってるよ」と慰める寅さん。こういう場面の寅さんのことばは心に染みる。「そうね、生きててよかった、そう思えるようなことがね」と応える隆子さん。このあたり、この作品のテーマに関わる場面。
*****
伊勢志摩、賢島。秀吉君の母親は病気療養中。再会する親子。母親役が第28作「寅次郎紙風船」でテキヤ仲間(小沢昭一)の奥さんを演じた音無美紀子だったら、ぼくはぽろぽろ涙を流したかもしれない。彼女にピッタリの役だと思う。もちろん五月みどりも好演していたけれど。
母親と再会できた秀吉君を残して、船で島を離れようとする寅さん。急いで船まで走ってきた秀吉君は寅さんに一緒に帰ると言う。厳しく諭す寅さん。
船が岸を離れていく・・・、泣きながら桟橋を走って船を追いかっける秀吉君。「おじさ~ん、行っちゃだめ おじさ~ん おじさ~ん!」
泣かせる場面。
さくらさんが顛末を御前様に話している。「よかった。本当によかった。仏様が寅の姿を借りてその子を助けられたのでしょう」
また旅に出る寅さんを満男君が駅まで送っていく。駅前まできて、「人間は何のために生きてんのかな」と満男君。「生まれてきてよかったなあってことが何べんかあるじゃない、そのために人間生きてんじゃないのか。そのうちおまえにもそういう時が来るよ」と言い残して寅さん駅へ。
年が明けて、隆子さんがとらやに来ている。残念ながら寅さん旅の空。ふたりの再会場面、見たかったなあ。
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