林望著「幻の旅」(マガジンハウス・1993年)が
古本で200円。つい買ってしまう。
パラリひらけば、
はじまりには、朔太郎の詩『旅上』が引用してある。
そこから、断片引用。
「 汽車が山道をゆくとき
みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに。 」(p3)
本文の最後の文は『並木道』で、
そのはじまりは
「地下鉄の駅を出ると、青葉の匂いがした。
五月の光は、背の高いケヤキの並木に萌えいでた
浅緑色の若葉から洩れて、ちらちらと涼しい道の上に降ってくる。」
パラリとひらけば、そこにはこんな箇所。
「『僕はいつも思うんだ、この季節になるとね。
一年の内で、もっとも美しい木々の風景は、
満開の花でも、燃えるような紅葉でもなく、
この新緑、いま僕と君の目に映じている
この景色じゃないかって・・・ 」(p34)
はい。林望が教えてくれている『五月』。
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