はい。漫画とテレビで育ったせいで、
とんと童話など読まずに育ちました。
ですから、宮沢賢治といえば、ますむら・ひろしの漫画で
猫たちの宮沢賢治童話集はパラパラとひらきましたが、
それでも、直接に賢治の童話集は読まずに、この年となりました。
アニメ映画『銀河鉄道の夜』は、細野晴臣の音楽が印象深かった。
宮澤賢治の詩『永訣の朝』は、国語の教科書で知りました。その程度です。
はい。そんな程度の「袖触れ会うも」体験の私の宮沢賢治であります。
この年になって、宮沢賢治の童話を、読みはじめようと思うたのしみ。
宮澤賢治を山にたとえるならば、その山への水先案内人は
なんだか、大勢みつかりそうです。ということで、はじまりの宮沢賢治は、
いろいろな方の賢治体験を読めば、はじめのとっかかりがつかめそうです。
ということで、まず、ひっかかったのが梅原猛の賢治論でした。
梅原猛氏は、宮沢賢治の童話と詩とを天秤にかけておりました。
「 その意味で賢治の童話は、賢治の詩よりも一層詩的なのである。 」(p16)
「しかし、詩は童話よりはるかに難解である。正直に言えば、
私(梅原)には賢治の『春と修羅』における詩の三分の二はよくわからない。
童話の中にもわからないものはないわけではないけれど、
しかしそれは主に未定稿のものであり、その意味では
編集の段階で何か疑問があると思われるものが多い。
一応完成したと思われる彼の童話は私にはほぼ理解できるのである。
そして、童話を読むごとに私は改めてその童話のもっている深い意味に
気がつくのである。賢治ほど私に言葉のもっている深い意味を教えて
くれる詩人はいない。・・ 」
( p16~17 「賢治の宇宙」佼成出版社・1985年 )
はい。私などはこれで登山の入り口がはっきりした気分になります。
宮澤賢治の山脈があるのなら、賢治の詩の山をこの際、度外視して、
まずは宮沢賢治の童話の山から登頂をはじめれば展望がひらけそう。
はい。お笑いください。70歳からの手習い。
何だか、遠足の前日のソワソワ感でもって、
いまだ、賢治童話を読んでいないのでした。
ということで、まずは『注文の多い料理店』(新潮文庫)を古本で注文。
はい。これが届く前にここはもうすこし梅原猛氏の文を引用することに。
「 賢治が生前発表した唯一の童話集は『注文の多い料理店』である。
ここに・・九つの童話が収録されている。・・・
この賢治が生前自ら発行した唯一の童話集は、
無視されがちであり、多くの全集ではそれがばらばらに配列されている。
小倉豊文氏がいうように、これは賢治理解にとってまちがったことであり、
やはり賢治が自らつくった童話集はその順で読まれ、
ゆっくり味わわなくてはならないと私は思う。・・・ 」
このあとに、梅原氏は、『注文の多い料理店』の序文を引用して
そのあとに、こう語っておりました。
「 賢治の言うとおり、その童話には作りごとがないのである。
無理な構成とか奇矯な修飾は賢治の童話にはまったくない。 」
そして、『注文の多い料理店』の序文から、この箇所を引用しています。
「 それは賢治の言うとおりに、
『 かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、
11月の山の風のなかに、ふるへながら立って 』いたりしたときに、
自然に浮かんできた心象風景にちがいないのである。 」(~p21)