筑摩書房の現代漫画5「水木しげる集」が届く。
最後に鶴見俊輔が「紙芝居と貸本の世界から」と題して書いておりました。
あと、篠弘詩集「百科全書派」(砂子屋書房)も届く。
さてっと、松田哲夫著「編集狂時代」(本の雑誌社)で、
ちょっと、あとでまた浮かんできた箇所がありましたので引用。
「水木さんは、今の管理社会の害毒を痛烈に批判し、南の島の人たちのノンビリした暮らしに憧れ、妖怪たちとの共棲を、驚くほど純粋に夢見ている。ところが、一方では作品を発表し続ける装置としてのプロダクション運営も、つつがなくこなしているのだ。何が不思議といって、この二つが矛盾なく共存していることほど不思議なことはない。
水木さんのところへやってくるアシスタント志望の若者は、水木作品に惹かれてくるだけあって、一風変わった人が多いという。水木さんも手を焼くこともあるようだが、癖の強い人たちを仕事のシステムの中にうまく組み込んでしまう水木さんの経営手腕には感服させられる。ある時、水木さんにこの秘密を聞いたら、『点を打たすことです』と言う。何のことかわからず、『というと?』と聞き返した。水木さんの答えを要約するとこういうことだった。背景の絵のなかの石とか山とか雲などは点描で描いていく。この点描というものは絵のうまいへたにかかわらず、誰にでもできることだ。だから、新参のアシスタントにやらせることが多い。根気よく点を打っていけば、いつか奥行きのある絵ができてくる。アシスタントは『マンガを描くことは、砂を噛むようにつらいことだ』と噛みしめ噛みしめ、点を打てというわけだ。他の人間が口にしたら、教訓臭くてはなもちならないような台詞だが、水木さんの口から発せられると、妙に納得させられてしまうから、これまた不思議だ。
そういえば、ぼくが取締役になった時、『おめでとう』と言ってくれた水木さんに、『会社経営のコツは何ですか?』と、テレ隠しのつもりで聞いたら、彼は真顔で『部下を働き虫にすること。それから売れない本はつくらんことです』とズバリ言い切った。ここまで露骨に真理を言う人は少ないだろうと、またまた感心してしまった。」(p68~69)
「根気よく点を打っていけば」。
うん、そうすれば、このブログも続くかもしれませんね。
最後に鶴見俊輔が「紙芝居と貸本の世界から」と題して書いておりました。
あと、篠弘詩集「百科全書派」(砂子屋書房)も届く。
さてっと、松田哲夫著「編集狂時代」(本の雑誌社)で、
ちょっと、あとでまた浮かんできた箇所がありましたので引用。
「水木さんは、今の管理社会の害毒を痛烈に批判し、南の島の人たちのノンビリした暮らしに憧れ、妖怪たちとの共棲を、驚くほど純粋に夢見ている。ところが、一方では作品を発表し続ける装置としてのプロダクション運営も、つつがなくこなしているのだ。何が不思議といって、この二つが矛盾なく共存していることほど不思議なことはない。
水木さんのところへやってくるアシスタント志望の若者は、水木作品に惹かれてくるだけあって、一風変わった人が多いという。水木さんも手を焼くこともあるようだが、癖の強い人たちを仕事のシステムの中にうまく組み込んでしまう水木さんの経営手腕には感服させられる。ある時、水木さんにこの秘密を聞いたら、『点を打たすことです』と言う。何のことかわからず、『というと?』と聞き返した。水木さんの答えを要約するとこういうことだった。背景の絵のなかの石とか山とか雲などは点描で描いていく。この点描というものは絵のうまいへたにかかわらず、誰にでもできることだ。だから、新参のアシスタントにやらせることが多い。根気よく点を打っていけば、いつか奥行きのある絵ができてくる。アシスタントは『マンガを描くことは、砂を噛むようにつらいことだ』と噛みしめ噛みしめ、点を打てというわけだ。他の人間が口にしたら、教訓臭くてはなもちならないような台詞だが、水木さんの口から発せられると、妙に納得させられてしまうから、これまた不思議だ。
そういえば、ぼくが取締役になった時、『おめでとう』と言ってくれた水木さんに、『会社経営のコツは何ですか?』と、テレ隠しのつもりで聞いたら、彼は真顔で『部下を働き虫にすること。それから売れない本はつくらんことです』とズバリ言い切った。ここまで露骨に真理を言う人は少ないだろうと、またまた感心してしまった。」(p68~69)
「根気よく点を打っていけば」。
うん、そうすれば、このブログも続くかもしれませんね。