映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

乱れる  高峰秀子&加山雄三

2009-02-01 16:28:23 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画が終了する瞬間、背筋がぞっとした。
たくさん映画見ているけど、こんなにゾクゾクすることはそうそうない。
エンディングが鮮烈だった。

「乱れる」は成瀬巳喜男監督の晩年の作品である。
東宝映画で相手役に加山雄三が起用されるが、高峰秀子がここでもいい。

時は昭和38年静岡清水の商店街で酒屋を営む高峰秀子は戦争未亡人、夫の母三益愛子と夫の弟加山雄三と一緒に暮らす。彼女は戦後バラックでスタートした酒屋を大きくしたが、最近は近くにできたスーパーの影響で売り上げも伸び悩み。近くの商店街の店もスーパーに客を奪われている。
加山は大学を出て就職したが、辞めて静岡に戻ってきた。毎日酒を飲んだり、近くの商店主と麻雀をしたりしてぶらぶらしている。
そんな時加山の姉草笛光子は高峰の縁談を持ってくるが高峰は乗り気でない。
これも草笛の主人と加山を経営者にして、現在の酒屋の場所にスーパーの計画をたくらんでいるからだ。この話を聞いて加山は高峰を新会社の役員じゃなきゃいやだという。実は11才下の義弟加山はずっと高峰に思いを寄せていたのであった。
あるときその思いを高峰に告白するが、高峰は拒絶する。。。。。

ストーリーは淡々と展開していくが、途中でいくつかの谷を作る。
主人公高峰の感覚は現代の感覚とは違う女性である。お嫁に行った先で主人が死んだあともずっとご奉公するような女性は現代では考えられないであろう。高峰らしい落ち着いた振る舞い、話し方がいい。ラストの表情もすごくいい。この映画では普段に着物を着ることが多い。ここに一時代前の感覚がある。三益愛子も明治の女といったお母さんをそれらしく演ずる。加山雄三もいつものブルジョアのにおいが抑えられ、できの悪い酒屋の息子を演じる。ダメ男の役ってあまりないのでは?小姑草笛光子も小姑らしいいやらしさがでていていい。

清水駅をでて東京を経由して東北に高峰が向かうシーンで、昔の東海道線が出てくる。なつかしい。母のふるさと静岡に行くときずいぶんとお世話になったからだ。
新幹線は国に大きな進歩をもたらしたが、映画だけをとってみると、新幹線以前の映画における列車の描写の方が味があっていいと思う。
停車駅で加山雄三がそばをすするシーンがある。こういうことも昔はできた。
同じ高峰秀子がでる「張り込み」の東海道線から九州に向かうシーン、黒澤映画の「天国と地獄」は新幹線ができる寸前のこだま号である。

成瀬の映画は時折見せるロケのシーンが非常に味がある。ここでも静岡清水の町並み、東北の温泉いずれも素敵に撮っていた。成瀬の映画では「流れる」が一番と思っていたがこれが上回るようだ。



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男はつらいよ  葛飾立志篇

2009-02-01 07:40:37 | 映画(日本 昭和49~63年)
先週「寅さんに学ぶ日本人の生き方」という大学の教授が書いた本を読んだ。
アインシュタイン、夏目漱石、寅さんの3人が著者の尊敬する人とするだけあって、単なる寅さん論に収まらないのでよかった。48作もあるので、全体を俯瞰するような本があるとセレクトするのに助かる。

この本で彼が最高傑作とするのは第16作「葛飾立志篇」である。

いつものレギュラーメンバーに加えて、今回のゲストは樫山文江と小林桂樹、桜田順子である。高校生の桜田が若い。当時「17の夏」なんてヒット曲あったなあ
樫山は大学の考古学の助手で御前様こと笠智衆の姪でだんごやに下宿することになる。才色兼備の樫山にいつものように寅さんはぞっこん。
自分もインテリぶろうとメガネを買ったり、樫山に歴史を学ぼうとする。
そんなとらやに小林桂樹が訪ねる。汚い格好をしているが、樫山の恩師で考古学の教授である。寅さんがからむが、熱い寅さんの言葉に小林は動かされて自分の師匠というようになるが。。。。。

いつものようにテキヤ口調は絶好調、樫山が歴史を教えているときも、話をすりかえてテキヤ言葉で樫山を笑わす。あとタコ社長との小競り合いのやり取りも冴える。
腹を抱えて笑ってしまうシーンがたくさんある。

それに加えての寅さんが小林桂樹向かって話す名せりふ
「ああ、いい女だなあと思う。その次は話がしたいなあと思う。次にはもうちょっと長くそばにいたいと思う。そのうち、こう、何か気持ちがやわらかくなってさあ、ああ、この人を幸せにあげたいと思う。もう、この人のためなら命なんていらない。死んじゃったっていいとそう思う。それが、愛ってもんじゃない。」
この教授の名前は田所教授、これって渥美清の本名の姓だ。
山田洋次も意識していたのかな?

なるほどいい作品だ。
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