映画「きみはいい子」を映画館で見てきました。
自分にとって昨年ベストの「そこのみにて光り輝く」の呉美保監督の最新作なので、見に行くしかない。子供への虐待、学級崩壊、痴呆症、自閉症などテーマは多岐にわたっている。前作の出来からみて、期待感をもって見たが、映画の構成はちぐはぐな印象をもった。それでも印象に残る場面は多く、主演の高良健吾、尾野真千子2人の演技は悪くない。それよりも呉美保監督の前作に引き続き出演の池脇千鶴が色あせた主婦を演じていたのが印象に残る。一作ごとにいい役者になっているように見える。
岡野(高良健吾)は、桜ヶ丘小学校4年2組を受けもつ新米教師。まじめだが優柔不断で、問題に真っ正面から向き合えない性格ゆえか、児童たちはなかなか岡野の言うことをきいてくれず、恋人との仲もあいまいだ。
雅美(尾野真千子)は、夫が海外に単身赴任中のため3歳の娘・あやねとふたり暮らし。ママ友らに見せる笑顔の陰で、雅美は自宅でたびたびあやねに手をあげ、自身も幼い頃親に暴力を振るわれていた過去をもっている。
あきこ(喜多道枝)は、小学校へと続く坂道の家にひとりで暮らす老人。買い物に行ったスーパーでお金を払わずに店を出たことを店員の櫻井(富田靖子)にとがめられ、認知症が始まったのかと不安な日々をすごしている。
とあるひとつの町で、それぞれに暮らす彼らはさまざまな局面で交差しながら、思いがけない「出会い」と「気づき」によって、新たな一歩を踏み出すことになる―。(作品情報より)
いくつかの逸話を同時進行で語っていく。
どちらかというと、長まわしで情感を高めるのが呉美保監督の得意技だが、いくつもの話を組み合わせているので接続の仕方がもう一歩でちぐはぐに見える。ただ、いくつか印象に残るシーンがあった。ネタばれありなので注意
1.尾野真千子の幼児虐待
これには驚く。どうでもいいことなのに母親である尾野真千子が娘に対して完全に切れる。子供をこれでもかこれでもかと殴りまくる。長まわし得意の呉美保監督は1回や2回ひっぱたくのを見せるだけでは止めない。時間をかけてひっぱたくのを映しだす。いい加減やめろよといいたくなるくらいだ。尾野真千子もまさか本当にたたいているわけじゃないだろうと思っていたら、どうやら自分の手をぶっていたらしい。それにしてもあれだけ叩いたら痛いだろうなあ。
2.池脇千鶴が抱きしめるシーン
ママ友池脇千鶴の子供は男の子でいうことをきかずに暴れまわる。そんな子供と尾野真千子の娘が池脇の家で遊んでいる時に、娘が誤ってボールをおもちゃのバットで打ったら尾野のコーヒーカップを直撃し、割れてしまう。娘はにらまれ、これからまた母親にひっぱたかれるんじゃないかと泣いてしまう。今にも娘をたたこうとしたときに池脇千鶴が尾野真千子を抱きしめる。
この映画の一番のクライマックスである。これには感動した。館内ですすり泣く声が響く。
「あなたも小さい頃親に虐待されていたんでしょ」「私も同じだったのよ」と池脇に言われ、腕にあるタバコの跡を指さされる。思わず泣いてしまう尾野だ。そして涙が尾野の目からこぼれおちる。演技とはいえ情感こもっているんだろうなあ。
3.難しい宿題
高良健吾は子供が言うこと聞いてくれないのに加えて、母親からのクレーム電話が次から次にかかってきて嫌気がさしている。そんな高良を慰めるように甥が抱きついてきた。彼は安らぐ。
それで、高良は子供たちに宿題をだす。「家族に抱きしめられてもらうこと」難しいと言って出した宿題にたいして、生徒たちが答える。子供たちが答える言葉って妙に自然で素直だ。これだけは実際に父親や母親から抱いてもらった感想を素直に答えているように見える。一種のドキュメンタリー的な感覚だ。このあたりの持っていき方は絶妙にうまい。
こんな感じで印象に残る場面は多い。
どうやら坂の多い小樽で撮影したようだけど、ロケ地選択はなかなかうまい。
(参考作品)
自分にとって昨年ベストの「そこのみにて光り輝く」の呉美保監督の最新作なので、見に行くしかない。子供への虐待、学級崩壊、痴呆症、自閉症などテーマは多岐にわたっている。前作の出来からみて、期待感をもって見たが、映画の構成はちぐはぐな印象をもった。それでも印象に残る場面は多く、主演の高良健吾、尾野真千子2人の演技は悪くない。それよりも呉美保監督の前作に引き続き出演の池脇千鶴が色あせた主婦を演じていたのが印象に残る。一作ごとにいい役者になっているように見える。
岡野(高良健吾)は、桜ヶ丘小学校4年2組を受けもつ新米教師。まじめだが優柔不断で、問題に真っ正面から向き合えない性格ゆえか、児童たちはなかなか岡野の言うことをきいてくれず、恋人との仲もあいまいだ。
雅美(尾野真千子)は、夫が海外に単身赴任中のため3歳の娘・あやねとふたり暮らし。ママ友らに見せる笑顔の陰で、雅美は自宅でたびたびあやねに手をあげ、自身も幼い頃親に暴力を振るわれていた過去をもっている。
あきこ(喜多道枝)は、小学校へと続く坂道の家にひとりで暮らす老人。買い物に行ったスーパーでお金を払わずに店を出たことを店員の櫻井(富田靖子)にとがめられ、認知症が始まったのかと不安な日々をすごしている。
とあるひとつの町で、それぞれに暮らす彼らはさまざまな局面で交差しながら、思いがけない「出会い」と「気づき」によって、新たな一歩を踏み出すことになる―。(作品情報より)
いくつかの逸話を同時進行で語っていく。
どちらかというと、長まわしで情感を高めるのが呉美保監督の得意技だが、いくつもの話を組み合わせているので接続の仕方がもう一歩でちぐはぐに見える。ただ、いくつか印象に残るシーンがあった。ネタばれありなので注意
1.尾野真千子の幼児虐待
これには驚く。どうでもいいことなのに母親である尾野真千子が娘に対して完全に切れる。子供をこれでもかこれでもかと殴りまくる。長まわし得意の呉美保監督は1回や2回ひっぱたくのを見せるだけでは止めない。時間をかけてひっぱたくのを映しだす。いい加減やめろよといいたくなるくらいだ。尾野真千子もまさか本当にたたいているわけじゃないだろうと思っていたら、どうやら自分の手をぶっていたらしい。それにしてもあれだけ叩いたら痛いだろうなあ。
2.池脇千鶴が抱きしめるシーン
ママ友池脇千鶴の子供は男の子でいうことをきかずに暴れまわる。そんな子供と尾野真千子の娘が池脇の家で遊んでいる時に、娘が誤ってボールをおもちゃのバットで打ったら尾野のコーヒーカップを直撃し、割れてしまう。娘はにらまれ、これからまた母親にひっぱたかれるんじゃないかと泣いてしまう。今にも娘をたたこうとしたときに池脇千鶴が尾野真千子を抱きしめる。
この映画の一番のクライマックスである。これには感動した。館内ですすり泣く声が響く。
「あなたも小さい頃親に虐待されていたんでしょ」「私も同じだったのよ」と池脇に言われ、腕にあるタバコの跡を指さされる。思わず泣いてしまう尾野だ。そして涙が尾野の目からこぼれおちる。演技とはいえ情感こもっているんだろうなあ。
3.難しい宿題
高良健吾は子供が言うこと聞いてくれないのに加えて、母親からのクレーム電話が次から次にかかってきて嫌気がさしている。そんな高良を慰めるように甥が抱きついてきた。彼は安らぐ。
それで、高良は子供たちに宿題をだす。「家族に抱きしめられてもらうこと」難しいと言って出した宿題にたいして、生徒たちが答える。子供たちが答える言葉って妙に自然で素直だ。これだけは実際に父親や母親から抱いてもらった感想を素直に答えているように見える。一種のドキュメンタリー的な感覚だ。このあたりの持っていき方は絶妙にうまい。
こんな感じで印象に残る場面は多い。
どうやら坂の多い小樽で撮影したようだけど、ロケ地選択はなかなかうまい。
(参考作品)
そこのみにて光輝く | |
呉美保監督による絶妙なムード作り | |