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映画「KCIA 南山の部長たち」イ・ビョンホン

2021-01-25 06:11:29 | 映画(韓国映画)
映画「KCIA 南山の部長たち」を映画館で観てきました。


現代韓国史の真相や裏面を描いた映画はどれもこれも面白い。一応フィクションと断ってはいるが、「KCIA 南山の部長たち」は1979年の朴正熙大統領暗殺事件に至る経緯を語っている。予想を裏切ることのない迫力のある展開であった。最近の40代以下の人は多分そう感じないと思うが、われわれより上の世代では北朝鮮の存在以上にKCIAの文字に恐怖感を覚えた日本人は多いと思う。1973年の金大中拉致事件が起こって以来、得体の知れない怖い印象をKCIAに対して持っていた。

ここでは朴正熙大統領の側近である中央情報部長キムと警備室長クァクとの葛藤が中心になる。以前、ソン・ガンホ主演の「大統領の理髪師」という映画があった。そこでも仲の悪い2人のことが描かれていたが、今回も実にリアルに取りあげる。日本人的には明智光秀の本能寺の変や赤穂浪士の忠臣蔵のような反逆の物語が大好きである。韓国でもそれと同じような気分になるのであろうか?実話なので、結末はわかっているとはいえスリリングな展開を堪能できる。

李承晩大統領の政権を覆すために、1961年の軍事クーデターで朴正熙(イ・ソンミン)が権力を握った。すでに18年の日々が流れている。1974年の朴正熙夫人の暗殺事件こそあれど、国内では独裁体制を確保していた。その一方で、本流からはずれた人物もいた。もともとはクーデターの同志であった中央情報部元部長パク・ヨンガク(クァク・ドウォン)である。米国下院議会の公聴会で、朴正熙大統領の腐敗を訴えた。


大統領は激怒した。暴露本を出版するという話があり、現在の側近、中央情報部キム部長(イ・ビョンホン)が自分が回収してくると米国に向かった。お互い旧知の仲であるキム部長は、金銭的対価とともに原稿を回収することに成功した。そのときにパク部長から別の存在に地位を脅かされないように気をつけろと言われる。

帰国して朴正熙大統領に原稿を手渡した。しかし、同じ大統領の側近でありながらクァク警備室長(イ・ヒジュン)とは常に意見を異にしており、キム部長の失敗をこれ見たことかと非難する。やがて、お互いにスパイ合戦のように秘密を探り合うようになる。そして、徐々にクァク警備室長寄りの状況がでてきたときに、キム部長はある行動を決意するのであるが。。。


1.登場人物の心理状況
この映画の見どころは、各登場人物がみせる表情であろう。スパイ映画のように探り合う世界である。朴正熙政権とともに子どものころから育ってきたが、黒いサングラスをした写真が怖かった。特にKCIAが金大中拉致事件を起こしてから極めて怖い存在だった。イ・ソンミン「工作」では北朝鮮の北京の支局長的な役柄でいかにも北朝鮮の幹部らしい怖い存在に見えた。ここでの朴正熙はそこまでの怖さはない。むしろ、われわれが知らない次から次に起こる悪い出来事に直面してさまよう大統領の姿をさらけ出すということなのであろうか。そう考えるとうまい。

地位が次から次へと脅かされているイ・ビョンホンも、その心理状況になりきっている感がある。朴大統領と酒を飲み交わすシーンや暗殺の場面のドジな部分も無難にこなした。「悪いやつら」や「コクソン」など悪の根源のような役をやらせると上手いクァク・ドウォンがこの出演者の中では韓国クライムサスペンスの常連であるだけにいちばん見ているかもしれない。ここでは反逆者になりきる。自分に狙いを定める男たちが次から次へと出てくる中でいつものような不死身の強さを見せつけた。大統領を取り巻く世界なのになんかヤクザ映画やスパイ映画のようだ。


2.日本語の登場
ともに日本軍人として戦った経験がある。大勢では話さないであろうが、2人きりで日本語で会話することもあったという。そういえば、「大統領の理髪師」にも同じように朴正熙が日本語を話す場面があった気がする。マッコリにサイダーを混ぜるというのがどうかわからないが、飲みやすいアルコールかもしれない。「あのころはよかった」と2人で酒をくみかえしながらつぶやく。あえて、このシーンを選択したウ・ミンホ監督の真意が知りたい。


もし、朴正熙大統領が暗殺されなかったら、どうなっていたのであろうか?
全斗煥政権が出現したであろうか?こればかりはわからない。
コメント (2)
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