映画とライフデザイン

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映画「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」ペドロ・アルモドバル&ティルダ・スウィントン&ジュリアン・ムーア

2025-02-02 17:15:29 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ザ ルーム ネクストドア」を映画館で観てきました。


映画「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」は毎回欠かさず観ているスペインの鬼才ペドロアルモドバル監督の新作である。2024年ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した。待ちに待った新作で英語圏では短編映画「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」はあっても長編は初めて。初日に映画館に向かう。ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアの2人の大物女優を起用して、末期がんで死に向き合う女性と付き添う女性を中心に映し出す。ペドロアルモドバルらしい奇抜な発想を期待する。

作家のイングリッド(ジュリアン・ムーア)は、友人からかつての親友でNYタイムズの戦場記者だったマーサ(ティルダ・スウィントン)がガンであることを知らされる。早速彼女のもとへ駆けつけ、長く会っていない時間を埋めるように病室で語らう。


自らの意志で安楽死を望むマーサは、人の気配を感じながら最期を迎えたいと願い、「その日」が来る時に隣の部屋にいてほしいとイングリッドに頼む。マーサにはベトナム戦争退役後に幻覚に囚われた若き日の恋人との間に生まれた娘ミシェルがいた。結婚せずにシングルマザーとなって育てたが、娘への愛情がなく距離を置いて暮らしている。


当初はためらったがマーサの最期に寄り添うことを決めたイングリッドは、マーサが借りた森の中にある小さな家の隣室に移り住む。そして、マーサは「ドアを開けて寝るけれどもしドアが閉まっていたら私はもうこの世にはいない」と告げて最期の時を迎える彼女と暮らす。

ペドロアルモドバル作品らしく赤や緑の原色を基調にした色彩設計は完璧である。死に向かうという陰湿さと悲壮感が抑えられている。
不安を増長するアルベルト・イグレシアスの音楽も映像にマッチしてすばらしい!


インタビュー記事(ユリイカ2月号)によると、これまでペドロアルモドバルにはアメリカから企画が何度も持ち込まれたようだ。当然だろう。ペトロアルモドバルは「英語で映画を作るのに適した題材を見つける」ことを待ち望んでいた。今回原作となるシーグリッドヌーネスの小説を気に入り、それならとアメリカで撮影することとなる。

死と向かいあう主人公にはティルダスウィントンを指名して快諾を得られる。それと同時にティルダスウィントンに相手役の指名を依頼して、ジュリアンムーアが共演することになった。この2人の大女優がペドロアルモドバルの期待に応えている。そして高いレベルの作品になった。

色彩設計の美しさには定評のあるペドロアルモドバル作品でも、今回はこれまで以上に赤の使い方が上手い。移動する車が赤いトラックだったり、室内のインテリアでも赤のドアが使われる。補色となる緑などの色を対比させて衣装、調度品、美術に最高峰のレベルで臨む。ティルダスウィントンによれば、お互いの衣装に触発されるし、テンションもあがる。色合いは演技にもいい影響を与えているようだ。


ビビったのはティルダスウィントンが死を覚悟して服を着替える時、イエローのセーターを着て真っ赤な口紅を塗った時の色合いの美しさ。表情はクールだ。歳を重ねても自分もこんな原色で派手な感じに身を包み死に向かいたい欲望が出てきた。

女性色の強い映画でもワンポイントで男性を登場させる。
ゲイをカミングアウトするペドロアルモドバル作品では必ずホモセクシャルの話がでてくる。ここではイラク戦争にマーサがNYタイムズの戦場記者としていくシーンで、一緒に同行する記者と現地人男性との関わりがでてくる。

死後の処理で要らぬ疑いが起きないようにイングリッド(ジュリアンムーア)が旧知の男性に会う。ジョンタトゥーロが演じる。自殺幇助に関わったと警察から疑われるのを予測してイングリッドが周到に手を打つ。死を見守る受け身の立場だったイングリッドが見せた積極性である。そしてその後クライマックスに向かう。


若干ネタバレだが
ラストに向けてはマーサの娘ミシェルが満を持して登場する。髪は長く、メイクは華やかで女性的だ。アレ?ティルダスウィントンの娘って女優だったのか?とふと思うくらい似ている。振る舞いは母親同様クールで落ち着いている。これって1人二役だったの?と映画の終わりかけに気づく。結果そうだった。似たような人物を映画に放って観客を惑わすペドロアルモドバル流だと気づき感嘆する。
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