恒例のキネマ旬報ベストテンが発表された。
権威ある日本の映画賞というとこれに限られるだろう。自分のブログ記事「2021年自分が好きだった作品10作」と比較しながら語ってみる。別にキネマ旬報ベストテンを意識して自分が作品を選んでいるわけではないが、比較すると面白い。
日本映画ベストテンでは水俣病の映画「水俣曼荼羅」以外は全部観ている。日本映画であえてベスト3を選んだ「すばらしき世界」4位、「いとみち」9位、「由宇子の天秤」8位、「ドライブマイカー」1位いずれも入っていた。
「ドライブマイカー」が一位に選ばれたのは順当というべきだろう。村上春樹の短編集「女のいない男たち」から「ドライブマイカー」を選んで「木野」と「シェエラザード」のエッセンスを取り入れ,濱口竜介監督が適切に1つの作品に仕上げたのはお見事としか言いようがない。ただ、個人的には4位になった「すばらしき世界」の方が映画作品としてよく見えた。西川美和監督が各方面への取材を積み重ねて,練りに練ってこの作品を作ったのがよくわかる。
2位となった「茜色に焼かれる」も石井裕也監督による傑作である。よくできている映画だけど、いつのまにかお口でサービスする風俗嬢に転落するという設定が、最近よくありがちで好きか?というとちょっと違うかな?という理由で自分の好きな映画に入れなかった。宮台真司が日経の映画評で絶賛していた。社会学者が好むような設定もすこし疲れてきたのかもしれない。
3位の「偶然と想像」ももちろんいいけど、TVドラマのような感じがしてしまう。「ドライブマイカー」は広島や北海道などロケも多く、濱口竜介監督が本気でつくった感があるけど「偶然と想像」にはそれがないので、自分としては「ドライブマイカー」ほどはひかれない。
それにしても、主演男優女優、助演男優女優賞の4名の選出には全員納得できる。「すばらしき世界」の刑を終えた受刑者が、復帰後の日常になじめないという設定を役所広司が巧みに演じた。さすがである。尾野真千子が風俗嬢で生計をたてる役を演じた「茜色に」についても異論はない。ただ、瀧内公美が「由宇子の天秤」で演じた役柄も難しく、すごくいい女優になった。彼女が受賞してもおかしくないとも感じる。
「狐狼の血LEVEL2」の鈴木亮平は実質主演といえる活躍である。ともかく身体も大きく圧倒的に強い。トコトン強い脇役のでる映画にハズレはない。ヤクザ映画の常連ともいえる俳優たちを手玉に取るという設定もよく、強さを際立たせる。逆に松坂桃李がイマイチで突っ張っていてもひ弱にしか見えない。相性が悪いのか7位となった「告白」を評価しない1つの理由も松坂桃李の存在である。
「ドライブマイカー」の三浦透子はまさに適役だった。彼女自体は魅力的な女性だが,村上春樹が小説の中で語っている必ずしも美人でない容姿にはぴったりなのかもしれない。冷静で適切な運転技術をもったドライバーになりきっているし、北海道の田舎出身で自分のルーツを語り、原作にない一緒に西島と雪の故郷に運転して行くシーンが好きだ。
洋画については、2位「ボストン市長」と9位「MINAMATA」を見ていない。「ボストン」は長さに怖じけつく。でも機会を見つけていかなきゃ。やはり1位は「ノマドランド」なの?という印象で、フランシス・マクドーマンドは好きな女優だけど,この映画に関してはそんなに好きではない。変人というべきキャラクターである主人公に感情流入できないからかもしれない。「プロミシングヤングウーマン」が3位で予想以上に評価されている印象を持つ。どちらかといえば清純派のキャリーマリガンがどぎつく変貌した演技は確かにうまいが、この復讐劇が女性に受けるのかな?
自分の一押しは6位「ラストナイトインソーホー」だが、好き嫌いはあるだろう。自分自身の好きな作品は10位台から20位台に固まっていた。「インザハイツ」は抜群のミュージカルだと思うが、それほどの評価でないのが意外だ。
ただ、自分が好きだった作品にもチョイスした中国映画の「春江水暖」が7位と「少年の君」が10位に入っていたのは、むしろ意外だった。「春江水暖」の川での長回しシーンは圧巻で、杭州市の風光明媚な情景のバックもよく全体に流れるムードは裏社会の話をすこし入れても心地よい。「少年の君」は中国の現代大学受験事情と裏社会事情の両方に切り込んでいて興味深く勉強にもなった。
ついに北京オリンピックが始まったが、国家当局の統制がとれている中で、裏社会を描いた中国映画にハズレは少ない。
権威ある日本の映画賞というとこれに限られるだろう。自分のブログ記事「2021年自分が好きだった作品10作」と比較しながら語ってみる。別にキネマ旬報ベストテンを意識して自分が作品を選んでいるわけではないが、比較すると面白い。
日本映画ベストテンでは水俣病の映画「水俣曼荼羅」以外は全部観ている。日本映画であえてベスト3を選んだ「すばらしき世界」4位、「いとみち」9位、「由宇子の天秤」8位、「ドライブマイカー」1位いずれも入っていた。
「ドライブマイカー」が一位に選ばれたのは順当というべきだろう。村上春樹の短編集「女のいない男たち」から「ドライブマイカー」を選んで「木野」と「シェエラザード」のエッセンスを取り入れ,濱口竜介監督が適切に1つの作品に仕上げたのはお見事としか言いようがない。ただ、個人的には4位になった「すばらしき世界」の方が映画作品としてよく見えた。西川美和監督が各方面への取材を積み重ねて,練りに練ってこの作品を作ったのがよくわかる。
2位となった「茜色に焼かれる」も石井裕也監督による傑作である。よくできている映画だけど、いつのまにかお口でサービスする風俗嬢に転落するという設定が、最近よくありがちで好きか?というとちょっと違うかな?という理由で自分の好きな映画に入れなかった。宮台真司が日経の映画評で絶賛していた。社会学者が好むような設定もすこし疲れてきたのかもしれない。
3位の「偶然と想像」ももちろんいいけど、TVドラマのような感じがしてしまう。「ドライブマイカー」は広島や北海道などロケも多く、濱口竜介監督が本気でつくった感があるけど「偶然と想像」にはそれがないので、自分としては「ドライブマイカー」ほどはひかれない。
それにしても、主演男優女優、助演男優女優賞の4名の選出には全員納得できる。「すばらしき世界」の刑を終えた受刑者が、復帰後の日常になじめないという設定を役所広司が巧みに演じた。さすがである。尾野真千子が風俗嬢で生計をたてる役を演じた「茜色に」についても異論はない。ただ、瀧内公美が「由宇子の天秤」で演じた役柄も難しく、すごくいい女優になった。彼女が受賞してもおかしくないとも感じる。
「狐狼の血LEVEL2」の鈴木亮平は実質主演といえる活躍である。ともかく身体も大きく圧倒的に強い。トコトン強い脇役のでる映画にハズレはない。ヤクザ映画の常連ともいえる俳優たちを手玉に取るという設定もよく、強さを際立たせる。逆に松坂桃李がイマイチで突っ張っていてもひ弱にしか見えない。相性が悪いのか7位となった「告白」を評価しない1つの理由も松坂桃李の存在である。
「ドライブマイカー」の三浦透子はまさに適役だった。彼女自体は魅力的な女性だが,村上春樹が小説の中で語っている必ずしも美人でない容姿にはぴったりなのかもしれない。冷静で適切な運転技術をもったドライバーになりきっているし、北海道の田舎出身で自分のルーツを語り、原作にない一緒に西島と雪の故郷に運転して行くシーンが好きだ。
洋画については、2位「ボストン市長」と9位「MINAMATA」を見ていない。「ボストン」は長さに怖じけつく。でも機会を見つけていかなきゃ。やはり1位は「ノマドランド」なの?という印象で、フランシス・マクドーマンドは好きな女優だけど,この映画に関してはそんなに好きではない。変人というべきキャラクターである主人公に感情流入できないからかもしれない。「プロミシングヤングウーマン」が3位で予想以上に評価されている印象を持つ。どちらかといえば清純派のキャリーマリガンがどぎつく変貌した演技は確かにうまいが、この復讐劇が女性に受けるのかな?
自分の一押しは6位「ラストナイトインソーホー」だが、好き嫌いはあるだろう。自分自身の好きな作品は10位台から20位台に固まっていた。「インザハイツ」は抜群のミュージカルだと思うが、それほどの評価でないのが意外だ。
ただ、自分が好きだった作品にもチョイスした中国映画の「春江水暖」が7位と「少年の君」が10位に入っていたのは、むしろ意外だった。「春江水暖」の川での長回しシーンは圧巻で、杭州市の風光明媚な情景のバックもよく全体に流れるムードは裏社会の話をすこし入れても心地よい。「少年の君」は中国の現代大学受験事情と裏社会事情の両方に切り込んでいて興味深く勉強にもなった。
ついに北京オリンピックが始まったが、国家当局の統制がとれている中で、裏社会を描いた中国映画にハズレは少ない。