映画とライフデザイン

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映画「けものみち」 池内淳子

2014-04-12 07:17:02 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「けものみち」は1964年製作の松本清張原作を映画化した東宝映画
政財界の裏の世界にスポットをあて、その中でしぶとく生きていこうとする男女の生きざまを描く。あえて白黒映画でつくられているが、それがいい形で緊迫感を高めている。武満徹の音楽も絶品でかなりよくできている映画だ。


池内淳子といえば、60年代後半から80年代にかけては視聴率20%を確実に稼げる女優としてもてはやされていた。自分も東芝日曜劇場「女と味噌汁」などはよく見ていたものだ。しかし、まだ少年だった自分にはさほどいい女には見えなかった。それは自分の母と同世代だったからなのかもしれない。息子は母親に女というものは感じないものだ。同時に母親と同世代の女性にも関心を示さない。きっとそういうことだったんだろう。
この映画で見る池内淳子は美しい。逆に彼女がよく見える年齢に自分が差し掛かったのかもしれない。ある意味悪女であるこの映画の池内淳子は金持ち老人の前で肌をあらわにしてもてあそばれるが、肝心なところは見せない。それでも入浴シーンなんかを見るとドッキリしてしまう。20%女優と言われたころにこんな大胆な場面を見たことはなかったので意外であった。そんな池内淳子を見るだけでも価値がある。

主人公成沢民子(池内淳子)は、寝たきりの夫寛次を旅館の女中勤めで養っている。ある夜ついた客のホテル支配人小滝(池部良)は魅力的な男性で2人は魅かれあった。小滝に誘われ、深夜自宅に戻り、事故死をよそおい夫を焼き殺した。小滝と一緒に旅館にいるというアリバイをつくったのだ。そして民子は翌日、小滝の紹介で弁護士秦野(伊藤雄之助)と共に鬼頭洪太(小沢栄太郎)の豪邸を訪れた。身体の不自由な老人鬼頭の世話をするため民子は選ばれた。金にまかせた華美な生活、民子は鬼頭に身体をまかせながら、いつか小滝が忘れられない人となった。


一方焼死事件に不審を抱いた警視庁捜査一課の久恒刑事(小林桂樹)は、当日現場付近に民子らしい女がいたことを聞きこみながら、民子のアリバイを崩せず、次第に民子の美しさに職業を逸脱したみだらな行為を迫るのだった。

久恒の調査で、鬼頭は元満州浪人で、戦後莫大な金を手にし、政治を裏から動かし、右翼団体を握っている人物であり秦野とは、かつて鬼頭のもとで働いていた鉱夫の偽名で、本物の弁護士秦野は満州で行方不明となっていた。また小滝は左翼くずれで、満州から古美術を盗み秦野らに近づいて、一つのラインを形成していることが判明した。
その頃政界では、ある殺人事件にまきこれた高速道路公団総裁香川が辞職し、新しい総裁が椅子についた。鬼頭のさしがねであることは当然ながら、確証がつかめず久恒はいらだった。だが鬼頭の手は久恒のうえにものびたが。。。


普通の旅館の女中が気がつくと、政財界を揺さぶる大物と接触するようになる。この映画の鬼頭は児玉誉士夫がモデルではないかと思う。戦後20年たっていないころは、まだ戦争の影がチラチラする。戦後のどさくさを没落せず生き残った人たちは本当に強い。満州という場所を舞台にして大金を得て、それをそのまま日本に持ち込んだ人は少ない。その少ない人が戦後を牛耳っていたのは皮肉だ。左翼崩れなんて言葉は徐々に死語になってきている。松本清張は常に共産党を応援してきたある意味アカだが、政財界の裏側はしっかり観察してきた。切れ味は鋭い。それがこの映画にもよくあらわれている。

この時代の映画では、黒澤明監督「悪い奴ほどよく眠る」もそうだが、政財界の大物がうまく生き延びるという設定が多い。汚職もうまく握りつぶしている。今はどうだろうか?インターネットで悪いうわさが広まわるので、大新聞を一時的に抑えても簡単には握りつぶせない。児玉誉士夫は戦後の汚職事件にかなりかかわったと言われる。でも結局ロッキードで失脚した。むしろ日本の悪しき慣習を嫌ったアメリカの手で葬られた。古き良き日の日本というより、悪い時代の日本といった方がいいかもしれない。みんなとやかく言うけど、今の方がましだ。

池部良演じる支配人が勤めているというホテルは、赤坂という場所からいってホテルニュージャパンと推測される。横井英樹がオーナーで起こした火災のことでしばらく騒がれていた。当時大学生だった自分は、赤坂紀尾井町でバイトをしていて、偶然出くわした。あの騒乱ぶりは今も目に残る。今のプルデンシャルタワーを見るたび思い出すが、世紀の悪党横井英樹はよくもあの土地を手に入れたなと感心する。

(参考作品)
けものみち
艶っぽい池内淳子

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