映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

村上春樹を読み返して1

2010-09-02 05:14:37 | 
この夏は村上春樹を読み返してみた。

小説として重厚感がある「海辺のカフカ」「ねじまき鳥クロニエル」をじっくり堪能させてもらった。時間はかかるけれど、高級ウィスキーを飲んでいるようなコクのある上質な雰囲気を味わえる。同時に、軽めの「アフターダーク」「東京奇譚集」やエッセイも読んだ。これはさほどでもなかった。
あとは何度読んだかわからない「国境の南太陽の西」も再読した。村上春樹は先日発刊されたインタビューでこの小説も評判悪かったなあといっていたが、個人的には好きだ。

彼が本領を発揮するのは「ねじまき鳥」「海辺のカフカ」などの長編小説だと思う。比較するのもどうかと思うが、長編小説ということで山崎豊子さんと比べてみる。村上春樹の小説は何度も推敲された結果文章になっている深みのあるものが多い。逆に山崎豊子の場合、周到な取材を重ねた結果書かれたというのが小説から読み取れる。しかし、連載小説を締め切りぎりぎりに書きあげたようなノリで推敲を重ねたような文章の厚みがない。「ねじ巻き鳥」ではノモンハン事件に関して綿密な資料の読み込みをした形跡がある。でもこれは珍しい。彼の場合、彼が重要と感じるいくつかの現実の出来事や映画の場面を基点にして、自分の想像を膨らましていく感じだ。

「国境の南太陽の西」は「ねじまき鳥」に比較すると短い小説だ。でも「ねじまき鳥」で書ききれないことをここで語ったと先日読んだインタビュー記事に書いてあった。この小説の時代背景はバブル崩壊直前だ。基調は小学校の同級生との純愛物語である。「1Q84」と同じような出会いである。ここではビジネスに関しての彼の考えが読み取れる。もともとジャズクラブを経営していた村上春樹が、主人公の言葉を通じてビジネスについて語る。これが興味深かった。初めて読んだ後そこだけを何度も読み返した。店の模様替えの話、出来のいいバーテンダーの話などがいい。あとはバブル紳士たちの言葉が、妻の父親の言葉として語られる。これも意味深い。「ねじまき鳥」にも一瞬だけそれを彷彿させるところがあった。「やり方」を知っているか知らないかでチャンスをつかめたりできなかったりするという話だ。

村上春樹の小説がまともに映画化されたのは「風の歌を聴け」くらいだ。あとは小品の映画だと思う。この映画は真行寺君枝さんが出演していた。個人的には物足りなかった。それはセットがあまりに稚拙な感じがしたからだ。ロケハンティングもうまくいっていないと思う。「国境の南太陽の西」を仮に映画化とすると、青山あたりをロケにしてうまくいくと思う。その場合に美術にがんばってもらって、しゃれたジャズクラブの演出が必要であろう。
でも「海辺のカフカ」、「ねじまき鳥」は映画化がかなり難しいであろう。
「ノルウェイの森」の映画公開は期待して待っている。

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