映画とライフデザイン

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映画「ベニスに死す」ルキノ・ヴィスコンティ

2023-05-15 18:20:54 | 映画(洋画 89年以前)
映画「ベニスに死す」は1971年日本公開のイタリアフランスの合作映画だ。


映画「ベニスに死す」はルキノヴィスコンティ監督の1971年日本公開の名作だ。ここしばらく観ていないが、何度も観ている。「TAR」マーラー交響曲5番が取り上げられていることで、ふと観てみたくなった。気がつくと、ブログ記事も書いていない。公開当時ビョルン・アンドレセンの美少年ぶりは日本でも雑誌を中心に大騒ぎになった記憶がある。まだ中学生だった自分にはピンとこなかった。確かに現代感覚でみても飛び抜けている。

静養でベニスの街を訪れたグスタフ・フォン・アッシェンバッハ教授(ダークボガード)は作曲家である。滞在するホテルで、上品で気品あふれる母親(シルヴァーナ・マンガーノ)とその子どもたちの中にいる美少年タッジオ(ビョルン・アンドレセン)に目が止まる。その後、ホテルのレストランでも、海岸でも何も言わずにタッジオの一挙一動に目を奪われる日々が続いていく。


絵画のような映画だ。
計算つくした映像コンテで、上質な絵画を思わせるショットが次々と続く。風景がいいというわけでない。教授と美少年と取り巻く人物とバックの風景や建物、インテリアがバランスよく配置されている。美的意識に優れる。この時代の映画は、ズームレンズの遠近を調整するようなカメラワークが多い。最近はあまりない不自然な捉え方だが、それを除いては構図は完璧だ。

セリフは少ない。ひたすら、美少年タッジオを目で追うグスタフに注目する。ホテルの従業員たちとの会話を除いて、グスタフに不必要な会話はない。タッジオはグスタフの視線を気にするが、会話はない。静かに時間が流れる。映像のバックにはマーラーが流れる。久々に観て、マーラーの交響曲5番が重要場面で繰り返し長めに使われていることに気づく。この曲が美しい映像に溶け込んでいる。しかも、主人公の名前はあえてグスタフマーラーから名前を拝借する。いかにもマーラー本人がモデルのように錯覚させる。

ベニス(ヴェネツィア)の街は古今東西いろんな映画でロケ地となる。見どころが数多い場所だ。キャサリンヘップバーン主演の「旅情」のように観光案内的に街をめぐるわけではない。ビーチサイドのシーンも多く、別にベニスでなくても撮れてしまうシーンも多い。それでも、絶えず絵になるショットルキノヴィスコンティは狙っている。そして、美少年ビョルン・アンドレセンにフォーカスをあてるだけでなく、イタリアのセクシー女優シルヴァーナ・マンガーノを美少年の母親に配役してわれわれの目を奪う。ヴィスコンティ作品の常連だが、以前観た時にはあの「にがい米」セクシー女優と結びつかなかった。


途中から、ベニスの街に感染症の波が来ているのではないかとグスタフはさかんに気にする。街に白い消毒薬がまかれている。インドが感染源のコレラ菌の波が欧州に来ていることもわかる頃には、グスタフは少しづつ体調を崩していくのだ。今まで観た時にはグスタフが病気で衰えることがわかっても、感染症の影響とは気にしていなかった。このコロナ禍で映画の見方が変わった。大きなユーラシア大陸は東西につながっていて、感染症の影響に常にさらされているのだ。時代により映画の見方は変わっていく。



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