映画とライフデザイン

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映画「ホーリー・モーターズ」 レオンカラックス

2013-04-06 20:41:27 | 映画(自分好みベスト100)
映画「ホーリー・モーターズ」を公開初日に劇場で見た。フランス映画だ。
凄い傑作に出会って唖然とした。今年見た作品ではダントツに良い。



主人公のオスカーが一日中リムジンで移動し、変装しながら様々な人物を演じていく姿を描いていく。ヌーベルバーグで有名なフランスの映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」でトップの評価を得たという。
内容を聞いていると面白そうだ。
見始めると小さいストーリーがいくつも続く。それぞれの話はさほど長くないが、意表を突くエピソードで目が離せない。主人公が奇怪な動きをする。一体何だろうと思わせながら、次どうなるのか気になって行く。美しいパリの街を縦横無尽に走るリムジンが次から次へと主人公を奇想天外な場所へ連れて行く。
夢と現実が交錯するようなシーンが続き「なんだこれ!」と思いながらも奇妙な映像美に引き込まれる。

ある朝、大豪邸から富豪のオスカー(ドニ・ラヴァン)が子どもたちに見送られ、元モデルと思しき長身の女性セリーヌ(エディット・スコブ)が運転する白い大きなリムジンに乗り込む。

秘書らしきセリーヌは「今日は9件のアポがあります。」という。その日の予定を確認し、電話を済ませる。車内にある化粧鏡の覆いを外して白髪交じりの長髪のカツラをとかし始める。パリのセーヌ際の橋に到着したリムジンから降りてきたのは、みすぼらしく腰の曲がった物乞いに変装したオスカーだった。道行く人々は、そんな彼に見向きもしない。

次の場所へ向かう車内で、モーション・キャプチャーのスペシャリストへ素早く変装するオスカー。工場のようなスタジオで、女性ダンサーとともにエロティックなダンスを踊っていると、キャプチャーされた彼らの動きが、怪物が愛し合うアニメーションに変換される。

下水道に住む怪物メルドに扮した彼は、墓地で撮影をしていたモデルのケイ・M(エヴァ・メンデス)と出会って、抱きかかえて下水道に連れて2人の世界に入り込む。



初めてダンスパーティーに参加した10代の娘を迎えに行くと、誰とも踊らなかったと聞いて激昂したり、さらに、アコーディオン奏者、スキンヘッドの殺人者、死にゆく老人と演じていく。その日の任務をこなしてゆく。。。

幻想的で難解な映画という想像もあったが、全く違った。
この映画を見て、自分としてはフェリーニの「8・1/2」やデイヴィッド・リンチの一連の作品を連想した。
いずれも、「映画の中の映画」という手法を使う作品だ。

それらに近いが、主人公の職業は何も語られない。撮影者や演出者が映っているわけでない。それぞれのエピソードを主人公がメイクをして完ぺきに任務をこなすように演じていくが、現実なのか映像の中の空想なのかがわからない。カラックスは重層構造の悪夢を我々に映像で語る。
傑作といわれるフェリーニの作品よりも断然凄いのが、完ぺきな美術装置と出演者のパフォーマンスを見事に撮りきったカメラ捌き、そしてセンスのいい音楽だ。なんと日本版「ゴジラ」のテーマソングも出てくるし、カイリーミノーグも歌う。

すべてが素晴らしいが、印象深いシーンを2つあげる。
墓場でエヴァメンデス演じるファッションモデルらしき女性が、プロのカメラマンに次から次へと写真をとられている。変なメイクをしている。そこに現れるのが片方の目をつぶした怪物だ。ゴジラのテーマソングに乗って、墓場の墓にある花を食べたりして、走り回っている。カメラマンは奇想天外な怪物の出現に興奮して、写真をとりまくる。その時、怪物は自分の体よりもはるかに大きいモデルの身体を抱きかかえて、下水道のトンネルに入り込む。座るや否や、モデルの財布をあける。中の紙幣をみつけると食べ始める。。。。。言葉にするとこんな話だが、見ていると一体どうなって行くんだろうと凝視してしまう。



同じようなリムジンに乗った車の中に一人の女性がいた。カイリー・ミノーグ演じる女性は主人公オスカーの昔の連れ合いだったようだ。30分だけ時間があると2人は廃墟のデパートへ入って行く。

2人は旧交を確かめ合う。そしてその思いを歌にする。

「私たちは誰だったの? 私たちが私たちだったあの頃
私たちはどうなったの? もしあの頃別の道を選んでいたら
感じてるわ とても奇妙な感覚
一人の子供がいた 小さな子供が 私たちにはかつて子供がいた
その子に呼びかけた でも、その子は…」

歌うショートカットのカイリーミノーグが素敵だ。時間が終わりになるにつれ、美しいパリの夜景を臨むデパートの屋上で、店名を示す古い文字看板に近づく。そこから落ちれば死ぬしかない。その時、彼女に会いに来ている男性が近づくが。。。
この廃墟の映像は凄い。

などなど
これは言葉では表しづらい。
レオンカラックスという天才との出会いにときめきを感じた。


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