映画「ジュリア(s)」を映画館で観てきました。
映画「ジュリア(s)」はフランス映画、もしちょっとした人生の選択が違っていたら別の人生の展開があったかもしれないというあるピアニストの話を映像で見せてくれる作品である。遠出をしないGWなのに、観てみたい映画に恵まれない時に選択した作品である。人生の先のことはわからないけど、「あの時こういう選択をしたら?」、「あの人に出会わなかったら?」なんて過去のことを時折考える。「人生をもしもで考えるとおもしろい。」と言ったのは小泉信三だが、ちょっとした好奇心で選択したこの映画は極めて上質な作品だった。
ピアニストを目指す17歳のジュリア(ルー・ドゥ・ラージュ)はベルリンの壁が崩壊するニュースを見て、音楽仲間と親に内緒で遠距離バスで一緒に行こうとする。この時、うっかりバッグから落ちたパスポートを家に忘れたかどうかで人生が分かれる。
1)パスポートを家に忘れたことに気づく
いったん外に出た後で、あわてて家に戻ると両親がいて、仲間と遠出をすることを止められてしまう。バスの時間があるので仲間はベルリンに旅立ち、ジュリアは何もなかったかのようにピアニストへの道を歩む。
2)家でパスポートに気づきベルリンに旅立つ
出発前にバッグから落ちたパスポートに気づき、そのままバスで仲間と一緒にベルリンに行き、東西の壁を壊す場面に出くわす。壁を壊している場所のそばにあるピアノを弾きはじめると、その音色の美しさに周囲はジュリアに注目して、それが新聞記事になってしまう。でも、未成年が勝手に旅立ったことに父親が憤慨、反発したジュリアは家を飛び出す。
まずここで運命が分かれる。
ここからいくつもの出会いと選択でジュリアの人生の道筋が変わっていく。
本屋でたまたま出くわした男性と一緒にカフェに行って話さなかったら?
シューマンコンクールで賞をもらわなかったら?
もし運転する2人乗りのバイクが事故に遭わなかったら?
この展開は映像で堪能してほしい。
時の流れは示しても、それぞれの人生を文字で明示をするわけではない。
最初はもっとわかりづらくなるのかと思ったが、ごく自然になり得たはずのそれぞれの人生の場面に移り行く。こんなに多くの人生があったら、長時間になってもおかしくない。編集がうまい。
むちゃくちゃよかった!今年でピカイチ
コクのあるフルボディのワインを飲むような味わいをもつ。重厚感がある。まず、映像の質が高い。ジュリアが暮らすそれぞれの街で室内外あらゆる美術のセンスに優れる。望まれない妊娠をした女の子を追った昨年屈指の傑作「あのこと」の舐めるように主人公を追うカメラワークを担当したロラン・タニーが撮影を受けもつ。被写体がよく、カメラも巧みなので大画面で観ると我が身に響く。
加えて、音楽の選曲がすばらしい。どの曲も心にじんわりとくる。ピアニストが主人公なので、当然ピアノ曲が中心となる。オリヴィエ・トレイナー監督は以前「ピアノ調律師」で短編映画のセザール賞を受賞している。おそらくは音楽の素養があるのであろう。ここまでピアノ曲の選択に優れる映画に出くわしたのは初めてだ。
俳優陣は日本でメジャーとはいえないが、いくつものフランス映画の傑作で観る顔ぶれだ。22年では抜群におもしろかったフランス映画のサスペンス「ブラックボックス」で主人公の妻役を演じたルー・ドゥ・ラージュの熱演がきわだつ。髪型を変えてなり得たいくつものジュリアにそれぞれなり切る。夫役のラファエル・ペルソナは久々に見る気がする。物理を学んだ後に金融の道に進むという典型的な現代エリートの役柄だ。アランドロンばりの典型的なイケメンフレンチでクールな「黒いスーツを着た男」が印象的だった。
ちょっとした選択や出会いでこんなにも人生が変わってしまう。ジュリアのそれぞれの人生で、一見幸せそうに見えた流れが一瞬にして不幸に陥ってしまったり、不幸せのどん底から逆に結果オーライに進んだり、オリヴィエ・トレイナー監督は変幻自在に変化球を投げてくれる。単純に進めないストーリー展開も良かった。そして、それぞれの幸不幸の場面を映像で演じてくれたルー・ドゥ・ラージュに敬意を表したい。母親の危篤と葬儀に直面するときの4通りのジュリアに感動した。父娘の交情にも触れる。
自分の人生を振り返るいいきっかけになったすばらしい作品だった。先日観たフランス映画「午前4時にパリの夜は明ける」より10倍良かった。メジャー俳優がいないからなのか、こんないい作品が東京で1カ所しか上映していないことに驚く。
映画「ジュリア(s)」はフランス映画、もしちょっとした人生の選択が違っていたら別の人生の展開があったかもしれないというあるピアニストの話を映像で見せてくれる作品である。遠出をしないGWなのに、観てみたい映画に恵まれない時に選択した作品である。人生の先のことはわからないけど、「あの時こういう選択をしたら?」、「あの人に出会わなかったら?」なんて過去のことを時折考える。「人生をもしもで考えるとおもしろい。」と言ったのは小泉信三だが、ちょっとした好奇心で選択したこの映画は極めて上質な作品だった。
ピアニストを目指す17歳のジュリア(ルー・ドゥ・ラージュ)はベルリンの壁が崩壊するニュースを見て、音楽仲間と親に内緒で遠距離バスで一緒に行こうとする。この時、うっかりバッグから落ちたパスポートを家に忘れたかどうかで人生が分かれる。
1)パスポートを家に忘れたことに気づく
いったん外に出た後で、あわてて家に戻ると両親がいて、仲間と遠出をすることを止められてしまう。バスの時間があるので仲間はベルリンに旅立ち、ジュリアは何もなかったかのようにピアニストへの道を歩む。
2)家でパスポートに気づきベルリンに旅立つ
出発前にバッグから落ちたパスポートに気づき、そのままバスで仲間と一緒にベルリンに行き、東西の壁を壊す場面に出くわす。壁を壊している場所のそばにあるピアノを弾きはじめると、その音色の美しさに周囲はジュリアに注目して、それが新聞記事になってしまう。でも、未成年が勝手に旅立ったことに父親が憤慨、反発したジュリアは家を飛び出す。
まずここで運命が分かれる。
ここからいくつもの出会いと選択でジュリアの人生の道筋が変わっていく。
本屋でたまたま出くわした男性と一緒にカフェに行って話さなかったら?
シューマンコンクールで賞をもらわなかったら?
もし運転する2人乗りのバイクが事故に遭わなかったら?
この展開は映像で堪能してほしい。
時の流れは示しても、それぞれの人生を文字で明示をするわけではない。
最初はもっとわかりづらくなるのかと思ったが、ごく自然になり得たはずのそれぞれの人生の場面に移り行く。こんなに多くの人生があったら、長時間になってもおかしくない。編集がうまい。
むちゃくちゃよかった!今年でピカイチ
コクのあるフルボディのワインを飲むような味わいをもつ。重厚感がある。まず、映像の質が高い。ジュリアが暮らすそれぞれの街で室内外あらゆる美術のセンスに優れる。望まれない妊娠をした女の子を追った昨年屈指の傑作「あのこと」の舐めるように主人公を追うカメラワークを担当したロラン・タニーが撮影を受けもつ。被写体がよく、カメラも巧みなので大画面で観ると我が身に響く。
加えて、音楽の選曲がすばらしい。どの曲も心にじんわりとくる。ピアニストが主人公なので、当然ピアノ曲が中心となる。オリヴィエ・トレイナー監督は以前「ピアノ調律師」で短編映画のセザール賞を受賞している。おそらくは音楽の素養があるのであろう。ここまでピアノ曲の選択に優れる映画に出くわしたのは初めてだ。
俳優陣は日本でメジャーとはいえないが、いくつものフランス映画の傑作で観る顔ぶれだ。22年では抜群におもしろかったフランス映画のサスペンス「ブラックボックス」で主人公の妻役を演じたルー・ドゥ・ラージュの熱演がきわだつ。髪型を変えてなり得たいくつものジュリアにそれぞれなり切る。夫役のラファエル・ペルソナは久々に見る気がする。物理を学んだ後に金融の道に進むという典型的な現代エリートの役柄だ。アランドロンばりの典型的なイケメンフレンチでクールな「黒いスーツを着た男」が印象的だった。
ちょっとした選択や出会いでこんなにも人生が変わってしまう。ジュリアのそれぞれの人生で、一見幸せそうに見えた流れが一瞬にして不幸に陥ってしまったり、不幸せのどん底から逆に結果オーライに進んだり、オリヴィエ・トレイナー監督は変幻自在に変化球を投げてくれる。単純に進めないストーリー展開も良かった。そして、それぞれの幸不幸の場面を映像で演じてくれたルー・ドゥ・ラージュに敬意を表したい。母親の危篤と葬儀に直面するときの4通りのジュリアに感動した。父娘の交情にも触れる。
自分の人生を振り返るいいきっかけになったすばらしい作品だった。先日観たフランス映画「午前4時にパリの夜は明ける」より10倍良かった。メジャー俳優がいないからなのか、こんないい作品が東京で1カ所しか上映していないことに驚く。